ただ、友達と過ごす。それが幸せなんだ。

無才能

第1話 そう簡単には、高校で友達はできないよな

桜の花びら1枚1枚が風に乗って舞い踊る平日の朝、1人の男子高校生が歩いていた。


「ふあぁぁ…寝っむ」

男子高校生は、口を大きくあけながらあくびをした。

(入学して早々、友達ができないんだよな~。始まったばかりとはいえ、周りは友人らとの会話とかできてるんだもんな、うらやましいよ。)


俺、稜舘一紀りょうだていつき

樺沼かばぬま高校に通う1年。

特技も突出した能力もない、至って普通の男子高校生。身長も平均的で、いつも眠そうな顔をしているんだとか。趣味は、読書、サッカー観戦することぐらい。友達がいない。実質、ボッチ。いや、中学時代の友人はいる。


俺の通う高校は、全校生徒1000人を超える私立高校のマンモス校だ。毎年、難関大学への合格者を輩出している。2年生から普通科コース、特進コースの2つに分かれる。そして学校祭も派手に行われるんだとか。

ここの高校、入学するのに勉強への力相当必要であったため、俺は日々の勉強でなんとか入ることができた。まぁ...電車での通学が必要になったんだが。


学校に到着し、1番後ろの窓側の席に着いた。いわゆる主人公席というやつだ。よくある話では、主人公席に座ったら、隣には美女がいる、スクールカースト上位の女子から話しかけられるとか、青春ものに発展する。実際は、隣には女子がいても、青春ものに発展しない、話しかけられない。


キーンコーンカーンコーン。

学校のチャイムが鳴った。

前のドアから担任が教室に入り、ホームルームがはじまった。一日のはじまりである。


さて、今日の1限目から6限目の科目を紹介しよう。以下の通りである。

1限目-現代文

2限目ー物理

3限目ー数学IA

4限目ー地理

5限目ー古典

6限目ーLHR(ロングホームルーム)


このような時間割で今日は進んでゆく。LHRってなにやるんだろうか?進路相談?

面談?それ以外、何が考えられる?俺の平凡な頭じゃ、わからん。


1限目から眠たくなる科目TOP10に入るであろう、現代文がはじまる。今日もがんばるか。




―――4限目地理

ここまでは、眠たくなる科目やら、頭が使いすぎてオーバーヒートしそうな科目をやってきたが、地理だ。そんな頭、使わなくていい。


「よーし、今日の授業は、日本のどっかこっかの年間降水量の表を8つ持ってきた。その8つの場所を特定してもらう。そのためには、みんなの力が必要となる。グループワークをやってもらう。」

地理の担当教師が資料を抱えながら言った。


「このクラスは、40人か。5人グループか。そこの席らへんを1グループ....」

クラス全員、教師が指定されたグループの元、机、椅子を動かしはじめた。

(そういえば、今日、グループワークだったけか。)


稜舘は、5人グループの輪に入った。男子3名女子2名の計5人。お互い、気まずそうな雰囲気と表情をしていた。


全員が席を移動し終わった後を確認した後、教師は言う。

「まだ、この高校に入学してまもないと思うので、みんなで自己紹介してからグループワークを始めてくれ。自己紹介は、名前、趣味、ひとことな」

教室全体は、自己紹介から話始めた。


肝心な俺のグループはと言うと、誰もが沈黙のままだった。顔を合わせて、「誰か先に自己紹介してくれるよね?」と全員アイコンタクトしていた。

うーん、なぜだ。誰か話始めるやついるだろ、いや、他力本願の俺がダメなのか。


「あのー」

稜舘から話はじめる。

「はい!なんでしょう!」

稜舘が座っている斜め左にいる女子が返事した。


「自分から自己紹介していいですか」

稜舘が話すと、みんなが「その言葉を待っていました」と言わんばかりの満足気な顔をしていた。あっ、やっぱ、自分から言ったほうがよかったのね。


「自分は、稜舘一紀です。趣味は、読書とサッカー観戦です。ひとこと....ひとことかぁ....なんも浮かばなくて申し訳ないんですが、自分は至って平凡な人間なんで面白みない人間です。こんな人間でよければ、気軽に話しかけてもらえると嬉しいです。それでは、僕に続いて時計回りで自己紹介お願いします」

ひとこと長すぎたかな....まぁいっか...

.

「俺は、御門淳みかどじゅん。趣味は、剣道だ。よろしくな。次、お願いします!」

御門淳か、身長高くてスラっとしてるなぁ。角刈りなのが似合ってる。


「ぼ、僕の名前は、隅田瑞穂すみだみずほってい、言います!趣味は、カフェ巡りと古着屋巡りです!こ、この見た目なので、女子と間違えられるんですが...あの...その...男です。よ、よろしくお願いします。つ、次、お願いしますっ!」

そうか、男だったのか。めちゃめちゃ女子だと思ってた。身長低めのショートカットだ。


「私ね、私の名前は、伊東奈未いとうなみ。趣味かぁ~、走ることかな?、毎日15㎞走ってます。よろ~、最後お願いします~」

身長高めでポニーテール、いかにもスポーツ系女子って感じだ。


「私の名前は、原田凛音はらだりのんです。趣味は、おでかけすることです。よろしくお願いします」

平均的な身長で顔立ちがよく、ロングヘア―の子だ。自己紹介が終わったところで話を進めていく。


「じゃあ、自己紹介が終わったんで、本題に入りましょう。えっと?年間降水量を見てみてるか」

稜舘は、裏にされていた年間降水量の表の紙をひっくり返し、みんなに見せた。


「随分と綺麗な山のようなグラフだな」

「夏の気温が30℃近くとか走るの辛そう~」

「1月の気温が0℃下回ってな、ない」

「んで、12月も7℃ぐらいの気温でそこそこの雨量があると...」

(うん、これよくわかんねぇな)


