第2話 最後の肖像画


「ミケラ様」


 声をかけられ、ミケラは振り返った。そこには心配に眉を顰めたカハル伯爵が立っていた。自分はどれだけぼんやりしていたのだろう。そう不思議に思いながらミケラは腰を折って伺うカハル伯爵を見返した。


「御父上がお呼びです。さぁ、こちらへ」


 腕を差し出されミケラは黙ってエスコートされた。村人達が不躾な視線でミケラを見つめている。囁き声は大きく、口元を覆って耳打ちし合う意味をなしていない。


「あれが、生贄の娘だ」

「美人じゃないか。これで安泰じゃ」

「あれで妖精ティンカーが満足するものか、痩せっぽっちじゃないか」

「妖精達にやるのは勿体無い」

「美しい目だ」

「白い目なんて気持ち悪い。死人の目みたいだ」

「死んだようなものだろう、妖精ティンカーに攫われるんだ」

「かわいそうに」

「ママ、夢を見るんでしょあの人!」

「お貴族様が可哀想なもんか。毎日畑を耕すわたしらの方が……」


 アレクシスは広場の高台に立っていた。

 ミケラは片手をカハル伯爵に支えられながらドレスの裾を片手で持ち上げ、階段を上がった。その瞬間、口笛を吹いた村人が近衛兵に捕まえられ地面に押し付けられている。ミケラは出来るだけ顔を上げずただひたすらアレクシスを目指して歩いた。


「皆のも、我が美しい娘を見よ。ミケラは、妖精王の花嫁として選ばれた。この花嫁を得て、妖精達が怒るだろうか?私は民衆に問いたい」


 原始的な叫びが民衆から上がり、ミケラは身が軋むような思いをした。それは「はい」とも「いいえ」とも受け取れるような意味を成さない音だった。しかし、アレクシスはミケラの肩を強く抱き、励ますようにミケラを支え続けている。


「ミケラは生誕の時、私の心に平安をもたらした。今もそうだ。この子は必ず、必ず!妖精と人間の間に平穏をもたらすだろう。私はグィネヴィア女神に誓ってお前達に約束しよう。もう余計な心配をするな!過去に初代の花嫁アシュリン令嬢よりも長く平安を築いた花嫁はいない。しかし、ミケラはその歴史を塗り替えるだろう、と!!——十字架を掲げよ!」


 言われて民衆も兵士たちも、台に登っていたカハル伯爵、ミケラ、アレクシスもぶら下げていたグィネヴィアクロスを取り出し天に掲げた。村人たちは藁で出来たクロスを、貴族や騎士たちはダマスカス鋼で出来たクロスを掲げていた。同じ長さの四つの棒は風車のブレードのように斜めになっていて、風を受けて今にも飛び上がりそうな形状をしている。


『女神の加護を信じて!!』





 早朝にダブリンへ赴いたミケラたちが城付近まで戻ってきたのは翌日の昼間だ。


「姉様ぁー!」


 馬車の外から声がしてミケラはすぐに視線を小窓へ送った。

 すぐに馬車が止まり、扉が開かれる。顔を突っ込んだのは12歳の弟・ローウェンだった。父親譲りの深い茶色の巻き毛に、大きな緑色の目はローウェンを実年齢よりもうんと幼く見せる。そばかすの散らばる丸い頬は赤く染まっていた。弟の顔を見ると、ミケラの顔にパッと喜びが灯り、破顔した。


「ローウェン!」


 ミケラが腕を広げると、ローウェンは狭い馬車の中に慌てて入り、ミケラの胸に飛び込んできた。アレクシスは大らかな笑い声をあげながら、顔の近くまで飛んできたローウェンの足を避ける。すぐに開けっぱなしになっていた馬車の入り口から新しく小さな頭が現れた。中の様子を伺っているのは、顔を真っ赤にして、小麦色の髪の毛を汗に濡れた額に貼りつけた、9歳のタマラだった。タマラは忙しなく肩で息をしている。タマラはアレクシスに招かれて、ゆっくりと馬車の中に入ってきた。手に何かを持っているようで、その動きは大変ゆっくりだ。やがて、タマラは甘えるようにアレクシスの膝の上に乗った。


