ロケットブランコ

岸亜里沙

ロケットブランコ

私が子供の頃に住んでいた閑静な住宅街の片隅に、小さな児童公園がありました。

子供用の滑り台にベンチ、ブランコが設置されているだけでしたが、一番仲良しだった志帆しほちゃんとよく遊びに行ったのを覚えています。

他の友達はみんな、大きな公園で遊んでいたので、そこの児童公園にはあまり人もおらず、私と志帆しほちゃんだけの秘密基地みたいな場所でした。

滑り台で遊んだり、ベンチに座って何時間もずっと話していたり。

だけど私たちが一番遊んだのが、ブランコです。

ブランコを立ち漕ぎし、だんだんと速度を上げていくと、まるで自分がロケットになったみたいで、なんだか宇宙まで飛んでいけそうな気がしました。

まばゆい銀河の星屑の中を、凄いスピードで飛んでいくみたいに。

好奇心という名のエンジンは、尽きる事なく私たちを動かします。

自由に遊んで、毎日が楽しく過ぎて、軽やかな心は無重力のようで。

高校生になった頃、志帆しほちゃんとは別々の学校に進学した為、会う時間も減ってしまいましたが、それでもたまに会うと、決まってあの児童公園に行きました。

私たちの身長が伸びて、小さく感じられるブランコに座りながら、子供の頃と同じように、暮れていく空を見上げて、ずっと話していました。どれだけ時間が経っても、不変の関係性。

お互い結婚をし、地元を離れましたが、それでも年に一回は必ず会うようにしています。

今も私たちは隣どおし座って、ゆっくりと一定のリズムで、ブランコを漕ぎ続けているのかもしれません。


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ロケットブランコ 岸亜里沙 @kishiarisa

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