第10話

(本当……想像以上に似合ってる!)


背が高い彼。でもその身体つきはほっそりとしていて、肌もツルツルだから一見して男が女装している風には見えない。


敢えて表現するなら宝塚風の麗人という感じだ。


女装が趣味の彼へのプレゼントは絶対にこれだと随分前から目をつけていた。


それを今、目の前で具現化されて私は……


「……和巳くん」

「美紗緒ちゃん、先刻よりも蕩けた顔、しているね」

「うん……早く……和巳くんが欲しいよぉ」

「本当に美紗緒ちゃんって女の子が好きだね」

「好き……女の子、大好き…。でもね、本当の女の子じゃなくたって和巳くんが世界中で一番大好き」

「……美紗緒ちゃん」


ほんの少しだけ意地の悪い表情を浮かべた彼はゆっくりと私をベッドに押し倒し、そして先刻の続きを開始した。


「や……服、そのままで」

「美紗緒ちゃんだけ裸になるの? 僕はこのまま?」

「うん……和巳くん、スカート、まくって」

「んー……今日は僕の誕生日なのに美紗緒ちゃんのお強請りを訊くの?」

「そんなこといわないでぇ……お願い、そのフリルから和巳くんの……見せて」

「ふはっ、仕方がないなぁ。可愛い美紗緒ちゃんのお願い、きいてあげる」

「和巳くん、大好き」


嬉しさのあまり和巳くんの首に抱き付きついた。



それから私たちは夢のように甘い時間を過ごした。


それこそ私が作ったケーキなんかよりも甘くて蕩けるようなひとときを。




今日は大好きな彼の誕生日。


彼の望むもの、事を全て叶えてあげようと思っていたのに、優しい彼は私の望むことを一番に叶えてくれたのだった──。





(終)

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カミングアウト 烏海香月 @toilo

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