4 壊れゆく関係、それでも幸せを願う

そうして彼女と会って、帰ってきてまもなく始まった新学年。ここが全ての元凶だった。


ニ年生の頃、周りの人と馴染めなかった自分は、三年生でちょっとでも自分から話して友達が出来たらいいなと思っていました。ですがもう、全てが遅すぎたんです。自分の所属する科は2クラス、前年とたいして人が変わらないのです。友達を新しくつくるには、地盤が固まりきって今更どうすることも出来なくなっていました。そんな中、無理をするとどうなるか、気味悪がられて距離を取られます。周りから避けられて、当時の自分にはそれがとてもきつかったのです。そしてそれは自分が学校に居たくない、自分に居場所はない、消えてしまえば良いと病んでしまう原因になってしまいました。


おそらく病んでいたのがちょっと接し方にも出ていたんでしょうね。最近依存しすぎてちょっと怖いと言われてしまいました。関わることを抑えたら、自分が更に病んでいってしまいました。おそらくそれを見るのが辛かったんでしょうね、彼女まで病んでしまいました、リスカまでするようになってしまいました。でも自分のせいなので俺にはなにも言えないんです。当時はよくわかりませんでしたが、今思えば、居場所を失った自分の存在意義を全てあの子にゆだねてしまっていたのでしょう。そりゃ重いですよね。


少しずつ話すことが減っていきました、正直薄々察していました。俺が近くにいるとあの子は自分を責めてリスカなどの自傷行為に走る、俺なんかが一緒に居ないほうがいいって、わかってたんです。でもなんとか直そうとしました、壊したくなかったから、この関係を。できるだけずっと一緒に居たいから。でも、それが叶うことはありませんでした。


5月某日、あの子から別れようと言われました。わかってたんです、別れようって言われることくらい、自分の存在が彼女を追い詰めていることが分かっていたから、できるだけ笑って別れようとしたんです。


その後はめちゃくちゃ病みました。学校の人間関係もうまく行かない、ネットでの人間関係も全部壊れてしまった、自分が持っていたものを全て失ったのです。授業が手につかなくなり気分が悪くなり、精神面から情緒不安定や破壊衝動などの不調で、頻繁に保健室に通う日々でした。心療内科にも行きました、精神安定剤を飲んで過ごす日々、なにもない虚無の日々、なにかにために生きてきたのが全てどこかに行ってしまって真っ白に燃え尽きた心。あの頃は本当に辛かったです。死んでしまおうかと何度も思いました、でも死ぬ勇気はありませんでした。


…今となっては、それも人生の一つの出来事だったと思えています。悲しかったですし、今でも一緒に居られたらなと思っています。でも人と巡り合うのも、別れてしまうのも、それもまた運命なのです。自分にとってあの子ほど大事にしたいと思えた存在は、あの子以外にいません。これから先自分が守っていきたい人が出来るのかもわかりませんが。いまでも、進むステージが違っても、あの子の幸せを祈っています。


どうかあの子の人生に光あれ、俺も別のステージを進んでいく、きっとその先に幸せがあると信じて、人生は苦難の連続だ、だけど、苦難しかない人生なんて無いと思ってる。でもあの子がどこかで、幸せに暮らしてくれるならそれでいい、どうか幸せで居てほしい。俺もいつか、幸せになってみせるから。

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エピローグ


別れてから半年経った今、前に会った時、ぎゅってし合った感覚はもうほとんど残っていません。ただ付き合っていたという事実だけが自分の記憶とともに残り続けるのみです。幸せだったはずの昔、生きる希望が見えてた時代、その頃の感覚もほとんど残っていないのです。


どんなに幸せなことも、辛かった記憶も、忘れたくない思い出も、時の流れとともに薄れて、不鮮明になっていくんです。仕方のないことです。だけど、はっきりとあの頃のことを覚えてられないことは、とても悲しいことです。


もし今、人生の幸せを噛み締めてる人は、精一杯楽しんでください。辛い今を生きてる人は、いつかの幸せを願って今日を生きてください、どうかあなたのこれからの人生が、光で照らされるものでありますように。

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もう遠くへ行ってしまった君へ 藍色の星 みり @aihosi_miri

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