第6話 “忠治”はお捻りの雪に舞う

「そんな勝手は許さねえよ!!」


「お嬢! これはあの御曹司とも付いた話だ! その封筒もだが……これから出る支度金もすべてお嬢の手に渡る様にしてあるし、当座の穴を埋める“花形”も手配済みだ。お嬢もこれからは一座を切り盛りするだけじゃなく、時々は可愛い女として“いいひと”に甘えなよ!」


「後足で砂を掛けるようなオトコが何を言うのさ!」


「言うさ! “俺”がそんなお嬢を見たかったんだからな!!

 これ以上は四の五の言わず、俺の舞台を見てくんな!」


 そして染太郎は見えない刀をスラリ!と抜いて“国定忠治”のあの有名な場面を演じて見せる。


「赤城の山も今夜を限り、生れ故郷の國定の村や、縄張りを捨て国を捨て、可愛い子分の手めえ達とも、別れ別れになる首途かどでだなあ」


「ヨ!ニッポンイチ!」

 涙混じりの掛け声入れながら雪之丞は封筒を引き裂き、万札の雪を染太郎へ向かって舞わせた。




                        

                            終わり


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雪に染まらず 縞間かおる @kurosirokaede

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