私の日常

 私が通ってる私立征帝学園中等部は、中高一貫校。中学受験が行われる共学校では1番偏差値が高い。授業のレベルも高く、高校進学のときは中等部の成績が悪いと進学できない可能性もある。


「おはよう、美空。助けてぇ〜〜」


「どうしたの」


「今日、一限から英語だったの忘れて、訳してないの」


「えっ、また訳して来るの忘れたのですか!今日、確か当たりますよね」


「そうなんだよ。だから、助けてぇ〜〜〜」


 涙目になる友人。特に英語と数学の授業スピードは速いので、しっかりと予習しないとついていけない。


「もぉ、しょうがないですね……。はい、ノート。シャーペンも使いますか?」


 私は友人に手を差し伸べて、英語のノートとシャーペンを渡した。


「ありがとう。『』、恩に着ます!」


 HRが始まる前に急いで写す友人。訳を写すことに集中しすぎて、全部ひらがなになっている。


「そういえば……」


 もう少しで写し終わりそうなためか、余裕が出て喋りはじめる友人。


「この近くのカフェがイン◯タで超話題なんだけど、日曜日行かない?」


「あーーー……ごめんなさい」


 友人の英訳を見ながら、返事をする。


「えぇ~いつもじゃん。美空と遊びたいよ〜」


「もう少し前だったら、調整できましたけど……2日前は難しいですね……」


 私は眉を下げて答えた。


「確かに、そうかも……。よし、写し終わった。ありがとう美空」


 HRが始まる2分前に写し終わった友人は、自席に戻っていった。私も一限目の英語の再確認をしようと思ったとき、隣の席の男子に声をかけられた。


「青柳さん、消しゴム落ちましたよ」


「あっ、ありがとう。山口くん」


 英語のノートを出したときに落としたのだろう。

 

 HRのチャイムが鳴り、担任がやって来た。


「お~い、HR始めるぞ。日直、挨拶」


 今日も私の学校生活が始まる。


◇◇◇


「昨日の推しがめっちゃカッコよかった!」


 昼休み

 昨日の歌番組に出演していたアイドルについて語りだす友人たち。


「ターンしたときとかマジ神で何回も見ちゃった」


「確かにあれは国宝級だった」


 うっとりとした顔をしている友人たち。アイドルには興味ないけど、皆と話を合わせるために相槌を打つ。友人たちは各々のアイドルについて熱く語りだし、おしゃべりが止まらない。私は適度に笑って「そうなんだ〜」と言いながら、素早くお弁当を食べた。


「ねぇ〜美空。昨日のダンス再現してみてよ〜」


 ダンス動画を見てた友人がニヤリと笑う。


「ゲホゲホ。えぇ~見てないからムリですよ」


 突然、話をふられて、焦ってむせる私。昨日は家でゆっくりと色々な本を読んで過ごしてたから、その番組を見てないし……。どんなダンスか知らないし……。


「YouTubeにダンス動画あがってるし、美空なら大丈夫でしょ」


「えぇ~ムリです」


「お願い。みんなも見たいよね」


「見たい見たい。また完璧に踊る美空の姿」


 前に動画を1回見ただけで、友人たちが推してるアイドルたちのダンスを見様見真似で踊ったことがある。

 それが驚くほど完コピだったらしく、それからたまに休憩時間などに踊ってくれと頼まれるようになった。いつもは断ってるが、こんなに目をキラキラさせてると断るに断れない。


「もぉ〜しょうがないですね、今回だけですよ」


 スクールバックからスマホを取り出して、YouTubeでそのアイドルのダンス動画を見る。再生速度は半分にして、上半身の動かし方、細かいステップを集中して覚える。

 頭の中で反復練習。反復練習。反復練習。


 5分後

「大体でいいですか?」


 昼休みはもう残りあと僅か。ストレッチをしながら、友人たちに聞く。細かいところまでは分からないけど、大まかな振りは頭に入った。


「美空のは『完璧』にできてます!ねぇ~」


 ある友人がそう言い、他の友人たちも「ねぇ~」と口を合わせる。

 微妙に体の可動域が狭いから、ポーズがビシッと決まってないと思うけど、友人たちから見れば完璧に踊れてるらしい。


 友人の1人が音楽をかける。

 教壇に立ち、ビートを刻む。

 重心をかけすぎない。

 裏拍を意識する。

 動きに深みグルーヴを出すために肩を入れる。

 そのことを注意するだけで大体の曲は踊りこなせる。

 最後は友人の推しのキリングパート見せ場でキレイにターン。


「一応、こんな感じだったと思いますけど……どうですか?」


 滴る汗を拭きながら、友人たちを見る。友人たちは猿のおもちゃのように拍手をして、溜息をついた。


「はぁ~これで完璧じゃないって、どんだけ完璧主義者」


「学業優秀、運動神経抜群、どんな話でもついてこれるコミュ力お化け。人生何周目ですかって感じだよね」


 やさぐれる友人たち。学業優秀、運動神経抜群は認めるけど、コミュ力お化けというのはちょっと違う。

 相手が興味を持ってることに幅広くアプローチできてるだけ。

 人に好かれる努力を人よりしてるだけ。


 それに私だって苦手なことはある。


「そんなことないですよ、私だって社会は苦手ですし……」


「それだけでしょ!」


 その社会が壊滅的なんですけど、友人たちは知らない。中間テスト・期末テストは学年別に全校生徒の総合点が張り出されるが、各教科の点数までは張り出されない。各教科の点数知ってるのは己のみ。


「盛り上がってるところ、すみません」


 友人たちと騒がしくしてると、山口くんが声をかけてきた 。


「どうしたの?山口くん」


「次の授業、理科準備室になったので急いだほうが……」


 辺りを見回すと私達と教室を出ようとしている山口くんしかいない。


「「「「「ヤバい」」」」」


 急いで机を片付けて、理科準備室に行く準備をする。許される速度で私達は理科準備室へと走った。

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2025年1月9日 06:00
2025年1月10日 06:00

ミュージアム好きな私は超絶方向音痴なため、鉄オタのクラスメートに頼りすぎてしまう ローラ・ローランド @LAURAROLAND

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