「ん?これって、7月~9月が25℃近くあって、雨量があるってことは、盆地に見られるやつじゃないですか?」

原田は、7月らへんの表に指をさしながら言った。


「ほ、ほんとですね!7月の降水量は、270㎜ありますね」

「でも、8月の降水量変じゃない?220㎜ぐらいしかないわよ」

「8月って、台風の数も多いから雨が多くなるんじゃないのか?」

「言われてみれば確かに、そうかも」

隅田、伊東、御門は、話をする。

降水量が変とかよく気づけたな。視野広いすぎる。そこは盲点だった。


気候的には、台風の影響がそんな受けない場所って...内陸、日本海側か?夏場は気温だ高くて、冬は5℃前後....

「台風の影響がそんな出ないと考えると、内陸の県に縛られると思うんだけど」

稜舘は、ぶっきらぼうにみんなに向かって話した。


「内陸か、その視点はナイスすぎる。」

「内陸なら長野、岐阜、山梨…あとなんかあります?」

「他だと~奈良、埼玉、群馬、栃木ですね!」

「じゃあ~岐阜じゃないかしら」

伊東はふと思い浮かんだこと口に出した。

「それは、また何故?」

稜舘は、不思議そうに質問にした。

答えはたぶんだけど、なんとなくっていう感じがするみたいなこといいそう。


「なぜって、なんとなくだよ」

うん、知ってた。

「岐阜なら、辻褄が合いますね」

原田は答える。


「岐阜ってよ、夏場クソ熱いってことは、山に近いじゃん、場所によっては盆地だから太陽からの熱がそっちに集中するし」

御門は、8月の気温と点が8個所記されている全国地図を交互に指をさしながらいった。

言われてみればそうだもんな。


「気温が低いってことは、雪も降りやすいですもんね!」

「そしたら、皆さんのいう通り、岐阜にしましょう」

「「「はい!」」」

伊東、隅田、原田、御門は、稜舘の言葉に返事をした。

稜舘らのグループが話し終わったところで地理の教師が話をした。


「はい、終了~。それぞれ、グループで話し合いのもと答えを言ってもらう。いいな?まず、右手前の1グループ、答えは?」

「はい、熊本県です」

1人の男子生徒が答えた。

「ハイ正解」


「はい、次、その奥のグループ」

教師が指名されたグループは答えを言っていく。


「はい、最後、窓側奥の8グル―プ」

「はい、岐阜県です」

稜舘が席に立ち、答える。


「はい、正解~。ってことでこのクラスは、見事に全問正解だ。よし、席戻せ」

教室全体は、また席を動かす音が鳴り響いた。

地理の教師は嬉しそうな顔で言った。


「全問正解したクラスは初めてだから、ちょっと早いけど授業終了。課題ないから。挨拶頼む」

「起立、礼、ありがとうございました。」

「「ありがとうございました」」


4限終了〜、おなかすいた。

コンビニ弁当でも食べるか。


「あ、あの!」

隅田が話しかけてきた。

「はい、なんでしょう?」

「今日のグループ、最初の自己紹介、ありがとうございました!」

隅田は、稜舘にペコリとお礼した。


「いえいえ、大したことしてないですよ。」

稜舘は、首を横に振りながら答えた。

自分から話を進まない限り、グループワークはできないものだ。慣れ親しんだ環境から新しい環境になるのだから、しょうがない気がする。


「いやいや、1人が自己紹介してくれるだけでもありがたいです!」

「他力本願じゃ、話が進まないなと思ったので仕方ないです。」

「そうですか~、素晴らしいですよ、その考え方」

「ありがとうございます」

稜舘は、隅田に軽く頭を下げた。


「じ、じゃ!僕は食堂行ってくるので!ここで失礼します!」

「はい、行ってらっしゃい」

隅田は、稜舘を後にし、食堂へ向かった。


――――学校終了

その日は、グループワークがあっただけで人間関係の変化はなかった。

よし、帰るか。


「ピロンッ!」

ズボンのポケットに入ってるスマホから音がなった。


稜舘は、ポケットからスマホを取り出した。この時間に珍しいな、RINE《リネ》来るの。


『なぁ、一紀、友達できた?』

稜舘の中学時代の友人、笠村 刹那かさむら せつなからだった。


刹那は、中学1年の時、話しかけてもらった大切な友人だ。

見た目は、女の子かっていうぐらい長髪だけど、しっかりとした男だ。サッカーが好きというのもあり、時々、二人でプロのサッカーの試合を見に行ってるぐらいだ。


既読『できてないなぁ、どうしたらできるんだろう?』


『まぁ、そう焦んなって、いうて高校はじまったばかりだから』

『それより、今週の土曜暇?』


既読『なんも予定ないけど』


『サッカーのグッズ買いに行こうぜ』


既読『おぉ~、あり』


『予定の詳細はおいおいってことで』


既読『り』

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ただ、友達と過ごす。それが幸せなんだ。 無才能 @Shinkinada1473

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