第4話 なんてこったい四天王候補

「私に素質、ですか。ユビル様が言うのなら本当なのでしょうけど……中々信じられませんね。私は力がなく、それによって迫害を受けてきました。反抗する力もあるはずなく、雇い主に拾われるまでは永遠に」

「そりゃそうでしょう。レベルアップをしていない魔族は弱いわよ。いえ、魔族だけに限った話じゃないわね。全ての種族全体、レベルアップをしなければ弱いままよ」


そう、この世界の弱肉強食はレベルでできていると言っても……過言だな。

基本的にはそうだが、例外ももちろん存在している。

レベルが劣っていたとしても、『キセキ』と『運命』が重なり合えばできるとか。

俺はそこまでガチ勢じゃなかったからしらんけども。


しかし…ママさんのノーレベリングでここまで来てんの?嘘でしょ?

こんなに偵察とか影で動くのが得意そうなママさんの魔力がノーレベリングでこうなってるとか。

うむむ、才能の原石がこんなところで放置されているとは。

魔王様さぁ、もう少し自分の魔国で宝石を探しましょうや。

スラム街で見つかりましたけど。


まあ、スラム街にまで手が回せないって気持ちも分かるけどさ。


「れべる、ですか?ですが、あれは高尚な者がようやく至れる境地であると」

「古臭い教えね。今の大衆の考えは違うわよ。レベルアップなんて、自分のピンチ乗り越えれば自然と達成するわよ」

「自然に……」

「不安ならワタシに言いなさい。レベル10程度ならサポート込みで上がれるわ。それ以上は中々難しいけど、10まで上がれたら自然と掴めてくるものよ。特に、アナタのような者はね」


レベルってのは平等だが、平等じゃない。

上がった能力を十全に発揮できるか。レベルという変化に適応できるか。

才覚に関しては、レベルでも不平等にやってくるもんだ。

だからこそ上がれる者もいるし、上がれない者もいる。


けど、ママさんは違う。疑いつつも飲み込める適応力、レベルを上げずとも物事に隠れるような魔力。

全てがレベルアップの才覚を表している。


これでもエリートで集められたんだが……少し妬けるな。


「私……私やってみます!四天王になれるかは分かりませんけど、自分がやれる全力で挑ませてもらいます。けど……」

「けど、なにかしら?」

「私は、この店でママをやりたいです。客がこなかとも、あの人が託してくれたお店だから…!」

「良いでしょう。許可します」


***


「「うわぁ」」


そんなこんやで連れてきたママさん……ユリちゃんなんだが、途轍もない速度で成長してますよと。

来た当初は迷宮ゴブリンに苦戦してたけど、レベルが5に上がったら豹変。

隠れるような、見えにくい自身の魔力を駆使し、バッサバサと魔物を倒して行く。


的確に殺せる急所を狙ったり、魔法も使わず音を出さずに走るのはクノイチかなと思いました。


「なぁ、ユビルちゃん。あの動き、可能か?」

「魔王様、無茶を言わないでくれるかしら。ワタシは科学者よ?あんなアサシンを超えたアサシンみたいな動きできる訳ないでしょう」

「だよなぁ。あれだけの動きが可能て事は、相当のレベルだろう。あの者は来たばかりと聞いておるが、レベルは?」

「41よ」

「え?えぇ…?」


レベルは0から始まり、一つ一つの試練を超えていく形でレベルの壁を超える。

急激に難易度が跳ね上がり、重苦しくなるのは50レベからだが、短期間で40レベル代まで行くのが簡単な訳ではない。

生半可な者が短期間で40レベに挑戦したとあらば、だらにも看取られず死するのは間違いない。


そのぐらい危険な壁をユリちゃんは超えた。

科学者だからと慎重に歩いて来たとはいえ、現四天王の俺のレベルは53。

そして、これは前の俺が挑戦した回数で、乗り越えた回数だ。

俺がチャレンジをして来た訳じゃない。


つっても、しょうがなくはあるんだが。色々な仕事が押し付けられたんだ。チャレンジをしている暇なんか無かった。

俺を失ったら、この国の魔王軍は衰退の一途を辿ってしまう。

俺は魔国を支える四天王の一角だし、チャレンジするのは無理な話だ。


「はは…ざっけんじゃないわよ。何がしょうがないよ、勝手に諦めてるなんて……何が四天王か。怯んで腰引いてるようじゃ、四天王とは言えない。どの役職であろうと、国の為に牙を振るのが四天王の役目」


__先輩とは、後輩に風を吹かせる者。後輩へと道を示す者。


くっそ、乗る気なんて無かったのに。

ワタシから俺に移り変わっていた間、胸奥で燻っていた四天王としての誇りに火がついた。


仕事が忙しい?俺が死んだら魔国がおしまい?

ははっ、もっとデカくなってからそれを言えよ。

魔王様がいる限り、この国に終わりはない。

ちょっと建て直すのは大変かはしれんが、どうしようもない終わりへと直面はしない。

だったら、死ぬ気でクソ高ぇ壁に挑むしかねェよなぁっ!


「瞳ン奥の中がメラメラと燃えとんのォ。最近はあまり見せんかったが、今ァなってようやく牙を剥き出したか。くくっ、四天王っちゅうのは面白いもんだな。火を勝手に付け合って、勝手に競い合っとる」

「ダメかしら」

「いいや、そっちの方が魔国に相応しい。それにや、勝手に競い合う方が純正の魔族っぽいだろうや」

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二番目に倒される四天王になっちゃった〜なんでっ!オネエ口調になっちゃったのよォォォ!!〜 鋼音 鉄@高校生 @HAGANENOKOKORONINARITAI

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