第2話 夕日丘公園
まこはその日、学校に行かなかった。明確な理由はなかった。気にしていないふりをしていても、孤独は確実にまこの心を蝕んでいた。
「お母さん、今日私学校休むから。」
彼女は起きてすぐに、ベッドの上でそう宣言した。返事はなかった。まこは重い体を引きずってリビングへ向かった。そこにはまこの母親がいた。まこはもう一度、学校を休む、と宣言した。彼女の母は無言で千円札を財布から取り出し、まこに、それを手渡した。そして学校に電話をし始めた。
まこはキッチンに向かい、置いてあったパンを食べた。まこの母は電話が終わると家から出て行ってしまった。
やがて、多くの学生が学校へ向かう時間になる。多くの子供の笑い声が耳に入っる。まこは、ベッドに戻って布団に潜り、嵐が去るのを待った。
住宅街に出入りする人がうんと減った頃、まこは重い体を引きずりベットから脱出した。キッチンへ向かい、菓子パンを頬張る。録画しておいたアニメを見ながら食事をしていたが、菓子パンの味にも、何度見たかわからないアニメのストーリーにもううんざりしてしまったまこは深くため息をついた。
麦茶で喉を潤し、身支度を整えて家を飛び出す。どこに行くのか、あてもなくふらふらと歩いているとやがて見覚えのある場所についた。夕日丘公園。まこが小さい頃よく遊んでいた公園だった。塗装のはげたパンダの乗り物、錆びついたブランコ、ヤリイカ、と呼ばれているイカ形の建築物。まこが幼い頃と変わらない姿があった。
「まこちゃん?」
突然、まこの後ろから誰かが声をかけてきた。おかっぱ頭で、薄汚れたウサギ柄の上下スウェットを着ている。幼い頃まこが親しくしていた、田中ちほがそこにいた。
「まこちゃんだ!久しぶり!何してたの?私はもう十二歳だよ!あ、まこちゃんも同い年か。私ね、ここでね、秘密結社やってるの。」
ちほが捲し立て、まこが後退りをした。あの子と遊ぶのはやめなさい、と母親に言われて以来、まこは夕陽ヶ丘公園に足を運ぶことはなくなっていた。ちほと遊んだらまた、お母さんに怒られるかも、という考えがまこの頭に浮かぶ。
「あっちに友達がいるの!」
ちほはそんなまこの腕を掴んでグイグイ引っ張る。ヤリイカの中からは人の気配がする。ちほが扉をノックすると、中から子供の声が聞こえてきた。
「りんりんは?」
という子供の問いかけに、ちほが
「プリンセス!」
と答える。すると、扉が開いて二人の女児が姿を現した。
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