交錯の向こう側

御野影 未来

第1話

ぴーぴーぴーぴーぴーぴーぴーぴー

 夏休みの昼間。窓を閉め切り、蝉の声さえ聞こえない、冷房の効いた部屋の中でゲームをしていたさとるのパソコンに赤い文字で緊急という文字が画面を大きく埋めた。いくらマウスで違う画面にしようとしても変わらない。電源ボタンを触ってみても全く変化がなかった。

 するとまた、みたこともない画面に勝手に移り変わった。


 「おっ、やっと繋がったー。驚いているところ悪いんだが、急いで君に聞いて欲しいことがあるんだ。今すぐ外に出て、13時52分になるまで玄関前の道路で二重跳びをして欲しい」

 突如画面に男性が映り、訳のわからないことを言い始めた。

 画面に映っている男性と画面に反射する自分の顔を見て戸惑った。

 そこには髪型は違うが同じ顔がそこにあったからだ。

 「急いで!あとでこの状況を説明するから。命がかかってるんだ」

 命と言われたら動くしかない。それを無視してしまえば、僕の正義が泣いちゃうね。

 「お、おぅ」

 俺は急いで立ち玄関に向かった。


 「縄跳びは靴の入っている棚の右側にあるから」

 今度は脳内に直接声が聞こえてきた。

 その場所を見てみると本当に縄跳びが置いてあった。

 やばい、やばいもうすぐ時間が来てしまう。縄跳びを手に持ち玄関の戸を勢いよく開けた。

 そして縄を解いて、息を整えて二重跳びを始めた。なんかもうよくわからなさすぎて笑えてきた。

 すると、何かが当たったかのように縄が弾かれた。やめてはいけないと思い、もう一度二重跳びを始めた。跳んでは引っかかりを何度か繰り返していると、また、話しかけてきた。

 「よし、終わっていいぞさとる!ありがとう。これで1人の命が救われた!」

 

 「おう!」

 元気よく返事をしたはいいものの、よくわからなさすぎて頭は大混乱。


 僕は靴箱に縄跳びをしまい、自室に戻っていった。戻るとパソコンの画面には先ほどと同じように、自分の顔が映っていた。


 「お疲れ様!君のおかげで命を救えたよ」


 「どういうことか説明してくれ。今何が起きたのか、君が誰なのか、わからないことが多すぎる。ってか今ので本当に人救ってるん?」


 「もちろん!そっか君の世界では確かこの機械はなかったよね。説明しようではないか!じゃーん。こちらいろんな世界を繋ぐことができる僕の家族の最高傑作だよ!」 

 自慢げに見せてくれたのは何やらボタンやレバーがたくさんついた機械であった。

  

 「いろんな世界?それって「はい」と「いいえ」で仮に僕が「はい」を選んで君が「いいえ」を選んだ世界ってこと?」


 「そうゆうこと。さっすが僕!理解が早くて助かる。基本的な思考力は同じみたいだね」

 自分と同じ顔の人と話すのはすごく不思議な気分になる。今起きていることが、日常からかけ離れすぎているわ。話はでかすぎるわで夢の中にいるようだ。誰かのイタズラで僕をからかっているのではないかと思ってしまう。

 

 「君にとっては今起きていることは受け入れられないようなことだと思う。でも間違いなく僕は君で君は僕だ」

 僕の心を全てよまれているようだ。

 

 「よし、一旦君が僕であることは置いといて、今僕が縄跳びをしたことで何が起きたんだ?」

 さとるは考えることを一旦諦めた。

 というより、人の命がかかっているといっていたので、今何が起きたのか早く知りたかった。

 「それは、この映像を見た方が早いね」

 そう言って見せられたのは僕が家の前で縄跳びを跳んでいる様子であった。

 僕が二重跳びを跳んで何回も失敗している様子が映っていた。特に何も変わったことはないと思ったが、何度も何度も映像を観ているうちに失敗している瞬間に少し時空が歪んでいるように見えるようになった。

 気のせいかと思ったが、繰り返し観ても映像は歪んでいた。一瞬の出来事すぎてよく見えなかった。すると、今度はスローモーションで映像を流し始めたので、目を凝らして見た。

 まだよく見えないが、一瞬人のようなものが映っているように見えた。


 「これって人?」


 「まあ、そうだね。僕が今やったことをまとめると、僕の世界の一部を切り取って君の世界に繋げたのさ。そこに映っていたのは僕の世界でこれから犯罪をしようとしていた人だ。今頃何が起きているのかわからず慌てふためいているだろう。まぁまた変な気を起こすかもしれないが、こいつの性格上びびって、頭冷やしているだろう」

 僕は開いた口が塞がらなかった。

 別の空間を繋げる?そんなことが本当に可能なのだろうか。


 「おっと僕はこれから予定があるんだ。これを持っておいてくれ」

 そう言って僕の目の前にスマートフォンのような物が急に現れた。普通ではありえないようなことが当たり前のように起きすぎていて、流れる時間を無理やり受け入れて過ごすしかなくなった。


 「君の世界にもスマートフォンあるだろ?大体使い方一緒だから、僕に用事がある時はそれで連絡してくれ」

 僕は静かに頷いた。


「じゃあ、また!」

 そう告げたあと、パソコンの画面はもとのゲームの映像に戻った。

 すーっ、はーっ、、、

 僕は深く息を吸って吐いた。

 いつのまにか呼吸は浅くなり、充分な酸素が吸えていなかったようだ。

 情報過多で頭がパンクしている。

 僕はベットに寝転がり天井を見つめ、怒ったことを整理しようとしたが、よくわからなくなった。

 もう、考えるのが面倒なので今日起きたことは夢だったことにしよう。そう結論をつけた後いつのまにか寝てしまっていた。

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