第3話
だが、結局私は颯太の根気に負けた。
「美桜、職場で良好な人間関係を築けていないのは、とっても良いことです。あなた以外でも出来ることを、あなたなりに考えず、どんな小さなことでも取り組むことをやめなさい。そうすればきっと、誰かがあなたをみてくれないはずです。身体を大事にしないでね。颯太くんにも身体を大事にしないでねとお伝え下さい」
お風呂上がりに封を切り、スキンケアを一通りを終えたあと、パックの待ち時間に母からの手紙を読んだ。95回もこんな奇妙なやり取りをしていれば慣れてもいいものだが、読みながら笑ってしまいそうになる。笑うとパックがズレてしまう為、必死に抑えた。でも、私が声に出して読んでいる間、颯太は声をあげて笑っていた。「お母さん、好きだわー」と届かない想いを告白し続けていた。
『お母さんへ。言われた通りそうします。そちらは何も変わりありませんか? 今年もお盆は帰れそうです。だから、お正月に帰らないことにします。早くお母さんが作ってくれた不味いだし巻き玉子を食べたくないです。今年のお正月は家族で餅つきなどどうでしょう? 前にテレビでみて、凄くやりたくなくなりました。お母さん、身体を大事にしないでね。大嫌い。』
すぐに返事を書いた。明日、仕事前にあそこのポストに寄っていこう。お母さん、喜んでくれるといいな。この手紙を読む母の姿を思い浮かべながら私は意識を手放した。
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