「父様、姉様、おかえりなさいませ!」


 ローウェンが大音量で、ミケラとアレクシスに笑いかけた。


「どうして城にいないんだい?お前たち」

 

 アレクシスがタマラの汗をジャケットの袖で拭いながら伺うとタマラが小さな口で答えた。

 

「お花を摘んでいたんです。こちらにはお花畑があるから」


 タマラの返答を聞きながらアレクシスは馬車の壁を叩き御者に合図を送った。ゆっくりと、馬車はまた歩き出している。

 二人が馬車に乗り込んだのは、城下町の外だ。コエッドビス城の周りには草原が広がり、そこには多様な花々が群をなして生息している。城下町の子どもたちはよく花を摘みに出かけている。

 ミケラはローウェンの頬を突いて、跳ね回る髪の毛を撫で付けてからローウェンの額に顔を寄せて、匂いを嗅いだ。ローウェンとタマラからは、太陽の匂いがする。甘くて、優しい子どもの匂いが。


「お花を!お花をね!いっぱい摘んだんです、お姉様」


 タマラは自信たっぷりにミケラに告げた。お花?とミケラは首を傾げた。


「花冠をつくったの!!」

「二人で作ったんですよ!姉様」


 タマラから差し出された花冠をミケラは形が壊れぬよう、両手でそっと受け取った。


「嬉しい、ありがとう。でもどうして……?」


 ミケラは花冠を本物の王冠のように両手で恭しく掲げながら問いかけた。ミケラの不思議な瞳がコロコロと色を変えている。若緑色の四つの瞳が、ミケラをじっと見つめ返している——瞬きする間も惜しんで。


「お姉様が怖い夢を見ないように、おまじないを掛けたんです」

「姉様はいつも夢を見る時うなされているから……」


 ローウェンは言いながら俯いて両手をぎゅっと握りしめた。小さな拳は指の関節が白くなっている。


「僕が悪い夢から姉様を守れたらいいのに……せめて、僕も一緒に夢を見てあげられたらいいのになぁ」

「この花冠が守ってくれるの。だってね、私たち、一生懸命グィネヴィア女神様にお祈りしたの。もうお姉様に怖い夢を見せないで、って」

「……ありがとう。ローウェン、タマラ」


 ミケラはいつもと違う声で囁き、タマラに手を伸ばし引き寄せると弟と妹をぎゅっと抱きしめた。柔らかな頬にキスをいくつも送ると、高い声で楽しそうに笑った。二人を離した時、ミケラの表情には明るい笑顔が浮かんでいた。場違いなほどに明るい笑顔が。


「こらこら、二人とも、暴れるんじゃない。馬車が転倒しても知らないぞ」


 馬車の向かい側に座るアレクシスが笑った。


「では、二人が冠らせてくれるかしら?」

「光栄です!!」

「椅子に立ってもいい?お父様」


 タマラに了承の頷きを送るとタマラはミケラの頭に花冠を被せた。ミケラが首を垂れながら、タマラの腰に手を添えて、揺れる馬車の中で転倒しないように支えている。俯きながらミケラは何度も何度も瞬きをしていた。


「似合っているじゃないか、ミケラ」


 タマラが座り、花冠を被ったミケラが顔を上げると、アレクシスが微笑んで告げた。ローウェンも興奮した声で「ええ!とっても!」と加え、タマラは手を叩いて喜んでいる。ローウェンとタマラの頭を撫でながらミケラも笑った。


