第3話③
知らなかった。雪華の気持ち。僕は自分の言葉によって、雪華の気持ちを踏み躙ってしまったのだ。知らなかった、だけでは済まされない。雪華は、昔からずっと自分のことを好きだった。自分に好きな人ができて、その人の話をずっとしている僕の隣で、どんな気持ちでいたのだろう。僕よりも、雪華のほうがつらいに決まっている。けれど、それを面に出さないで平然を装う雪華。思えば、雪華は自分の気持ちを全然言わなかった。でも僕は、それを、雪華の気持ちを全て否定してしまった。雪華が僕のためにしてくれていたことにも、想いにも気づけなかった。失恋した後、話を違うところに振ったのは、きっと僕が落ち込みすぎないようにしてくれたのだ。僕は、それにも気づけず、おまけに雪華を傷つけてしまった。いつもずっと一緒にいた幼馴染。僕のほうがずっとずっと雪華を知らなかったのだ。僕はなんて馬鹿なんだろう。馬鹿すぎる。最後に見た雪華の一雫の涙。雪華の涙を僕は初めて見た。それは、外に出さなかっただけで、陰で泣いていたことなんて多々あったのかもしれない。完全に、雪華に嫌われた。ずっと好きでいてくれたのに、僕は、なにも返せなかった。僕は、その場にすとんと崩れ落ちた。彼女に振られたことよりも、雪華の涙のほうが、心に響いていた。
恋は灯台下暗し 花霞千夜 @Hanagasumi824
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