人魚姫

アカシア

淡い

はじめて恋をしました。



私はエリ。人魚です。深い海の底にいます。

海の底は涼しくって、とっても気持ちいいの。


私人間が大好きなの。海の中って、情報が少なくて…確かでないウワサもかき集めちゃうくらいすき。人間は人魚を架空の生き物として捉えているんでしょう?ちょっぴり、寂しいな。


「こら!ぼーっとしてねーで起きねーか!寝坊助!」

少し訛った口調で怒っているのはカレイ。コイツは厄介、怒りっぽいんだもの。

私たち人魚は海の生物の中でとっても希少だから、魚たちは大切に扱ってくれるんだけど…

「はいはい、ごめんなさい」

時には逃げることだって必要。ヒレを大きくふって上へ行く。

「あ、こら!上に行きすぎんなや!」

分かってるもん。人間に見つかってしまったら…うう、考えたくない。

でも、やっぱり何か魅力的なんだよね。

ぐんぐんと水の色が薄くなる。




約束を破って水面から顔を出す。

「うわぁ…」

大きな船。青い空。少し遠くにあるけど陸。

すいすいと陸の方へ向かう。


人はいない。がらがらだ。

すこし伸びをする。深いところからくると体力も消耗する。ふと自分の足が目に入る。


この足、嫌い。

上半身は人間のようで好きだけど、下半身は魚みたい。

2つの足があって、人間になったら…いけない。妄想の癖はなおさないとね。



何か気配を感じて早急に水の中へ入る。

「ねえ、寒くないの?」

しまった。ばれている。でも、寒くない?と聞いているということは…人間として見られているということ⁉︎

ざぱっと顔だけを出して

「寒くないよ、全然。」

見た目は私と同じくらいの男の子。

「まあ、10月って言っても、あついからねえ」

手で仰ぐ仕草をして微笑む。優しそうだ。

ていうか…会話できてるんだけど!うれしい!

口元がゆるんでしまう。

「この時期海入ってる人初めて見た」

「まあ、あんまり見ないよね」

おおお、会話、会話ができてる…!

「てか、上がらないの?海から」

ぎくっとする。ど、どうしよう…

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人魚姫 アカシア @hachimitsu09

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