ケーキを切れない大人たちのアドベントカレンダー2024
@tinksfurikake
12月10日 大阪からきたベイビフェイス
かなりの頻度で失恋を経験しているため、告白するまでもなく相手の視線で全てを察して試合が終了するため、その都度髪を切っていると破産してしまいます。だから丸坊主にして寝癖がどうにもならない程度まで伸びたらまた丸坊主という斬新なシステムを採用して、はや3年が経ちました。昨日の朝、どうにもならなくなっていることに気づいたので、散髪に行きました。サッカー方面には非常に敏感なので、「小野伸二みたいな髪型にしてください」と美容師のおにいさんにお願いしたところ、全てのミッションが完了した後、鏡に映っているのはバッファロー吾郎の木村さんでした。美容師のおにいさんの髪型が、明らかに菅田将暉だった時に危機を感じるべきだったのでしょうかおでは。満面の笑みを浮かべて「これでいいですか?」と確認してくる菅田将暉。その笑顔と垂らした前髪が憎い。おでが垂らすべき前髪は、すでに床へ散らばっているというのに。でもだからといって、「ダメ。これは無理だからどうにかしてください」とお願いすることもままならず。なぜなら一枚刈りに成り果てたおでに残された選択肢は、(1)五厘刈り、(2)スキンヘッド、(3)鳳仙学園、の三択であり、いずれを選択したところでサラリーマンらしさをより失うだけだろうから。ならおでは木村であり続けるべきではないかと、そう結論づけました。いまだ満面の笑みを浮かべ続けている菅田将暉に向かって、「いい仕事をしたね」と伝えました。すると彼は、菅田将暉ではなくなりました。接客用の仮面を脱ぎ捨て、見るものを射すくめるような厳しいまなざしでこう問いかけたのです。
「なら貴様に問うっ!……丸坊主と掛けまして、
謎掛けキタコレ。まさか散髪屋さんでクイック大喜利が始まるとは思いませんでした。静まり返る店内。他のお客さん、店員さん、全てが固唾を呑みながらおでを見つめています。もちろん普段のおでならこの圧力に押しつぶされて、愛想笑いを浮かべながら「ウンコマン参上!」と意味不明なヒーローの一つも作り上げていたのかもしれませんが、この時のおではひどく簡単に回答を思いついたのでした。
「ヘアー(部屋)がない!」
はにかんだ顔で見つめること数秒の後、菅田将暉に戻ったおにいさんは涙を流しながらおでを抱き締めました。店内が拍手と歓声に包まれる中、おではおでが田中でありながら木村を強いられたその理由を考えていました。いや、考えるまでもありませんでした。おそらく彼は、外見を変えることが内面へ何がしかの影響を及ぼすであろうという、その可能性に賭けたのです。ダイナマイト関西の主催者でありますところの木村さんに限りなく近づけることで、おでの大喜利脳の覚醒を促そうとしたのです。抱擁することで、菅田将暉の体温と息づかいを感じることで、彼の意思がまるでおでの中に溶け込んでくるようでした。なぜひとは抱擁するのか、それをようやく理解できたような気になりました。「また、来てもいいですか?」「うむ。道に迷った時は、またここの門を叩くとよい」「で、いくらでしたっけ?」「2,200円です」的なやりとりの後、家に帰って大喜利の練習を数時間こなしました。更にIPPONグランプリを拝見して、チェアマンが芸能活動を休止してる点もひっくるめて、大喜利の楽しさと怖さなどを学んだりもしました。今日は朝からパチンコ店に行ってCRエヴァンゲリオンを打ちますが、これは特に大喜利とは関係がありません。「釘が甘いねん」と友達に教えてもらいました。確変が引きたい。ただそれだけです。
ケーキを切れない大人たちのアドベントカレンダー2024 @tinksfurikake
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ケーキを切れない大人たちのアドベントカレンダー2024の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
道楽草最新/十三岡繁
★15 エッセイ・ノンフィクション 連載中 201話
240歳のミステリーツアー新作/菜の花のおしたし
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます