カウンター
カウンターといえば、数を数える道具や人のことである。
数を数えるというのは、実は難しい仕事だ。ものの本によれば、人類の歴史の長い期間において、数を数えるのは専門家の仕事だったという。現代の我々が難なく数を数えられるのは、ひとえに位取り記数法と、教育のおかげである。
その傍証となるものがある。
ローマ数字だ。
ローマ数字は、1をI、2をII、3をIIIと書く。4は、現代ではⅣと書くことが多いが、元々はIIIIと書いていた。そして5をVと書く。
どうしてこう書くのか。
一説によれば、これは、物を数えながら木や粘土に線を引いていったからだという。
目の前にある物を指差し、ひとつ、と言いながら線を一本引く。ふたつ、と言いながら二本目の線を引く。さらに物があれば、一回指差すごとに一本ずつ線を引く。
ただし、五回目に達するたびに、目印として、一本線の代わりに折れ線を書いた。これがVだ。
Vを書いてもまだ物があれば、そこから続けて線を増やしていく。
さらに、Vを書くのが二回目(偶数回目)だったときは、Xと書いた。これが10を意味する。
こうすると、木の板には、たとえばIIIIVIIIIXIIIIVIIIIXIIなどと書かれることになる。
これを見ても、これがいくつなのか、即座にはわからない。だが、わかる必要はない。
物が増えたり減ったりしていないかどうか確かめるには、物を指差しながら、線を指で押さえればいいからだ。指差す対象をひとつ隣にずらしながら、指で押さえる線もひとつ隣に動かす。こうして、物を指差し終わると同時に、押さえた指が端の線に到達していれば、数の増減がないことがわかる。
つまりローマ数字は、数字というより、「正の字」に近い。数を表す文字ではなく、数を数える方法だった。こうしなければ、数を数えられなかったのだ。
このような数え方は古代ローマだけではなく、世界中で行われていたはずだ。もしかしたら、古代の日本にもローマ数字に似た何かがあったかもしれない。それが現代まで使われていれば、今ごろ「日本数字」と呼ばれていたに違いない。
友人が「ランダム単語エッセイ」をやり始めたので追随して同じ単語でエッセイを書いてみる 黄黒真直 @kiguro
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