「肖像画を描く時もつけていたらいい」

「肖像画……?」

「今日は、昼食後にラファール殿に家族の肖像画を描いてもらう予定だろう?」


 すっかり忘れていたミケラはきょとんとしてアレクシスを見つめた。


「そうですよ!そのせいで僕なんて、朝からお風呂に入れられたんですから……!」

「髪の毛も整えてもらったのに、ローウェンはもうぐちゃぐちゃになってる」

「タマラだって!」

「そんなことないもん!」


 ミケラを挟んでローウェンとタマラが言い合いをし、舌を突き出してお互いを威嚇し合っていた。


「お城に戻ったら、私が二人の髪を整えてあげるわ。とびっきりのおしゃれさんにしてあげる」


 嬉しそうなタマラとローウェンの返答を聞きながらミケラの胸には痛みが走っていた。


 ——二人の成長を見守れるのは今だけ。


 サウィンは迫っている。ミケラは妖精王に嫁ぐことよりも、この愛おしい家族と離れ離れになることが、何よりも怖かった。その恐怖は、幸せな時ほど強くミケラに迫った。


 ——この笑顔を見れるのは、今だけ。


「二人にお土産があるのよ」

「ほんとうですか!?」

「わぁ!どこにあるんですか?お姉様」

「帰ったら二人にあげる。だから城に着くまで、いい子にしてちょうだいね」


 ミケラは言った側からまた新しい事柄で言い合いを始めた二人を引き寄せて、その丸くて小さな頭にキスを落とした。

 子どもたちの甘い匂いが胸を膨らませる。この匂いも、ずっとずっと覚えていたいと思っていた。





「さあ、みなさん準備はよろしいですかな? ああ、ローウェン坊ちゃま! まだ座らないでくださいな。そう、奥様の横に立って、じいやの方をじっと見てくださいませ。むむ……。アレクシス様、もう少しばかり、奥様のほうへお寄りになって長椅子の背もたれに手をかけていただけますか。……はい! すばらしい!」


 ラファールは満足げに大きく頷き、銀筆を手に取った。彼はこの貴族一家の肖像画を描くために呼ばれた、名高い画家だった。


「ローウェン坊ちゃま、もう少しだけ笑ってくださいませ。コエッドビス城の翡翠と名高い、お母様の美しい笑顔にならって」


 ローウェンは少しぎこちなく笑みを浮かべてみせた。母・エヴリンはその場を和ませるように軽く笑い、手を優しく息子の肩に置いた。それだけで強張らせていたローウェンの肩から力が抜けていく。


「大丈夫よ、ローウェン。これは家族の大切な思い出になるのだから」

「ローウェンったら!緊張しているの?」

「誰だって緊張するわ。自分が描かれるものです。私だって緊張しているもの」


 ミケラの隣に立ったタマラが身を乗り出してローウェンの顔を覗き込んでいる。ローウェンが口を曲げてタマラの顔を押しのけるので、タマラは体制を崩し、たたらを踏んでいる。そんなタマラを片手で支えながら、ミケラは頬を染めてはにかんでいる。嘘は、ついていない。確かにミケラも緊張していた。子供たちの中で緊張していないのはタマラぐらいのものだ。

 比べて、アレクシスとエヴリンは慣れたものだ。二人は寄り添いながら、家族の一人一人を誇らしげに見つめた。アレクシスの目には、家族への深い愛情と誇りが込められている。


「では、始めましょうか」


 ラファールは銀筆を動かし始め、慎重に最初の一筆を描き入れた。しばらくの間、部屋には銀筆の静かな音だけが響いていた。使用人たちは画家の背後で静かに家族を見守りながら、声がかかればいつでも動き出せるように背筋をぴんと伸ばしている。

 銀筆がキャンバスに踊る中、部屋の空気は独特の緊張感を漂わせていた。家族全員がじっとしている間、使用人たちの目は時折ラファールの手元に移り、その技巧に感心していた。ラファールは、家族の姿を完璧に捉えるために集中している。


「ダブリンはどうでした?」


 緊張を和らげるためか、エヴリンは柔らかな声でアレクシスに問いかけた。少しぐらい動いても、画家は正確に描写することができることを、経験から知っていたからだ。エヴリンとアレクシスは、政略結婚だ。正当なアルスター侯爵であるアレクシスの元には信じられない数の縁談が寄せられていた。その際に乙女たちはとびっきり美しい自画像を画家たちに描いてもらう。当時、16歳だったエヴリンもその一人だった。

