第3話 鬼門は嫌
「ほうほう、それで結局、そのまま別れてきた……と?」
ランチの時間に学食の窓際の席で、仲良くしているグループの
「だって、冷たいだの薄情だのって言われてさ、腹立ったのよ。マジで」
「まあねぇ……
「うんうん、冷たいかどうかってのは個人の感じ方だけど、それもそんなに言われるほどじゃないと思うもん」
梨花と真由子が励ますように言ってくれるのがありがたい。
定食の唐揚げを食べながら、ふと窓の外に目を向けると、プリプリ怒った様子の女の子の後ろを急ぎ足で追いかけていく
まだ、例のヤンデレの彼女とは続いているらしい。
「けどさ、優香。祥太郎のときもそうだったけど、どのみち泰河さんとは長続きしなかったんじゃない?」
「え? ちょっとヤダ……まさか、また泰河はもうほかの女がいるとかって噂があるの?」
菜緒子の言葉に、またもデジャブを感じた私は恐る恐る聞いてみた。
だってね、付き合っていたくらいなんだもん、それなりに好きだったのよ? ちゃんと。
「そうじゃないけど、泰河さんってクールでサバサバした年上がタイプだ、ってコンパのときに言ってたじゃない?」
「あーね! そういえば、そんな話をしてたよね? でもその直後に優香に行ったから、あんまりタイプにこだわらないのかと思ってた!」
菜緒子と真由子は当時のことを思い出したのか、急にそんなことを言いだした。
そのとき多分、私はその場にいなくて、泰河の好みなんて知らなかったし。
「そんな話を聞いていたならさ~、もっと早く教えておいてよ~」
「そう言われてもねぇ? 私たちだって好みのオトコと付き合うオトコのタイプが違うこともあるしぃ、わからなかったもんねぇ?」
「うぅん……それもそうか……ごめん、今のは忘れて」
梨花の言う通りで、好みだからって必ずしも好きになるワケじゃないもんね。仕方ない。
「それにしてもガッテムだわ~……なんでこんなフラれ方、二回もしなきゃいけないのよ……しかもまた西門のカフェでさ……」
「優香の鬼門なんじゃないの?」
みんなそう言って笑うけれど、私としては使い勝手のいいカフェだから、行けなくなるのは嫌だし、かといって、もしまた別れ話にでもなったら恥ずかしいし……。
「ま、今日は帰りにみんなで夕飯でも行こうよ。優香も今日はバイト休みでしょ? なにか美味しいものでも食べて元気出そう!」
菜緒子の提案にみんなで乗った。
別に元気がなかったワケじゃないけど、美味しいものは食べたいじゃない?
華やかな繁華街、あちこち学生やサラリーマンでにぎわっている通りを、四人で歩く。
隣の菜緒子が私の背中をバンバン叩いた。
「ちょっと! あれ、泰河さんじゃない?」
「え? どれ?」
菜緒子が指さした車道の反対側に、モデルのようにスラッとした三十代くらいの女性と泰河がピッタリと寄り添って楽しそうに歩いている。
その二人の前に、やぱり三十代くらいのサラリーマンが立ちはだかり、なにやら大声で文句を言い始めた。
「うわ……ヤバ……あの人、俺の妻とか言ってない?」
「ヒェ……不倫? 不倫はヤバいでしょ~?」
「ってか泰河さん、優香と別れたのって今日じゃなかったぁ?」
菜緒子も真由子も梨花もドン引きしている。もちろん、私も。
ないわ~……マジでガッテムだわ……別れてよかったと心から思うわ。
「もういいよ、あんなの見てないで、早く美味しいものでも食べに行こう!」
三人を促して歩きはじめたところで、泰河が男性に殴られているのが視界に入った。
あーあ。ざまあないわね。
-完-
小波さんのガッテムな恋愛事情 ~second season~ 釜瑪秋摩 @flyingaway24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます