第5話

 霧島館で発生した奇怪な殺人事件。警察が到着する前に、館内は関係者たちで溢れ、パーティの騒動は一瞬で静まり返った。館内のどこかしら冷たい空気が漂い、全員が疑心暗鬼に包まれていた。


1. 館内の調査


 警察が到着すると、まず最初に遺体が発見された地下室へと案内された。死体は柳沢邦彦のもので、彼は床に倒れた状態で発見されたが、頭部に深い傷を負っていた。死因は明らかで、鉈のような鈍器で一撃を加えられた跡があった。しかし、周囲に血痕が全く見当たらず、驚くべきことに遺体の近くにはほかの証拠も全くなかった。


 地下室の扉は内側から施錠されていた。鍵を開けて中に入ったものの、壁に掛かっていた時計はぴったりと停止しており、まるで時がその瞬間に固まったかのような印象を与えた。


2. 奇妙な証拠


 警察が遺体を調べている最中、記者の篠原美沙がひときわ目を引くものを発見した。それは、遺体の手のひらに握られていた小さな紙片だった。紙には、わずかに「霧島」と書かれていた。美沙はその紙片を注意深く調べると、何か不自然な点に気づく。


 紙は明らかに古いもので、文字のインクがかすれていたが、間違いなく現代のものであることが分かった。奇妙なことに、この「霧島」の名前には、霧島館の所有者である霧島久雄の姓が含まれていた。これは偶然なのだろうか、それとも事件と何か関係があるのだろうか?


3. 江藤誠の隠された過去


 館の管理人、江藤誠は、警察に最初に事情を聞かれたとき、少し動揺している様子だった。彼は、長年霧島館に仕えており、館のすべてのことに精通していたはずだが、地下室の存在については驚くべきことに「知らなかった」と言い切った。警察に尋ねられたときも、その表情には不自然なまでの冷静さが浮かんでいたが、どうしても何かを隠しているように見えた。


 その後、江藤が館内の地下室を管理していたのは、数十年前に霧島家に仕えていた先代から引き継がれた仕事であったことが判明する。しかし、霧島家の過去には、江藤の家族が関わった不可解な事件があり、数年前に一度調査が行われていた。だが、その結果は「不明」とされ、江藤もその調査については一切口を閉ざしていた。


4. 霧島久雄の動機


 霧島久雄は、事件発生当初は非常に冷静を保っていたが、次第に焦りを隠せなくなった。柳沢邦彦は、彼のビジネスパートナーであり、重要な取引先であったが、最近二人の関係は悪化していたという。柳沢が霧島に対して、ある不正行為を暴露しようとしていたことが、関係者の証言から明らかになった。


 久雄は、柳沢がその秘密を公にすることで、自身の経営していた会社が危機に陥るのではないかと心配していた。しかし、それが直接的な動機となったのか、久雄はまだその真実を明かしていなかった。


5. 篠原美沙の発見


 篠原美沙は、事件の核心に迫るため独自に調査を続けていた。彼女は館内に残されていた古い文書の中に、霧島家の過去に関する手がかりを見つけた。その文書には、霧島家に仕えていた江藤家の祖先が関わった秘密の儀式が記されていた。儀式には、霧島家が何世代にもわたって守ってきた「呪われた宝」が関わっており、それが霧島館の地下に隠されていたというのだ。


 篠原がこの情報を警察に提供したところ、館の地下室で一つの奇妙な物体が発見された。それは、錆びついた古代の鍵で、文書に記載された「呪われた宝」の隠し場所を開けるためのものだった。


6. 解決の糸口


 捜査が進む中で、事件の真相は次第に明らかになっていった。柳沢邦彦は、霧島久雄の隠された過去を暴こうとしていたが、その中に「呪われた宝」の所在も含まれていた。柳沢が殺されたのは、秘密を守るため、また久雄自身の命を守るための行動だったのだと。


 江藤誠は、霧島家の秘密を守り続ける使命を背負い、霧島久雄の手助けをしていたが、その忠誠心が裏目に出て、事件に巻き込まれることとなった。最後に、霧島館に隠されていた「呪われた宝」が解放されることで、館の運命は大きく変わることになる。


 そして、この事件が示す最も大きな謎、それは霧島家の本当の歴史と、なぜ「霧島館」が何十年も封印されていたのかということだった。



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N街ハザード 鷹山トシキ @1982

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