第6話 バッツとの対決
ケッツは母マリアの部屋に向かう。ノラから今からなら時間を取れるそうですと言われたのだ。なのでマリアの部屋へと足早に向かっていた。
「母上、よろしいですか?」
礼儀正しくノックをしてそう聞くケッツ。
「ケッツ、勿論よ。入ってちょうだい」
ケッツは扉を開けて中に入った。するとマリアは自首訓練をしていたようだ。少し汗ばんだ身体をクールダウン中のようである。
「母上、訓練ですか?」
「ええ、そうよケッツ。懐かしいお友だちから手紙が届いたから恥ずかしい姿を見せられないと思って」
きっとリューインからの手紙だろうと思いちょうど良いと思ってマリアに聞いて見ることにするケッツ。
「母上、実は学園の担任であるリューイン先生から按摩の依頼があったので母上宛に連絡を入れて下さいとお願いしていたのです。ひょっとして懐かしいご友人というのはリューイン先生ですか?」
「そうよ、良く分かったわねケッツ」
マリアがあっさりと認めてくれたのでケッツはコレ幸いと何があって友人となったのかを聞いてみた。
するとマリアから十三年前の出来事を教えられる。
『なるほど。リューイン先生の【舞脚】は母上の【舞闘脚】をアレンジしたものだったんだ。似ている筈だね。しかし、その頃に身重だったっていう事は僕だよな…… 母上、無事に産まれたので言いませんが無茶はダメですよ……』
話を聞いてそう思ったケッツだった。
「それで、リューインちゃんの予約なんだけど次の休日に入れても大丈夫かしらケッツ? 午前中に二件、午後に一件だったわよね?」
「はい。大丈夫ですよ母上。午後の一件はセレス嬢ですから五分で終わりますし」
「まあ、セレスちゃんだったの! おマセさんね!!」
セレス嬢は御年八歳のハーレスト伯爵家のご令嬢だ。僕に頼みたいのは身体強化(胃腸)らしくて、乳製品を食べると直ぐにグルグルいうお腹を何とかしたいとの事。
もちろん可能なので施術する事にしたんだ。
「いえ、母上。セレス嬢は真剣な悩みがありまして。それを改善してさしあげるんです」
「そうだったの。私の早とちりだったのね、ごめんなさい」
それから暫く談笑してマリアの部屋を後にしたケッツ。自室に戻り母に触発された修行意欲を解消する為に太極拳の老架式を繰り返し、繰り返し納得いくまでするのであった……
そして納得して稽古を終えた三時間後。ケッツはバッツに呼び出されて部屋に向かっていた。
「バッツ兄上が僕を呼ぶなんて珍しいな?」
いつも用事がある時は自分からケッツの部屋に来ていたバッツだが、今回は元ケッツ付きの侍女をケッツの部屋に寄越して呼び出されたのだ。
「ケッツしゃま! バッツしゃまがお呼びです。時間の都合がよろしければ今から部屋にお越しいただけないかと申されておりますが、どうでしょうか?」
呼びにきた侍女はシンミー·ヤウといい子爵家の三女だ。ケッツ付きの時も普通に会話をし、ジェッツから役立たずと言われた後にも普通にケッツと接していたので他の侍女たちからは変わり者と言われていた。
ケッツの後にバッツ付きの侍女となってバッツに心酔し堕ちたがケッツの尻按摩を受けてからはケッツにも堕ちて、今やバッツにもケッツにも堕ちてしまっているがそれを隠そうともしない残念な侍女である。
「ケッツしゃま、次はいつシンミーに按摩をして下さいましゅか?」
バッツの部屋に行くまでの間にそう聞いてくるシンミー。
「そうだね。シンミーが時間の都合をつけれるなら明日でも良いよ」
「はい! バッツしゃまにお伺いしてみましゅ!!」
バッツの部屋に着くと、
「バッツ様、ケッツ様をご案内してきました」
バッツの前では堕ちた素振りを見せずにクール侍女を演じるシンミー。
「有難う、シンミー。入ってくれるかなバッツ」
「はい、兄上。失礼します」
「うん、そこに座って。シンミーはもう良いよ、少し席を外して欲しい」
