第9話
「え、このケーキも美紗緒ちゃんが作ったの?」
「うん。ホールじゃなくてごめんなさい。かさばっちゃうからショートにしたんだけど」
「謝らないでよ、形なんて関係ないよ。美紗緒ちゃんが作ってくれただけで凄く嬉しい!」
「和巳くん……」
彼は付き合い始めの頃から何も変わらなくて、いつも優しくてカッコよくて……可愛い。
「美紗緒ちゃん」
「あ」
不意に彼が近寄って来てそのまま甘い唇でキスした。
「……はぁ……甘い。美紗緒ちゃんも……食べたい」
耳元で甘く囁かれ一瞬のうちに私の中は潤いを湛えた。
「ん」
「あ……ま、待って」
首筋にキスされながら服のボタンを外す彼の体を少し押した。
「え……嫌?」
「ううん、違うの。あの、これ」
甘い雰囲気を壊すのは憚れたけれど、今日の最優先目的を果たすために和巳くんの前に綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「これ、誕生日プレゼント」
「えっ……本当に? だって料理やケーキ」
「それとは別に。これが本当の私の気持ち」
「美紗緒ちゃん……」
ほんのりと頬を赤らめながら彼は箱を受け取り、そして丁寧に包装を解いて箱を開けた。
「!」
「どう、かな。気に入ってくれた?」
「み、美紗緒ちゃん……これ、本当に? 僕に?」
「そう。絶対和巳くんに似合うと思って……。ねぇ、着て見せて?」
「うん!」
彼は満面の笑みを浮かべながらいそいそと私が贈ったものを手に取った。
その様子を間近で見ていると、どんどん胸が高鳴って来る。
そして──
「どう? 似合うかな?」
「すごい……すっごく似合うよ、可愛い!」
「ははっ、嬉しいなぁ」
私の目の前に現れたのは可愛らしいロリータ風メイド服に身を包んだ彼だった。
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