ガーディアンズ!

黒井 そら

第1話 切れた糸

 チャイムが鳴ってすぐ、生徒達が校庭に出た。

「こんなに寒いのにバカみたい。」

 伊藤まこはそう呟いて教室を出た図書館に向かった。

 冷え切った廊下を進む。息を止めて歩みを進める。そうしないと肺が凍る気がする、という何とも小学生らしい理由がそこにはあった。廊下には誰もいない。彼女の足音だけが反響していた。

 図書室のドアを捉えた彼女は、小走りで戸に近づいた、建付けの悪いドアを開けると、暖房によって温まった空気が廊下まで漏れ出る。彼女は思いっきり息を吸った。 

 彼女は本棚から愛読している本を取り出して窓の近くの角席を確保した。

 あやかしを見るために行う儀式、憎い誰かを懲らしめるための呪術。彼女はその手の話が大好物であった。お札の絵をノートの隅に書き写し、帰宅後にそれをもとにお札を作る。それが彼女の日課であった。

 私にだって特別な力があるはずだ。彼女はそう確信していた。

 窓の外から聞こえる生徒の笑い声から逃げるようにまこは本に没頭した。様々な怪談を貪るように読んだ。あっという間に十五分間の休みが終わり、チャイムが鳴る。まこが本を棚に戻しているとき、生徒が一斉に階段を駆け上がり教室へと戻ろうとしていた。まこは生徒の波が引くまで立ち止まってじっと待った。

 生徒がほぼいなくなった頃、まこは教室に戻った。クラスメイトは全員着席していた。戸を開けた瞬間突き刺さる視線。まこは逃げるように自席に戻り、教科書を広げた。

担任が全員教室へ戻ってきたことを確認し、プリントを配り始めた。まこは窓の外を眺める。近所の廃ビルの窓を一つ一つ確認するが、そこには誰もいない。

パサリと乾いた音を立ててプリントが投げ込まれた。まこはそれを受け取り、記名する。やがて授業が始まる。まこは黒鉛でどす黒くなった鉛筆とばらばらになってしまった消しゴムのかけらを取り出して授業を受けた。

 放課後になると授業から解放された生徒たちは騒ぎ出す。まこは急いで帰り支度を済ませて逃げるように学校を出た。

まこは下を向いて帰宅した。


次の日、まこは学校に行かなかった。



 

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