 

「以前赴いた時よりも随分と発展していた。カハル伯爵は若いが有望だ」

「燃える赤狼の異名にふさわしい人ですか?」


 アレクシスは微笑んでエヴリンに一瞥を送った。その目を見ればエヴリンにはカハル伯爵が素晴らしい人だったということが見てとれた。——もしミケラが選ばれていなければ。咄嗟に考えたことを振り払うようにエヴリンはまた笑顔を浮かべてラファールへ顔を向けた。


「ミケラも遠出をして、少し羽を伸ばせましたか?」

「はい、お母様。……緑が豊かでした」


 ミケラは言葉を選んで告げた。旅の道中に聞き取ったおかしな妖精の話を告げようとしたが、空気を乱してしまうと思ったからだ。

 花嫁としていつかミケラは妖精のもとに嫁ぐ。そのため、ミケラの家では妖精の話は極力避けられていた。特に、妖精に関する悪い噂をすればエヴリンはカンカンに怒ってしまう。ミケラ本人の口から出ても、エヴリンはいい顔をしないだろう。


 妖精はどんな見た目をしていて、どんなことができるのかは、誰も知らない。ある者は上半身は牛で下半身が人間の恐ろしい生き物だといい、ある者は親指サイズの人形だといい、ある者は人間とほとんど見た目が変わらないが、背中に蝶々のような羽が生えているという。妖精ができることに関しても、季節や太陽などの大掛かりなものを盗むという人もいれば、靴の中に小石を詰めることしかできないという人もいる。

 地方に行けば行くほど、妖精にまつわる噂や伝承は素っ頓狂なものになっていく。その噂話をミケラは「面白い」と思うことができた。——本当かどうか、私が確かめてきてあげるわ、とすら思っていた。

 生まれた時から、いつか妖精の元にいくことは決まっているミケラにとって妖精への恐怖はすでにケジメがついていることだった。

 ミケラがなかなかケジメがつけられないのは…むしろ家族と別れることだ。


 ——花嫁は妖精の国へ連れて行かれる。


 人間の世界に戻ってきた花嫁は、いまだかつていない。

 つまり、サウィンが訪れれば、ミケラは家族と離れ離れになり、一生会うことはできない。そのことを思うと、いつも胸が苦しかった。


 思い耽るミケラの腕を誰かが引っ張った。

 ミケラが視線を落とすと、タマラがにこやかに微笑んで見上げている。


「お姉様の目、綺麗」

「うん?」

「お姉様の目はね、オパールみたいだわ。いつも輝いてるの」


 うふふ、とタマラはうっとりと微笑みながらミケラの瞳を見つめる。タマラはとりわけミケラの瞳が好きだった。ミケラからすれば、タマラの柔らかい茶髪や元気そうな緑の瞳が好ましかったが、こうしてうっとりと瞳を見つめられることは嫌ではなかった。


夢見人の瞳オーロラ色の瞳っていうんでしょう?」


 ローウェンもミケラを見上げて目を輝かせた。


「そうよ。よく知ってるわねローウェン」

「メイドのライラが言ってたよ。ライラはね、ミケラお姉様の夢見人の目が大好きなんだって」

「……そうなの、嬉しいわ」


 ミケラはライラという名のメイドを知らなかった。

 そもそも、屋敷にいるメイドの名前を一つも知らない。執事のじいやのことも、名前を尋ねたことはなかった。むしろあえて聞かないようにしていた。ミケラはただ微笑んだ。二人の頭に手を伸ばして髪や襟を整えてやった。

  自分の手を見つめていると、それが血で赤く染まっているように見えて——動きを止めた。

 途端に心臓に氷を当てられているような冷たさを感じ、体が石のように固まった。ミケラの脳裏には、夢で見た情景が繰り返されている。


 ——彼は眉をきつく寄せながらこちらを見ている。瞳は紫色に濡れている。人間離れした美しい顔。一度見たら忘れようもないような男のことを、ミケラはもちろん知らなかった。


