けれど、伯爵家の箱入り娘であるわたしは知らない。
この十年後のために、彼がどれほどを背負ってきたかを。
そして、その選択が、周りの人々にどんな影を落としてきたかも。
たった一人だけを嫁ぎ、たった一人だけを娶るのなら、誰もが幸せを運んでくれる相手を望むだろう。
しかし、多くの人に幸せをもたらし得るはずの一人を、こうして「独占」してしまうことは、果たして罪深いことなのか。
…まあ、いい。
だってわたしがあこがれる白馬の王子様は、そんな人なのだから。一番の深情け。
大人の世界は、複雑すぎる。
でも今日から、わたしも大人になる。
一瞬たりとも待ってなどいられない、そんな風に。
でもそれは、幸せな生活を迎えるわたしが、この複雑な世界の一部になるということかもしれない。
どうか、この幸せを守れますように。わたしの、一番深情けな王子様。
伯爵令嬢のシャーロットは、愛のない政略結婚を目前に控えていました。
相手は公爵家の次期当主であり騎士団長でもあるリチャード。
しかし彼女は、彼が自分ではなく「自分の父親」に懸想しているというトンデモない勘違いをしており、この結婚に深く絶望していました。
せめて最後の日だけは自由な世界を味わいたいと、彼女は挙式直前に屋敷を抜け出して街へと逃亡します。
そこで偶然出会った親切な青年「リック」との束の間のデートが、彼女の運命を甘く大きく動かしていくことになるのです。
本作の最大の魅力は、ヒロインの斜め上をいく盛大な「勘違い」と、旦那様の隠しきれない「激重な愛」が織りなす極上のすれ違いラブコメディです!
実はリチャードは、10年前に彼女と出会ってからずっと一途に想い続けてきた純情男。
彼が正体を隠して街で彼女と過ごす不器用で甘い時間や、結婚式の誓いの場で明かされる「指輪」の胸キュンな伏線回収には、思わず口角が上がりっぱなしになります!
さらに、すれ違う二人を取り巻く個性豊かな周囲の人々の視点(エピソード)も面白く、物語の深みを増しています。
誤解から始まる不器用な恋が、やがて甘々で
幸せな夫婦生活へと変わっていく圧倒的な多幸感に浸りたい方に、全力でおすすめしたい傑作溺愛ファンタジーです。
まさに「幸福感の塊」のような一作に出会えました!
年の差婚、顔も知らぬ婚約者、そして街で出会う謎の人物「リック」。この設定を聞いただけで胸が高鳴る皆様、確信してください。私たちが愛してやまない「あの展開」が、最高の形でここにあります!
本作が巧みなのは、主人公・シャーロットの「高潔な責任感」が物語の芯にあるからでしょう。
貴族の娘として、結婚の義務は果たさねばならない。その覚悟があるからこそ、彼女が束の間の自由を求めて街へ踏み出す一歩が、切実で、健気で、まるで見守りたくなる小さな光のように輝いて見えるのです。
さらに驚かされたのは、物語の視点の豊かさです。
二人の恋路に終始せず、周囲の事情が、様々な人々の視点で語られることで、リチャードの意外な素顔や、シャーロットの多面的な魅力が鮮やかに浮かび上がります。
特筆すべきは、いわゆる「悪役令嬢」ポジションの人物が抱える切ない孤独や事情、行く末までもが、繊細に掬い上げられている点。その「万華鏡」のように多彩な感情が織りなす構成の妙には、ただただ魅了されました。
「ときめき」と「人間ドラマ」、その両方を心ゆくまで堪能したい。
そんな欲張りな願いを完璧に叶えてくれる、おすすめしたい珠玉の物語です!
本編を読んでの感想です。
窮屈な日常から飛び出す一歩。そんな期待と緊張が入り混じる瞬間を、華やかに、そして爽やかに描き出した物語。
主人公・シャーロットの無邪気で行動力のある性格が魅力的で、彼女の目を通して広がる世界の鮮やかさに、読み手も一緒に心を躍らせてしまいます。初めて触れる街の喧騒、予想外の出会い、そして少しのスリル。そんな「未知なる冒険」を味わえる楽しさが詰まっています。彼女を取り巻く人物たちのやり取りが心地よく、特にリックの頼もしさと包容力には思わず頬が緩みます。
軽やかに駆けるシャーロットのように、読者も夢中で物語を追いかけたくなる。そんな素敵な作品でした。