第8話
その夜満干はなかなか寝つけなかった。
気持ちが高ぶっていたのだ。
無理もない。
満干は父親とその母である祖母の三人で暮らしている。
母親は幼い頃に事故で亡くしている。
亡くなった母の代わりに家事は父親と満干が二人でこなしていた。
父親の母である祖母は元気ではあるが腰を悪くしているので、長い時間立ったままの家事はできないのだった。
坂の多い村では出歩くのもままならないので、週の半分は港町の施設に行楽がてら出かけている。最初は日帰りで行っていたが、温泉付きで食事も美味しい、町住みの友人も訪ねて来やすいというこで気に入って、今や別荘のように使っているのだった。
その日も祖母は施設泊でおらず、満干は父親と食卓を囲んだ。
父親の手料理は簡単だが美味しい。
今日の献立は、鮮やかな手さばきで地魚の
嶌瓜のしょうゆ漬けを刻んだ漬物ふりかけでいつもごはんをおかわりするのだが、今日ははかどらなかった。
内緒ごとが重く胸を圧するのだ。
それでも出されたのものは平らげて、先にシャワーを浴びていたのでそのまま自分の部屋にひっこんだ。
父親は声をかけようか迷っていたようだったが、暗い顔をしているでなくただ疲れている様子だったので一晩寝れば大丈夫だろうとおやすみとだけ声をかけた。
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