「ミケラお嬢様!こちらを向いてください!」

「すみません、ぼーっとしてしまいました」


 急に白昼夢から現実に引き戻されたミケラは慌ててラファールへ顔を向けて、最初に言われた通りのポーズをとった。斜めに体をずらし、顔を横に向けて……。すぐに部屋にはラファールの銀筆の音と、家族の談笑の声が響き始めた。

 小鳥の鳴き声が響き、笑い声が広がり、日常がそこにあった。それでもミケラはもういつもの通り笑顔を浮かべることができなかった。



「さてと、こんなものでしょう」

「……僕もうポーズするのはいやだ」

「わたしもやだぁ……」


 ローウェンとタマラはうんざりした声色でそう言った。ミケラは愚痴は溢さなかったが、内心はローウェンとタマラと同意見だった。長時間動けないというのは体への負担が激しいのか、ミケラは数時間乗馬をするよりもドッと疲れてしまった気がした。


「それでは私は一旦部屋に戻りますね」

「ミケラ、待ちなさい」


 アレクシスに呼び止められてミケラは首を傾げて踵を返した。その背後でエヴリンがメイドたちに指示を出して椅子を動かしている。ラファールの目の前には一つの椅子が取り残されている。


「次はミケラだけの肖像画の準備をお願いしているの」


 エヴリンの弾んだ声を聞いてミケラは「ひっ!」と小さな悲鳴をあげた。


「さぁ、ミケラお嬢様、そこへお座りくださいませ。もう数時間ほど、模写させていただきますぞ」

「え、そんな……お母様、私なんかの肖像画が必要かしら……お見合いもしないわけだし」


 言うべきか迷ったが、ミケラは本当にもう模写をされるのは嫌だったので付け足した。ミケラの婚姻相手は決まっている。——妖精の王だ。


「なぁにを言っているの!! 必要に決まってるじゃない! あなたの可愛いお顔を、覚えさせてちょうだいよ」


 そう言われてしまえば、ミケラに対抗する術はもうほとんどない。ミケラは渋々椅子に座ってラファールの指示通りにポーズをとった。


「……もうすこし、可愛く」

「いやもっと聡明そうに描いてくれたまえ」

「おや、ミケラ様の目はもう少し大きいはずですよ」

「お姉様の目はとびきり綺麗に描いてね、とびっきりね!」

「ねぇ、ちょっとふっくらさせすぎじゃないかしら?」

「あとで花冠を被ったお姉様の模写もお願いできますか?僕とタマラで作ったんです!」


 ラファールの模写が始まると部屋に広がる空気は一変した。

 ラファールの背後に陣取ってアレクシスもエヴリンも、ローウェンとタマラも口々に指示をした。おまけに執事やメイドたちも覗き込んでこそこそと口を挟み、家族の肖像画を描いていた時よりも部屋はうんとうるさくなっている。

 苦笑いを浮かべながら「そうでしょうかねぇ?どうでしょうかねぇ?これから陰影をつけますから、印象も変わりますよ」と受け応えているラファールをミケラは哀れに思った。違う違う、こうじゃない、もっとこうしろ!と文句をつけられるたびに、ラファールの返答に苛立ちが滲み始めている。その炎がいずれ引火するのをハラハラしながらミケラは見守った。


「少し待っていてくださいね!!花冠を持ってきますから!」


 しばらくするとローウェンが大声を出して、タマラと共に脇のテーブルに向かった。そして、ミケラに駆け寄って背伸びをしてミケラの頭に花冠を載せた。ローウェンとタマラは「わぁ!」と感嘆の声をあげて、歯を見せて可愛らしくはにかんだ。


「姉様、とってもキレイです」


 ありがとう、と答えたミケラの声には深い深い愛情が篭っている。


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