第4話 おじさんの部屋

 またいつも通りの生活が始まり、相変わらずおじさんは数カ月に一度帰ってきては魚をくれた。

 市役所の人は未だおじさんと連絡が取れていないようで、定期的に来ては私にも不在を確認していた。

 いつものように市役所の人を見送ってると、隣の奥さんがいそいそとやってきた。


「このまえね、私〇〇さんが玄関を開けてる時にちょっと覗いたのよ。そしたらね、すごいゴミの山なのよ! 玄関までぎっしり! 弁当のからや空き缶だらけ! あれじゃ虫が湧くわよ!」


 私はたまに出てくるゴキブリが頭をよぎった。


「とにかく酷い有様だったんだから! お隣があんなお部屋なんて、お子さんたちの体にも悪いわよ!」


 奥さんは興奮したように喋ると帰っていった。

 おじさんの家が汚部屋。

 見たわけではないので想像もできなかったけれど、屋根裏で大量発生しているであろうゴキブリのことを考えると、元々の繁殖はおじさんの家で行われたのでは、と思えてきた。


 ある日、お昼寝をしてると、ドアを蹴るような音でびっくりして飛び起きた。

 ガンガンガンッという激しい音と、チャイムを連打する音が聞こえる。おじさんの家だ。

 私はドキドキしながら、玄関に向かい、聞き耳を立てた。男の人が何かを言っている声は聞こえるが、内容までは聞き取れない。

 5分ほどドアを蹴ったりチャイムが鳴らされていたけれど、しばらくすると静かになった。

 テレビドラマでしか見たことのなかった光景に、怖くて手足が震えた。

 おじさんは無事だろうか。何があったのだろうか。子供たちがいなくてよかった……。警察に電話しようとも思ったけれど、恐怖で過呼吸を起こしていてできそうもなかった。

 そして、まるでドラマの取り立てのようなその人物は、数日置きに何度かやってきてはおじさんの玄関のドアを蹴ったのだった。

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