第3話 我が家

 毛深い顔のおっさんと、毛羽立ったストッキングの女子が、ゴニョニョと密談をかわしていると思っていたら、パッと消えしまった、えっ、どこへ行っちまったんだよー。


 でも大丈夫。

 僕の手には不動産屋がくれた地図がしっかりとにぎられている、今も家の場所を示す光は消えてはいない。

 今いるのは暗くて狭い路地だ、僕はあわてずに、まだ見ぬ我が家を目指して、ゆっくりと歩き始めている。


 歩き始めると、気になってしょうがない、位置が悪いな、太ももにこすれてしまっているんだ。

 いくらえているとはいえ、自身の太ももの刺激で勃起ぼっきはしたくない。


 それは人間として、すでに終わっていると思うともに、悲しすぎる、涙ザアザアだよ、カウパーせん


 だから、あそこの位置を真直ぐに直して、その手を鼻で嗅いで、ケツで匂いをふくんだ、それから肛門を「ギュッ」「ギュッ」とすれば、涙を流さないで済むんだな。 

 こうしたらもう性的な興奮とは無縁むえんと言うことだ。


 ふぅー、危ないところだったよ。


 視界がグニャリと歪み耳がキーンと鳴ったと、一瞬いっしゅん思った時にはうるわしの我が家に着いていた。


 割と近かったな、と言う印象だ。

 駅から徒歩一生と書いてあったけど、違うじゃん。


 ほっ、迷わなくて良かった、迷ったらからびて死んじゃう気が、なぜかするんだ。

 痰吐たんはく気のせいだろう。


 あれに見えるは、麗しくもほこらしい我が家じゃ、ありませんか。


 古風な茅葺かやぶきの一軒家だ、平屋だな、豪邸じゃない、日本昔話に出て来そう。

 一回くらい出てきた覚えがあるぞ、しっかりとは見ていませんがそうでしょう、保育園の時だったの許してください、まだ人じゃ無かったのです、ここだけの話〈小型カッパ〉だったんですよ。

 カッパパァ、カカパパァ、カッカパッパタララー。


 気を取り直して。

 周りには見渡す限り何の建造物も見えない、ポツンと建っています、清々すがすがしいいさぎよさですね。

 反面とても寂しい気持ちが降り注ぎます、その孤独さはまるで僕の人生のようですね、うぅ、慰め合なぐさめあいましょうよ、我が家さん。


 家のそばには青く透き通った小川が流れ、こじんまりとした田んぼや畑は爽やかな緑色だ、その奥は果樹園なのか、赤や黄色の鮮やかな実をつけてやがる。


 おぉ、何て牧歌的な風景なんだよ、東京のど真ん中なのにネオンがねぇ、いかがわしさが丸でねぇ。

 田んぼや畑と家は四角だ、丸いのは果物だけだよ。


 こんなんじゃ、いやされてのんびりしてしまうぞ、健康的過ぎて、悲しい人生を長く生きてしまいそうだ、結構けっこうキツイな。


 「たのもう」


 ここは僕が買った家だから、誰もいるはずが無いのに、一応声をかけてみた。


 それと不動屋さんから、カギを渡されていないことに、今ようやく気がついたんだ、カギ穴に差し込むブツがありゃしない。

 あぁ、一生差し込むことが出来ない人生を、僕は送るのだろう、高村光太郎ちょ〈道程〉。


 中から開けてもらえないと家に入れないぞ、まさかだまされたんじゃないよな。

 冷や汗ひやあせがたらり、脳味噌がたらん。


 「はーい。 今開けますので待ってください」


 うーん、誰かがれば大変マズイ家の中から、可愛らしい声が聞こえてきた、うひょ、二十歳以上の女の子だったら良いな、期待に胸が痛くなる、結核だろうか。


 戸を開けてくれたのは、女の子らしい、可愛い顔の幼子おさなごだ、今時いまどき着物を着ているぞ。


 この子は困ったことに、二十歳を大きく下回り、十二、三歳にしか見えないな、これじゃ事件になってしまうよ。


 僕は醸し出かもしだす雰囲気から、二十歳未満の女の子との接触は、そく犯罪だと言われているんだ。

 先生や同級生や実の親さえ、そう注意してくれていた、お巡りさんにも言われたぞ。


 どう見ても〈小児性犯罪者〉にしか見えないと言うんだ、「びろ」、「詫びろ」、「詫びろ」。

 本当の事を言えば、僕は大きなおっぱいにあこがれているんだ、ぞくに言う巨乳ってヤツさ、浪漫溢ろまんあふれてこぼれ咲きだよね。


 まっ平には一ミリも興味がないのです、八十cm以上無くては門前払もんぜんばらいさせて頂く所存しょぞんです、一生出来ないのは確定ですが、信条しんじょうなんです、そんなもんいらないですよね。