「畏まりました。ご用の際はお呼び下さいませ」
シンミーが退室するとケッツの正面に座るバッツ。
「ナッツとヤりあったんだねケッツ。かなり荒れていたよ。私にまで突っかかってきたから大変だったよ」
「ああ、申し訳ありません、兄上。けれども兄上の相手では無かったでしょう?」
「うん、まあね。本当はまだ手の内は隠しておきたかったから相手をしたくなかったんだけどね。まあ、それは置いといて。ケッツ、今から訓練場に行こうか。私としては今の自分の実力を客観的にケッツに見てもらいたいんだ」
バッツはケッツにそう言って頼んでくる。
「分かりました兄上。お相手いたします」
ケッツも直ぐに了承して二人で訓練場に向かった。向かった訓練場は屋敷外にある祖父が使用していたもので、ジェッツやナッツが使用しない訓練場だ。ナッツが後継者となってからバッツとケッツはここを使用してお互いの実力を高め合っていた。
といっても主にバッツの実力をだが。
「それじゃ、今日こそはケッツから一本とってみせるよ」
「兄上、優しさは兄上の美徳ですが今日はそれも捨てて夜叉になってかかってきてください」
訓練場の真ん中で互いに対峙する二人。どちらかともなく構え、そしてケッツが仕掛けた。
「フッ!」
「スゥー、シャッ!!」
ケッツの踏込みと同時に放たれた死角からの振り手を柔らかく裁き、裁いたその手でケッツの脇腹を打とうとするバッツ。しかしそれをケッツは体捌きで勢いを殺して裁かれた手でバッツの後頭部を狙う。
今度はバッツが素早く頭を下げてそのまま頭突きをケッツの腹部に放つ。
ケッツは手でその頭を抑え力を外に逃がす。バッツはその流れに逆らわずに動き、ケッツの横に回り込み掌底をケッツの背中に向けて放ったが、ケッツは躱して後ろ蹴りをバッツの脛に向けて出す。バッツは大きく飛び下がりその攻撃を躱した。
「ケッツ、流石だね。でもまだこれからだ!」
今度はバッツから仕掛ける。互いに決め手が決まらずに五分が過ぎ、十分が過ぎた頃にケッツがバッツを止めた。
「ここまでにしましょう兄上。素晴らしい技の冴えでした。今ならば父上の技すらも殺せるでしょう」
呼吸一つ乱さずにケッツがそう言う。一方でバッツは少し呼吸を乱している。
「ハア、ハア、そうか。ケッツがそう言ってくれるなら私の腕も上がったらしいな。けれどもまだまだだ。もっと力をつけなければな」
「波静鎮動拳の完成は見えてきましたか?」
「うん。全ての波や動を鎮める為にどうすべきかは見えてきたよ」
バッツの拳は太極拳と同じである。だが、その拳はこの世界でバッツが自ら考え出した拳である。なのでケッツは前世で学んだ太極拳からバッツに少しアドバイスをするだけだ。
後はそのアドバイスからバッツが工夫をして技に昇華させているのだ。
「ならば父上の拳を兄上は既に超えています。父上は未だ羅漢金剛拳の完成が見えて無いですから」
「それでも父上は強い。私はもっと修練を積んでいくことにするよ。今日は有難うケッツ」
「いえ、僕も良い修行になりました」
ケッツはケッツで八卦掌と陳式太極拳を合わせた拳を考えながら作っているところである。バッツとの対戦はその考えにとても役立つのであった。
『しかし兄上は本当に強くなられた。僕が前世で太極拳だけしか学んでいなかったならば負けていただろう程に…… 僕もこれからも修練をもっと積んでいこう』
決意を新たにケッツは自室へと戻った。
「ケッツしゃまー、バッツしゃまの許可をいただきました〜。明日、よろしくお願ひしましゅ〜。わらひは明日は勝負下着で参りましゅね〜」
戻って十分後にシンミーの訪問を受けてそう言われ少し力が抜けてしまったが。
女体限定、尻按摩師 しょうわな人 @Chou03
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