【08 スキット(1) 三人のお泊まり会】
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・【08 スキット(1) 三人のお泊まり会】
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今日は初めて茜を家に招く日。
正直緊張していたんだけども、茜とノキアが家へ来たらもう緊張なんて全く無くなった。
茜とノキアは同時に家へやって来たので、急いで三人分のお茶を用意して、コップをテーブルの上に三つ置いて、三人でテーブルの前に座り、ノキアはソファーを背もたれみたいにして自宅のようにふんぞり返った。それを見てノキアの堂々とした図々しさよりも私は、むしろ茜もベッドに背もたれしてもいいのに、と思った。
そんなところで何だかずっとうずうず動いていたとらさんが、
《ほほほほー! とらさん王国へようこそー! とらさんが何でも教えるよー!》
とか言い出して、めっちゃハシャぎ始めて、ソファーの上で跳ねまくっているとらさんを抑えようとすることで必死になり、緊張はどこかへ飛んでいってしまった。
何かもうテーブルの上のお茶をこぼしそうでハラハラしていると、ノキアが、
「ゲームでもする?」
と言って私の家のニンテンドースイッチのコントローラーを持った。
「ゲームするのはいいけども、人んちのコントローラーを勝手に持つな」
対する茜は俯きがちに、何だかお茶のコップを見ているだけで。
私は茜に優しく、
「そんな気を遣わなくていいから、全然自分の家の気持ちでいいから。大人いないし」
するとノキアが、
「でもたまに霧子のママが掃除しにやって来てくれるんでしょ?」
「まあ確かに前は夕方にもやってきたけども、今は合鍵使って私のいない時間帯に来るから絶対来ないと思う」
それを聞いた茜は小声で、
「掃除はしてくれるみたいだけども、一人暮らしって大変そう」
「いや全然大変じゃないよ、洗濯機回すだけ。とらさんもいるから楽しいし」
《ほほほほー! とらさんが全部やってあげてますよー!》
「いやとらさんはテレビ勝手に付けて見てるだけでしょ」
《息抜きパートだけ言わないでー!》
「いやホントに他の仕事とかはしていないじゃん」
《可愛いことが仕事だとらー!》
「じゃあまあそうだけども」
と言っていると茜がフフッと笑ってから、
「何だか楽しいね、霧子もとらさんも」
と言ったところでノキアがスライディングしたみたいな動作をしてから、
「アタシが一番面白いわぁぁぁああああああ!」
と叫んだ。
確かにそんなこと恥ずかしげもなく叫ぶヤツは面白いけども。
茜はさっきよりも顔を上げて、ニコニコし始めた。
ここからは畳みかけだと思って、私はノキアに話題を振った。
「ノキアって何が・どこが、面白いの? そもそも」
正直我ながら雑な振りだと思う。
でもノキアは悪球打ちなのだ。
「へへっ」
そう言って照れ笑いを浮かべただけのノキア、いや!
「どうでがんすなぁじゃぁないんだよ! 言葉でハッキリ言えよ!」
「いやアタシそんな田舎の出じゃないよ! そんな喋りかたじゃないよ!」
「じゃあ正しい喋りかたで何か言ってよ」
「へへっ」
そう言って照れ笑いを浮かべて後ろ頭を掻いたノキア。
「いや! 言うんだよ! 後ろ頭を掻いたことをプラスしましたじゃないんだよ!」
すると、とらさんがカットインしてきて、
《ほほほほー、後ろ頭掻くとすり減っちゃうよー》
「それはとらさんがビーズクッションだからビーズが偏るからでしょ!」
とボケ・ツッコミをしたところで茜は笑ってくれた。
そこから茜も私たちの会話と馴染んで、いい感じになった。
何だかこの三人+とらさんで、上手くいけるような気がした。
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