 おおむね九十cmじゃなくて、六十cmの小胸こむねの女の子は、涙目で「ごめんなさい」と震えながら謝っている。


 はて、どうしてこの子は謝っているんだ。


 「こら、誰だ。 座敷童ざしきわらしを泣かす悪いヤツは」


 土間の上の上がり框あがりかまちに、すっと現れたのは、とんでもなく綺麗な女性だった。


 概ね九十cmはあり歳も絶対に二十歳を超えているので、たぶん犯罪とはならないが、僕はひるんだり見惚みとれたりはしなかった。


 なぜなら美人過ぎて、初めから僕がどうこう出来る女性じゃ無かったんだ、許容範囲きょようはんいを大きく超えているってことさ、あちらが。


 まだ六十cmの小胸の女の子の方が、力づくで何とかなるだろう、でもしないよ、僕は変態に見えても紳士だからね、地球最後の日はその限りじゃないけど、さ。


 「初めまして、僕はこの家を購入した者です。 あなた方は〈不法占拠者〉ですね。直ちに〈明渡請求〉を行使こうします。 ついでにカギを置いていきなさい」


 俺はすこぶるきの美女の圧に負けないで、ハッキリと宣言してやった、カギもゲットしてやるぜ。


 「はっ、いきなりだね。 お前がこの家を買っただと、あり得んな。 それと、この家にカギは無いぞ」


 あり得ないことをおっしゃる麗人れいじんだ、カギが無いなんて、とんでもない嘘をついているぞ、ハリセンボンが不味まずいくらいの大噓だ。


 「えっ、カギが無いんですか。 そんなの不用心です。 女性二人で住んでいるのに危険過ぎます」


 「はぁー、変なヤツだな。 追い出そうとしているのに、何の心配をしているんだ」


 「でも、そう思いませんか」


 「はんっ、全く思わないね。 それより玄関先では何だから、中へ入って話すことにしよう」


 うっ、ちょっぴり見せてくれた怒り顔に、色気が乗って艶々つやつやじゃないですか、いくら範囲外だと説得しても、股間が爆発しそうでたまんないス、すこぶる付きの良いナオンでやんす、酢昆布のようにしゃぶってみたいなぁ。


 「ほぉ、分かりましたよ。 そうしましょう」


 「はい、粗茶そちゃですがどうぞ」


 「おぉ、良い香りと色をしていますね。 〈六十cmさん〉、ありがとうございます」


 「えっ、私の名前は〈六十cmさん〉なんですか。 そんなのあんまりです。 うっ、私の背はそんなに低くはありません。 うぅっ、うあーん」


 うわぁ、困ったな、〈六十cmさん〉が泣き出してしまったぞ。

 六十cmは背じゃなくて胸囲なんだけど、それは訂正しない方が良いと、僕の〈小児性犯罪者〉にはならないぞセンサーが、ビコンビコンと鳴り響いているぞ。

 六十cmとは、なんて危険なちいささなんだ。


 困ったな、幼女を泣かしたのは、保育園の時に僕がお昼寝で、〈寝うんこ〉をした時以来だぞ。

 となりで寝ている子が大泣きしたのは、今でも不思議に思っている。

 それほどの僕の〈寝うんこ〉が臭かったのか、確かに今は臭いけど、子供の時はそれほどじゃ無かったはずだ。


 僕はその〈寝うんこ〉の時に何を思ったのだろうか、大泣きしている女の子しか覚えていない、その他の事は僕の記憶から削除されたのだろう。


 〈寝うんこ〉がお尻にニチャリとついていたから、「ニチャリ」と笑っていた事なんか決して覚えていないぞ。


 「ごめんなさい。 言い間違えたんだ。 君は〈六十cmさん〉じゃない。 えぇっと、そうだ。 〈ニチャリ〉でどうかな」


 くそっ、泣いている女の子から連想れんそうするのは、「ニチャリ」しか出て来ないぞ。

 僕の記憶から削除されたはずなのに、どうしてなんだ、これが恐怖のスカトロと自縛じばくなんだろか、うぅっ、ひねり出そうしたら、またれそうになる。


 「ほぉ、太陽の異名いみょう日輪にちりんからとったのか。 お日様のような笑顔を見せる、お主によう合っているな。 今から〈わらわ〉も、〈ニチリ〉と呼ぶ事にしようぞ」


 「うん、〈ニチリ〉なら良いです。 ニックネームで、〈ニチリン〉と呼んでも良いですよ。 うふふっ」


 はっ、何を言ってやがる、名前よりニックネームの方のが、字数が多いなんて、聞いたこともねぇ、ん-、あるか。


 「あははっ、〈ニチリン〉の笑顔が戻って良かったよ」


 「本当に良かったな。 あのまま泣いていたら、客人をこの世から削除するところだったよ。 けがれた事をしなくて良くなり、本当にありがたい」


 「あははっ」


 どう言う意味ですか、穢れとは僕の事ですか、それともあやめる事なのでしょうか。

 この佳人かじんは顔に似合わず、物騒ぶっそうな事を言いますね。


 「うふふっ、〈奥方様〉もご主人様の〈河童〉さんも、良かったですね」


 「はっ、僕は〈河童〉じゃないですよ。 人間です。 水分ばかりで栄養が少ないキュウリなんて、好物じゃありません」


 「えぇー、お主は人間じゃと言うのか」


 〈奥方様〉と呼ばれた、この別嬪べっぴんさんは、行儀ぎょうぎの悪い事にすわったまま、後ろへバタンと倒れたよ。

 おどろきを体で表現しているって、ことなんだろうが、僕に対して失礼だし、河童に対してもド失礼だぞ。


 かがやくような足の間から、黒の下着がのぞいているので、いっちゃえばいんですけど。

 まさか黒とは思いもしませんでした、ちょっとショックを受けています。

 奥をよく見ようとしたら、直ぐに起き上がってこられたので、かなりショックです。


「あれれ、ご主人様は〈河童〉さんじゃ無いのですか、おかしいですよ」


 〈ニチリン〉はどうしても、僕を〈河童〉にしたいらしいな。

 それは良いとして、僕のことをなぜ〈ご主人様〉と呼ぶんだ、たぶん初対面だよな。


 でも和装わそうメイドで幼女か、ありと言えば黒大アリだな、日本最大だもん。


※※※※※※※※


主人公がグズすぎて、話が進みません。

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僕の嫁は龍神の嫁だったらしいです、嘘だと思っております 品画十帆 @6347

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