第3話 Welcome to ガーディアンズ!
「こっちの子は佐々木結菜ちゃん!この子は加藤絵里香ちゃん!」
ちほが得意げに友達として紹介してきたのは、小学3年生の子供二人であった。結菜はボサボサな髪を二つに結い、花柄のセーターを着ている。絵里香はまだ幼いのに髪はブリーチで痛んでおり、黒いダウンジャケットは綿がつぶれて薄っぺらい。
ちほが嬉しそうに二人と話している。まこはその様子を冷ややかに見つめていた。なんて幼稚なんだ、と心のうちで毒づく。ヤリイカの中は薄暗くひんやりしていて、どこか生臭い匂いがあたりに漂っていた。地面には何かのシミができていて、お世辞にも清潔とは言えない。壁には大量の落書きがしてあり、その中には誰のものかもわからない電話番号もあった。
「ねえ、まこちゃんは魔法って信じる?私たちはね、魔法使いを守るために集まってるの。」
ちほが目を輝かせながらそう語る姿をまこは冷ややかに見つめていた。
「うちのボスは魔法使いなの。でもね、学校では魔女だからって酷い目に遭うし、命だって狙われる。だから私たちが守ってるの。かっこいいんだよ!凛ちゃん。悪者なんて全部ぶっ飛ばしちゃうんだから!」
結菜がまこの服の袖を掴みながらそう言った。魔法、という言葉にまこは強く惹きつけられた。自分もそのようなものを支えればどんなにいいだろうか、と想像した。強大な何かを赤子の手をひねるように制圧する、という妄想を四六時中しているまこは、ついに私も強い存在になれるかもしれない、という淡い期待を持ち始めた。
「うちのボスに合わせたげる!」
ちほがそう言いながらヤリイカを飛び出した。まこも彼女に着いて行った。ちほは、まこの腕を掴むと走り出した。まこの心臓とちほの心臓は同じリズムで激しく拍動している。まこの方が早く音をあげた。ちほはまこを励ましながら走った。いつの間にか二人は中学校に来ていた。夕日丘中学校、と書かれたプレートの前で息を整える。ぐったりしているちほに、一輪の花を差し出した。ツツジの花だった。ちほが根元を吸っているので、まこもそれをまねた。ほんのりと優しい甘味と、ざらざらとした舌触りがまこの口に広がった。
「あれ、ちほ、また花食ってるの?」
アニメキャラが描かれているパーカーを着た女性がまこ達に声をかけてきた。ちほはさっきまでむしゃぶりついていた花を捨てて彼女に敬礼した。
「凛ちゃん!この子、まこ!私のお友達です!凛ちゃんの魔法の話をしたらすごいねって言ってくれて、ね!まこ!」
ちほがそういうので、まこは首を縦に振った。凛は顔を顰めて、
「あんま私のこと広めんなよ、狙われてるって言ってんじゃん。」
とちほを嗜めた。
「後、魔法って言ってるけど違うから。妖術、な。」
凛はそういうと、複雑な紋様の書いてあるお札を取り出した。それはまこがどれだけ頑張っても作れなかったお札だった。
「弟子にしてください!」
考えるより先にまこはそう言っていた。凛は視線を泳がせながら、
「ガーディアンズに入るって形ならいいけど。」
と言った。まこは何度も首を縦に振った。
その後、三人で夕陽ヶ丘公園に向かって歩いた。ヤリイカに入ると結菜と絵里香がその中で敷物を敷いて待機していた。
「俺が書いたんだよ。」
凛はそう言うと、まこを敷物の上に立たせた。そこには魔法陣が描かれていた。
「私を守護するために、出でよ、ガーディアン!」
凛はそういうと、花びらをまこにかけ始めた。まこは自分の体が熱くなったような気がした。そして、凛は本物の魔女だ、と確信した。
周りからぱらぱらと拍手が聞こえ、それがヤリイカの中で反響した。まこは正式なガーディアンズの一員となった。
ガーディアンズ! 黒井 そら @tokumei000
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