第一話 冒険者
『~冒険者の迷宮~ 冒険者になりたての方は奥へお進みください』
迷宮の入り口の横にそう書かれた丁寧な看板が建っていた。
「……ここはダメだな」
僕は疑問に思いつつ、何がダメなのかを聞き返してみる。
「な、何がダメなの?」
そんな僕の当然の疑問に対する回答は極めて単純だった。
「魔物が弱すぎる。」
そりゃそうでしょ……冒険者になりたての方向けの迷宮なんだから。文字読めないのか、それとも見てすらなかったのか……ひとまず、教えておかないと。
「そりゃ、冒険者の迷宮は冒険者志望の為の腕試し用の人工的な迷宮だからね……迷宮主はいないし、出てくる魔物もそんなに強くないんだ」
「そうなのか、じゃあ、もうちょっと強い所に……」
待て待て待て、それはもう案内対象外ですー。てか、僕の案内は迷宮への案内だけでしょ……。
迷宮から出て歩きながら僕は愚痴を漏らす。
「そろそろ帰ろうと思ってたところなんだけど……強い所はそもそもやめた方が良いよ……自信ないし。」
「自信って、ルミナスはいつ登録したんだ?」
「え……3年前、だけど」
「言い方は悪いけど、3年も前に登録して何も出来てないんだったら自信なんかつくわけないだろ。」
ソリッドのきつい言い様に、思わず心臓が波打った。
図星な発言に僕は言葉が出ず、反論すらできなかった。
そんなソリッドは我に返ったように少し付け加えるように言葉を紡ぎ始めた。
「悪いな。まぁ、案内してくれたのにこんなことだけ言うのは流石に恩知らずだとは思う。だから付け加えると、本気で強くなる気がある奴は自信ではないところで見ると思うけどな。」
事実だから、言い返せない。
僕には僕のやり方があれども、反論するには僕は時間が経ち過ぎた。
「まぁ……そうなんだけど、さ……」
泣きたくなるが、それだけは嫌だというちっぽけなプライドが俯きながら泣くことを拒む。
僕が涙を堪えていると、ソリッドは咳払いをして再び訂正するように僕に諭した。
「言い方を変えよう。ルミナス、お前には一皮剥けるチャンスがまだ残ってるってことだ。」
「一皮剥けるったって、どうすれば……」
「決まってるだろ、お前は冒険者だが、同時に挑戦者(チャレンジャー)でもある。チャレンジャーは、何度倒れても立ち上がり、何度でもチャレンジすることだ。」
チャレンジって……迷宮でそんなことが許される筈がない。相手は良識のある人間などではなく魔物。倒れたらそこで終わりなのだ。
「……脳筋過ぎない?」
「大事なことだろ。第一ルミナス、お前は冒険者になってから、一度でも挑戦したことはあったのか?」
またもや痛い所を突かれ、僕はただ俯きながら小声で呟く。
「……ないけど」
「挑戦してるやつってのは――こういう奴のことだ」
ソリッドの視線の先にある掲示板を見て目を限界まで見開いた。
『【サンシャイン】の団長、【劫炎】サニー・ティア、単身でディセンド大迷宮 50階層到達&49階層の階層主討伐!!』
「――」
黙り込む僕に構わず掲示板を見て冒険者たちは盛り上がりを見せた。
「【劫炎】ヤベー!」「49階層の階層主っつーと、情報によれば【劫炎】との戦闘スタイルとの相性自体はかなり悪かった気がするが……」「3年前に来たばかりなのに、もう英雄候補かよ……。」
俯き完全に黙り込むルミナスを見てソリッドは流石に言い過ぎたと思ったのか、軽い謝罪を口にする。
「……すまん。」
そんなことをしているとどこからか悪意のある声が響いた。
「――おやおや、うちの団長を裏切った奴が、どの面下げてこんなところにいんだよ」
悪意の声の主は小柄な男だった。年齢は恐らく成人済み。綺麗な身なりをしているのにやっていることは汚いチンピラみたいな雰囲気を漂わせる。
ルミナスが反応すらしないのを見ると、これは初めてのことではないのかと察する。
「……。」
「いきなり失礼な奴だ。お前は誰だ?団長を裏切ったとは?」
ソリッドが問い返すと、小柄な男はソリッドには興味ないとばかりに口々に悪意を増す。
「おっと仲間がいたのか。今度はこいつまで裏切ろうってか?」
「違う。ソリッドは、そんなんじゃない。」
「……確かにルミナスは臆病だが、本心から裏切るような奴じゃない事もわからないのか?だとしたら、お前の目は節穴だな。」
「!」
初めて小柄な男はソリッドを見て悪態を吐く。
「――なんだ、てめぇ。」
「俺はソリッド・メテオライト。ルミナスにここの紹介をしてもらっていた。」
「へっ、要は見習い冒険者じゃねえか。」
蔑む言葉を無視し、ソリッドは主張する。
「どうでもいい。ただ長くやっていれば強いわけでもあるまい。ここは実力主義じゃなかったのか?」
「いちいち癇に障る奴だなぁ……!冒険者の流儀ってやつを教えてやる!来い!」
言葉通り、ソリッドは小柄な男に付いて行くことにした。
異星の王と光の花 青彩空 @aoi_sora507
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