第2話
死んだはずの少女が起き上がる。
潰された腕も、貫かれた腹も影も形もなく再生している。
「マスター」
「おつかれコンコトワレ。コンコトワレのお力あり悪魔は死んだよ」
「弱かったです」
「だろうね。あれは赤子だ。生まれたての赤子だ」
「そうなると近くに親がいますね」
「あぁいるだろうね。邪神が·····あの悪魔を産んだ現況たる邪神が」
「ですが邪神の気配はありません。逃げたのではないでしょうか」
「邪神は·····狡猾で卑怯で恥もへったくれもないやつだ。角人に紛れ今どこかでのうのうと歩いてるかもね」
「でしたら、マスターの"神具・不完全の義眼"を使用すれば見つかるのではないでしょうか」
「それだったら、どれだけ嬉しいか楽しいか·····。さっきの悪魔は赤子だ。血も異能も持っていなかった。要するに捨て駒まだ。邪神はいつもそうだ·····退屈しのぎの遊びとしか考えていない。本当に面白いよね。邪神って!!」
男は空を見上げる。
路地裏から路地に出た2人。
路地を歩く角人達、笑顔と楽しそうな会話をしながら角人達は路地で交差する。路地裏であった惨劇など知らず平和は維持される。
路地裏で取引されたのは死。
受け取り人は死んだ、差し出し人は·····今路地で歩いている·····誰かだ。
どんな格好か?どんな見た目か?どんな容姿か?悪魔になった当の本人しか知らない。
「マスター、お腹がすきました」
「そりゃまずい!腹を満たさなきゃな·····」
「マスターパスタが食べたいです」
「なら、美味いパスタを食おう」
--------------------
揺れる汽車の一室のテーブルに置かれた黒い手帳。
女性が黒い手帳を手に取り開く。
「
もしこのメモを読んでいる者がいるならば、私は死んでいるだろう。
だが、その光景も、その惨状も、あの悲鳴も覚えている者はいないだろう。伝えられている情報を元に考えるならば、討伐対象の悪魔が持つ異能·····それは洗脳。
付け加えて、言うのならば、記憶の改ざん·····だと私は思う。
元討伐対象の悪魔に討伐に向かった私の前の2名、この2名·····いまだに消息不明。討伐に向かったと言う記録しか残っていない。
ただ、同一の悪魔を討伐に向かったと言う事が記録として残っている。そしてもう一つその悪魔は今日に至るまで討伐が確認されていない。
前の2名の
一番重要な部分が残っていないのだ。
悪魔の見た目、容姿、声、異能。現段階で分かっている事は全て憶測である。なぜならば、その悪魔を見た2名は消息不明だから。
この討伐に向かうに2名の生死の確信が必要だった私はとある
その
あー、もっとわかりやすく言うならコンコトワレと言う血合生命体コンコトワレを何時も傍に置いているあの人だ。
話を戻すが、ヴァルグラ様の元に向かった理由は先ほども言った通りだが、元討伐目標である悪魔を討伐に向かった2名の生死を確認するためである。
──結果。
ヴァルグラ様の持つ"神具・不完全の義眼"を交渉の末、使用して貰えた。
結果、わかった事は·····元討伐対象の悪魔に向かった2名·····どちらも死亡確定。
これにより私の生死も確定した。
きっと·····いや·····私は死ぬだろう。そして近くで私の死を目撃した者、私を殺した悪魔を見た者·····それらすべての記憶は何の変哲もない平和な日常の記憶に改ざんされこの後に元討伐対象の悪魔をまた討伐に向かう
私は少しでも、私の死が少しでも後の
──────
P.S.ヴァルグラ・ガルトラシアス様。貴方様と交した交渉を対話で果たせなかったことお許しください。
メモにて記させて頂きます。
アーバン地方のクエマラという小さな町ですがルシオンと言うパン屋のパンはクエマラに寄った際には絶対に買って帰るほど美味しいパンを売っております。
是非行ってみてください。
」
女性は黒い手帳を閉じる。
黒い手帳の裏面についた血をの女性は優しく触る。
「ヴァルグラでなくてごめんなさい。そして
女性は手帳を持って汽車から姿を消した。
死神 エピマキ @kakuyom_333
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死神の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます