第7話 妹と水族館へ
(ん…)
鳥のさえずりと共に目が覚める。
俺の背中に、とても柔らかくて何となく触れてはいけないものが当たっている。
(そういえば美咲と、昨日寝たんだな。)
昨日知ったことは、俺の存在は美咲にとって生きがいとなっていることだ。
料理とか生活面で崩れるとかでは無い。
彼女の精神を保っているのが俺と言うことだ。
(今日は休みだからもう少しだけ一緒に寝るか)
そう考え、もう一度目を閉じる。
数時間が経ち、妹が起き俺の布団から出ていき俺の部屋から出ていく。
俺は、美咲の部屋のドアを閉める音が聞こえた時に起き上がる。
(朝ごはんでも作りに行くか)
ポールハンガーからエプロンを取り、階段を降りながら服の上からエプロンに着替える。
台所に着き冷蔵庫を見る。
「焼きジャケと味噌汁、卵焼きと漬物にご飯でいいかな今日は。」
いつもどうりに携帯で少し音楽を流しながらいつもどうりにご飯を作る。
今日は昨日のこともあり、少し気分が落ち込んでいる。
(あの時俺はどんな対応すればよかったんだろうか…)
それが出来てたら俺は、今こんなに困っていないのだろう。
この土日何も特にすることも無いので、妹とどこかに出かけようと思う。
数時間後…俺はご飯を作り終え、美咲を呼ぶために階段まで移動する。
「おーい、ご飯できたぞ」
そう言うと、2階からドアを開ける音が聞こえたのでお茶を取りに移動する。
居間に戻ってくると、そこには正座で座っている美咲がいた。
「おはよう…お兄さん」
「うん、おはよう」
俺は微笑んで、お茶を出す。
「じゃあご飯食べようか」
「うん…」
少し気まずそうにしているので、俺は提案してみる。
「美咲、俺と今日水族館行かないか?」
美咲はそれを聞き、少し顔が赤くなる。
「うん、いいよ」
俺は、その言葉を聞き少し安心する。
美咲は、こういう時だいたい自分の気持ちを我慢する。
だからそれを逆手にとって、妹が行きたい場所に連れてってあげることが俺のできる事だ。
「ご飯食べたら行くか」
「…ありがとうお兄ちゃん」
美咲の表情がいつもに戻りつつあり、俺はそれに微笑んで答える。
朝ごはんを食べあと俺が、台所で皿を洗っていると美咲が来る。
俺は、最後の皿を洗い終えタオルで手を拭く。
「お兄ちゃん今日なんで私と行こうと思ったの?」
俺はエプロンを脱ぎながら答える。
「ただ俺がお前と行きたかっただけ、気にするな。」
俺は少し微笑んで美咲に伝える。
本心で話すと、美咲に元気になって欲しいと言うところだがそれを話すとまた心配をかけてると思われるからだ。
「……そうゆう所だよ?お兄ちゃん」
俺はそれに「どうゆう事だ?」と返答すると美咲は顔をプイッとする。
美咲は玄関に歩いていき、靴を履いて「外で待ってるから来てね」と美咲が言う。
俺は「わかった」と返事を返す。
俺は階段を上って自分の部屋に移動して私服を着る、美咲を待たせないように早めに着替える。
着替え終えたので、俺は階段を早く降りて玄関につき靴を履く。
ドアを開くと美咲が微笑んでこちらを見てくる。
「じゃあ行こっか。」
「そうだな」
美咲に、風が吹きスカートが揺れている。
俺は、美咲の手を握り水族館に行くことにする。
電車で行くので、歩いて駅まで行き俺は美咲と俺の切符を2個買う。
(今日は、美咲に伝えなきゃ行けないことがある。)
そう考えながら、俺は切符を買い美咲の所まで行く。
「これ無くすなよ?」
「…はい」
美咲の表情が悲しそうで、心配していると思ったので俺は微笑む。
「そんな顔するな、今日は俺が行きたいと思っただけだ。」
「…!」
美咲は、顔を少し赤くしながら顔を隠す。
「お兄ちゃんありがと…」
俺は切符を美咲に渡す。
切符を改札に入れて、俺と美咲は電車を待つ。
数分したら電車が来たので、俺たちはその電車に乗る。
今日は休日なので電車が空いていて、楽に座ることが出来た。
「今日は空いてるな」
「そうだねお兄ちゃん」
水族館…久しぶり行く、俺の妹がまだ小学生の時親と一緒に行った時以来だ。
俺は昔から、人が沢山いるところが苦手だ。
でも、妹が俺の手を握ってくれるおかげで俺は安心できた。
そんなことを考えてると、俺に美咲が話しかけてくる。
「お兄ちゃん、水族館なんて家族で言った時以来だね。」
「そうだな」
「また手を握ってあげようか?」
俺をからかう様な表情で話してきたので「昔の俺を言うな」と言う。
美咲が少し微笑する。
昔の俺は、美咲よりも怖がりで臆病だった。
それだから俺は、いつも人が居るところや暗いところには美咲と一緒にいた。
(懐かしいな)
俺はそう言いながら、美咲の微笑みに答える。
品川……品川……
そろそろ降りる駅に着くらしい。
俺は、「そろそろ行こうか」と美咲に言う。
美咲は頷いて、「うん!」と答える。
電車が止まり俺たちは階段を降り、少し歩いた先に水族館がある。
俺も小学生以来なので結構楽しみだが、美咲は昨日の美咲とは違う、元気な時の表情に戻っていた。
「美咲、今日は俺に着いてこいよ。」
「うん……!」
俺は美咲の手を握り、入場チケットチケットを2枚片手に持って、水族館に入る。
俺は入場チケットを2つとも
入場チケットを2つとも水族館の店員さんに渡し、通してもらう。
その先に待ち構えて居たのは、大きなジンベイザメが入った水槽だった。
「おお、デカイな」
「デカイね」
美咲が興味津々に水槽を眺めている。
久しぶりの水族館は、俺にとってもこれは凄いと口に出してしまう。
「お兄ちゃんこっち行こ!」
「……!」
凄い勢いで、俺の手を引く。
今日は俺が美咲をリードしようと思ったが、まぁしょうがないと思った。
次に、クラゲが沢山いる場所に美咲が俺を連れてきた。
「見てお兄ちゃん!きれい!」
「そうだな」
美咲は、そう言いながらクラゲコーナーをルンルン見回る。
俺は、少し心配に「あんまりうるさくするなよ?」と一応言っておく。
美咲は「はーい」と言って答える。
俺は美咲に着いていきながら、色々な魚を見る。
「お兄ちゃんあれ見て!何あれ。」
「あれ…ん?ダイオウグソクムシだな」
美咲は、目をキラキラさせながら俺に聞いてくる。
「海にもダンゴムシいるんだね!お兄ちゃん物知りだねぇ」
「そりゃまぁそれぐらいわ」
素直に美咲に褒められたので嬉しかった。
そんな話をしていると、美咲のお腹がグゥーと鳴る。
美咲は少し顔を赤くしてこちらを見る。
「今のは……なんでもない」
「…ご飯にするか」
俺は美咲の頭を撫でて、微笑んで言う。
俺の顔を見て照れくさそうに「うん」と言われたので、水族館の中にある食事が取れる場所に美咲と行く。
少し歩いたら、ちょっとしたランチができそうな店があったのでそこに入る。
俺は店員に案内され、席に座る。
「美咲、食べたいもの食べていいよ。」
「え?いいの?」
「いいぞ」
美咲は、メニュー表を見てどれにしようかものすごく迷っている。
俺は、そこまでお腹がすいていないので軽いものにしようと思う。
(俺はスパゲティでいいかな)
俺は決まったので、美咲に聞く。
「お前何を食べるんだ?」
「もーちょっと待ってて!」
美咲が、必死に考えてるので少し待とうと思う。
数分後…美咲が決まったらしく俺に伝えてくる。
「このイルカの形した、ご飯のカレーで!」
「了解」
俺は店員さんをボタンを押して呼び、俺のと美咲の料理を注文する。
(さて…料理が来るまで何を話そうか…)
美咲と話すことは家以外無いので、学校のことなどを聞いてみる。
「美咲は中学校どうだ?」
「楽しいよ、みんな優しいし。」
美咲がそう思っているなら問題ないと思った。
また俺みたいな感じでいじめを受けているのかとおもったが上手くやっているみたいだ。
「お前、みんなから好かれてるもんな」
「そうだよ!みんなのアイドル的存在だからね。」
妹は、ドヤ顔しながら言ってきたので俺は少々笑ってしまった。
少したったら俺たちが注文した料理が届いた。
「温かいうちに食べろよ?」
「うん!」
俺は、スパゲティにタバスコを少しかけてフォークで少し馴染ませてから食べる。
少し美咲の方を見ると、写真を撮ってなにかに投稿している。
「お前…何してるんだ?」
「乙女の秘密なので教えられません!」
美咲が何か隠し事があるらしいが、悪い事はしていないっぽいので深掘りはしないようにしよう。
俺は美咲がカレーを美味しそうに食べていたので、ここを選んで正解だと思った。
俺が食べ終わる頃には、妹も食べ終わっていた。
「お兄ちゃんおそーい!」
「ごめんごめん」
俺は食べるのが少し遅いのでよく俊に言われるが、それを美咲に言われると少し傷つく。
正直俺が食べるのを早くすればいいのだが…
「後半戦も付き合ってね!」
「そのためにここに来たしな」
ここから、また水族館デート?の始まりだ。
店を後にし俺たちはペンギンを見に行くことにした。
着いた途端、ペンギンが水の中をおよいでいる。
俺は、(可愛いな)と思っていると美咲が写真を撮りまくっていた。
「お前写真そんなにとってどうするんだ?」
「可愛いから問題なし!」
俺は少しため息をついたが、美咲が満足するまで付き合った。
数分後…
美咲が満足したらしく、俺は次行きたい場所を聞くとイルカ見たいと言われたので次の場所に移動する。
(この調子だとイルカも数分居ることになりそうだな…)
そう考えながら、歩いていると水槽トンネルに入っていた。
暗い影が上を通ったので上を向くと…
そこに居たのはイルカだった。
「イルカ可愛い〜!」
美咲がまた写真を取り出した。
(これはまた数分コースだな…)
俺はため息をして、周りの魚を見ていると何か見覚えのある人がいた。
目を細めて見てみると俊だった。
(なんであいつがいるんだよ。)
流石に今回はアイツらと会うことはまずい、美咲との水族館が壊れる。
俺は、こちらに近ずいて来る俊にバレないように美咲の手を握って走る。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「イルカショーがあるから急ぐぞ」
上手く誤魔化せたので、美咲も俺に着いて来てくれる。
少し走ったらイルカショーの場所について、俺は俊との距離を離せたことに安堵する。
正直、美咲には俺と2人で水族館を楽しんで欲しいのだ。
「もう始まってるね。」
「おう、そうだな」
美咲は、イルカショーを見ながら俺に話しかけてくる。
「小学生以来だね、イルカショーなんて。」
「そうだな」
美咲の横顔を見ながら俺は、美咲が少し悲しい顔をしながら見ていることが何となくわかった。
俺は、別に両親に好かれようが嫌われようが何とも思わないが美咲は両親の存在と言うものを大切に思っている。
ここは両親と行った水族館と言うこともあるので思い出したのだろう。
「イルカさんすごいね、お兄ちゃん。」
「美咲…?」
美咲が突然走り出した。
何か嫌な予感がしたので、咄嗟に美咲を追いかける。
「おい!美咲どうした!」
「…」
美咲は俺より足が早いので、直ぐに置いてかれる。
(俺体力少なすぎたろ…)
少し経ったあと、息切れが無くなったので美咲を探す。
美咲は我慢してきたのだろう、俺の事学校のこと、そして両親の心配をしていたから。
そんな事を思いながら必死で妹を探す。
(あの顔をさせてしまった…)
俺は美咲の兄だ、あいつの行く場所は何となくわかる。
俺はとりあえずそこに走って行ってみる。
「やっぱりここだなお前は美咲」
「……!」
美咲が泣きながらこっちを見る。
俺が考えた場所は、水族館の外にある公園だった。
ここは、美咲とある約束をした場所であった。
「お前はここで俺と結婚するって言ってたよな?」
「……覚えてたんだ。」
俺は一回告られていた━━━━
両親と水族館に行った後に両親がトイレに行っている時にこの公園で俺たちが、二人でいた時だった。
「美咲は、男の子と付き合わないの?」
「私は男の子に興味無いの。」
俺はそれを聞いた時、もったいないなと思っていた。
何故かと言うとこん時から美咲は、とても可愛かったからだ。
「興味無いって…まぁそれでもいいと思うけど」
「だって……ここに居るし!」
そう言いながら美咲は俺を指さす。
俺は驚きで倒れる。
昔の俺は弱虫で、臆病なのでまずまず美咲とは月とスッポンの差があったからだ。
「ぼ、僕?」
「私はお兄ちゃんが好き!結婚するから!」
俺は少し驚いたがその時は、とても嬉しかったので約束を交わした。
その時に美咲が俺にキスをしたのだ…
今の俺は好きと言う感情よりかは、絶対に守る存在として考えている。
「美咲ここだから、お前に伝えたいことがある。」
「なに…お兄ちゃん」
今まで言わなかった事を美咲に全て話そうと思う。
俺は、勇気を振り絞って美咲に近ずいて抱きしめる。
「美咲、ごめん今までお前の好きと言う気持ちに気づけなくて…」
「……!」
俺は美咲の顔を見ていないが泣いているのがわかる。
少し泣く声が聞こえるからだ。
「…気づいちゃったのか」
「うん」
俺が伊藤さんの名前を出した時から、美咲が少しづつ変わっていたからだ。
いつもなら地味な服を着るのに、急に露出が多い服とか香水を変えていたりなどあげるとキリがない。
「美咲ダメな子だね、妹失格だ……」
「そんなことない!」
「……!」
俺は、そんな美咲を見たくない。
いつもの元気な美咲が俺は見たかった、俺の押しつけになってしまうが美咲には幸せになって欲しい。
だから俺が美咲を妹として守りたい。
「美咲の好きには答えれない…けどお前はいつまでも俺の妹だ!」
「……本当に?」
「俺はお前を妹として大好きだ!」
俺の気持ちを美咲に俺なりに伝えた。
上手く伝えれているかは、正直不安だが美咲を妹として好きと言う気持ちはある。
美咲は、少し微笑みながら俺に優しく抱きついてくる。
「…私も大好き!お兄ちゃん!」
「ん…!」
俺は美咲に口にキスされた。
初めてのキス、柔らかい唇、髪の毛のシャープーの匂い全てが俺を襲う。
「お兄ちゃんの最初のキス、私だね♡」
美咲は、俺の顔を見て微笑む。
俺は顔が赤くなりその場に倒れる。
「お兄ちゃん!?」
数分後…目を覚ますと美咲が膝枕をしていた。
俺は、即座に頭を上げて美咲にキスされたことを思い出す。
「お兄ちゃん…可愛いねw」
(こいつ…俺をバカにしてやがる)
美咲は、いつもの美咲に戻っていたそれを見て俺は安心してほっとするが馬鹿にされたので少し腹が立つ。
まぁとりあえず何時か見てみると、もうすぐ5時なので、美咲に「帰るか」と言う。
美咲は俺に微笑んで。
「帰ろ!お兄ちゃん♡」
俺は頭を抱えてため息を吐く。
美咲が俺の手を握って、一緒に家に帰る。
数分後…俺は自分の家に着き、今から料理を作るのもめんどくさいので出前を取ることにした。
「出前とるから何がいい?」
「本当に!じゃーピザがいい!」
俺は妹にお金を渡して、「来たら自分でお金渡して食べてな」と美咲に言う。
美咲は「了解!」と元気に俺に答える。
俺はお腹が空いていないので、自分の部屋に行く。
(今日はお風呂入るのめんどいから、服着替えて寝よ)
今日は疲れた、美咲にキスされるとは思わなかったし結構走らせられたからだ。
俺は美咲に本当の事をしっかりと話せたので結果オーライだ。
そう考えながら、眠りに落ちてしまった。
次の更新予定
2024年12月12日 16:00
無表情な君を笑顔にしたい! ゆぴくん @yuukun5210
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