亡くなってから芽生える恋心
でも、どうしてそんなに友達を作るのかというと私は男友達が欲しいからだ。
昔から私は女の子と一緒にいるより男の子のグループと遊んだ方が楽しかった。それは今でも続いている。
だから男友達が作りたいのだけど中学生になってからは一人も作れていない。
厳密に言うと友達になってもその関係が長く続かない。
どうしてか相手の男の子からすぐに好意を持たれて告白されてしまう。
特に彼氏が欲しいというわけでもないからそれらは全て断っているが、そうなるともう友達の関係には戻れなくなってしまう。
だから学校では片っ端から声をかけている。そうしているうちに友達が多くなったということだ。
そして最近また友達になれそうな男の子を見つけた——それは同じクラスの
今のところ彼とはいい友達関係を築けている気がする。
このままこの関係を維持できればいいが——
考えながら学校までの道を歩いているといきなり後ろから背中を押される。
(何!?)
振り向くとそこには噂の高橋優翔が立っていた。
そして横からトラックが走ってきて彼はそれにはねられる。
一瞬のことで状況が飲み込めない。
優翔くんは頭から血を出して倒れ込んでいる。
それを見た瞬間に何が起こったのかすぐ理解した——彼は車に轢かれそうになっている私を見て急いで背中を押してかばった。
倒れている優翔くんを抱きかかえると涙が溢れてくる。
どうして人を助けるために自分の命を犠牲にできるの……確かに私たちは最近仲良くなっていたけど、どれだけ仲良くなったとしても自分の命を犠牲にしてまで守ろうなんて思わない。
それとも君はそれだけ私を大事に思ってくれていたのかな?
こんなことで死ぬなんて言わないよね?
お願いだから死なないで、せめてお礼ぐらいは言わせて……
願うけど彼の目は閉じたまま。
そのまま緊急で病院に運ばれたが結局、目を開けることは一度もなかった。
彼は私を交通事故からかばって亡くなった。
あの事故から二日が経過した。
あの日から生きてる心地がしない。
未だに信じられない。
彼と会いたい。もう一度話したい。
だけどそんな願いが叶うはずもない。だって彼はもうこの世にいないのだから。
君は今どこにいるの? やっぱり天国かな?
私は軽い鬱状態になっていた。
だけど親に心配はかけたくなかったから学校にだけは行っていた。
今日も学校に行かないと。
学校に着いて教室に入ると、みんな挨拶をしてくれる。
そして優翔くんの席に目をやると花が添えられている。
初めはみんな彼のことを悲しく思っていたけど、今は何も無かったかのように普通に生活している。
みんなそんなものなの? こんなに悲しんでるのは私だけなの?
——当たり前だ。みんなあの悲劇を知らないのだから。
私だけは彼のことを忘れるようなことはしない。一生思い続けるよ、死ぬまで。
席で悲しみに浸っているといきなり周りが騒ぎ出す。
「おい! 床を見てみろ!」
「なんだよこれ!」
「なによ、これ!?」
「俺たちもしかして召喚でもされるんじゃないか!?」
床? 召喚? みんな何を騒いでるんだろう。
私も周りと同じように床を見ると魔法陣のようなものが浮き出ていた。
それはクラスメイト一人一人全員、同じように浮き出ていた。
何これ……もしかして誰かのいたずら?
何かの冗談だとあまり気にしないでいるとその魔法陣はいきなり光り始める。
気づけば視界が真っ暗になって、目を開けると教室から教会みたいな場所に変わっていた。
さっきまで教室にいたはずなのに……ここはどこなの?
周りを見渡すとクラスメイトのみんなもいた。
私たちは杖を持った人たちに囲まれていた。
「どこだよ、ここは!」
「何よ、これ!」
周りが焦っていると後ろから金色の髪をした女性が歩いてくる。
「私は女神の『ステラ』と申します。これから貴方たちには魔王と戦ってもらうために強くなってもらいます」
「女神!? 魔王!? あいつは何を言ってるんだよ!」
「もしかして俺たち本当に召喚されたのか!?」
「となると、ここは……異世、界?」
異世界……いまいち実感が湧かない。
だけど囲まれている人の服装も見たことがないし杖なんかも持っている。
それに私たちは気づいた時には教室からこの場所へ移動していた。
これだけ条件が揃っていたら異世界と信じざるを得ない。
「そうです。貴方たちを別の世界から召喚させてもらいました」
「俺たち、元の世界に戻れるのか?」
「すみません、召喚は一方通行で戻ることはできません」
女神が言うとクラスメイトは騒ぎ出す。
もう、元の世界には戻れない……最後に両親にお礼ぐらい言いたかった。
「あまりにも自分勝手じゃないか!」
「もう、こうするしか方法は無かったのです」
「マジかよ……」
「ついてきてください。早速、皆さんの魔法適性を調べます」
女神の言うことを聞いて一人一人オーブのようなものに手を当てる。
「貴方は炎魔法の適性がありますね。貴方は水魔法ですね」
そしてとうとう私の番がきた。
手を当てるとオーブは緑に光る。
すると女神から手を握られる。
「貴方は——回復魔法適性があります! 回復魔法を使える人間は数が少なく不足しがちなんです。貴方は特別な人間です!」
特別な人間……嬉しいはずなのになぜか全く嬉しくない。
今は只々普通の人間になりたいと願っているからなのかな。
全員鑑定が終わって一人一人違う部屋に案内される。
早速明日から鍛錬が始まるらしい。
本当にこれから私はここで生活をするのだろうか。
実は全て夢で明日、目覚めたらいつもの生活に戻っていないだろうか。そして学校に行くと優翔くんがいつも通り椅子に座っている。
駄目だ。また優翔くんのことを考えている。
はぁ、私はこれからどうなるのだろう。
同級生の女の子を交通事故からかばって異世界転生したけどその子と会えるようです 砂糖琉 @satouryu
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