まるで

 そーいうことがどーいうことなのかを知ったのは、車を降りて、嫌になるくらいに白くピカピカに磨き抜かれた建物に入ってすぐだった。

 透き通った曇り一つ無いガラス張りの廊下。

 そのガラスの向こう側に見えたのは、巨大人型ロボットだった。

 そういうものがあると聞いていたから、ひと目でそれがそれなのだとわかった。

 とはいえ、想像よりもそれはずっと太ましかった。

 僕が想像していたのは人間に似たひょろりとした体型のものだったが、そんなものではなく、戦う為に造られた兵器である。ということがひしひし伝わってくる重量感に満ち満ちていた。

 言うなれば、無骨だった。

 研磨していない黒曜石をいくつもくっつけて人の形に……頭、胴体、手足に無理やりしてみましたという感じだ。


「初めてこーいうロボットを見たわけだけど……何か感想とかあるか?」


 隣を歩いていたAさんに問われた。

 少し考えて、僕は思ったまま答えた。


「……大きいですね」


「そりゃあ、巨大ロボットだからなぁ」


「黒いですね」


「そうだなぁ。黒いなぁ」


「この見た目……まるで……」


「何だい?」


「……いえ、何でもありません」


 まるで悪のロボットみたいですね。なんて言うのは流石に失礼だろう。

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