③-②

「好きな食べ物はなんですか」


 僕の質問に、友人が馬鹿にしたように答えた。


「きっと稲荷寿司とか、お揚げだろ。もっと面白い質問しろよなー」


 それもそうか、と納得したとき、十円玉が動いた。


「に、ん、げ、ん……。人間?」


 ぞっと背筋が寒くなった。


「おい、お前変な風に動かすなよ」


 僕が怒りながらいうと、友人は青ざめた顔で答えた。


「お、俺、動かしてねぇよ!」


「は?」


 ということは、本当にこっくりさんが答えたとでもいうのだろうか。馬鹿馬鹿しい。


 その時、チャイムが鳴った。二人しておどろいて、十円玉から手を放す。


「あっ……」


「こっくりさんって、やっている最中に手を放しても良かったんだっけ」


「駄目かも……」


「は、ははは……」


 まばたきして目を開けると、暗い。


 教室が夜になっていた。


 いまこの瞬間まで目の前にいた友人が、いなくなっている。目の前にはこっくりさんに使う紙と十円玉だけが残されていた。


 十円玉が、ひとりでに動き出す。


「い、た、だ、き、ま、す」


 気が付くと、右腕がなくなっていた。


「う、うわぁぁぁぁぁ!」


 痛みはない。なのに、どくどくと脈打っているのはわかる。どろどろと血が流れて、妙に生暖かい。


 十円玉がまた動き出した。


「か、た、い」


 硬い?


 ごろん、と何処からともなく頭蓋骨が転がってきた。直感で分かる、これは――友人だ。


 僕もこうなってしまうんだろうか。


 面白半分でこっくりさんなんてやるんじゃなかった。あれは一種の、降霊術なのだから――。


 次第になくなっていく自分の体を見上げながら、僕の意識は途絶えていった。


 -完-




 

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運命は自分で決めるもんだ 霧氷 こあ @coachanfly

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