第三.五〇話「回を追う毎に自殺者が出る本作。」今回は無理心中の巻デス!

『自殺クラブ』を震撼させた、サトウに次ぐスグルの死。彼等に取ってサトウとスグルの相次ぐ自殺は、哀しみよりも嫉妬心の方が大きく感情を支配する。残されたメンバー達も『自殺倶楽部』中盤辺りに差し掛かり、チト気持ちに焦りが出て来る。彼等の揺れる心情にトドメを刺したのが、ゴウタが連れて来た、スグルの後釜として『自殺クラブ』に加入したミチオ。

 皆と知り合ったばかりのミチオは未成年の十六歳、メンバーの誰もが油断して居た。油断禁物は自殺の元。其の一〇年後、ミチオは自殺した。死因は切腹死。ミチオと『自殺クラブ』との関係を繋げたゴウタの気持ちが特に荒れた(クソっ、あんな小僧に先を越されたッ!然も殺り方は最も難易度の高い切腹だぜ?!絶対オレの方が上を行ってやるッ)。

 

 

「フ..そうか..二人揃ってヤリおったか..」

 タカハシはゴウタの部屋の玄関前に居た。部屋番号は二〇一号室。今月に入ってから、ゴウタとアツコからの家賃の支払いが無かった。一〇日間程、猶予を与えて待ってはみたがナシノツブテ。ゴウタの部屋の前を通って、下に降りる螺旋階段が在るが、これ迄にタカハシがゴウタの部屋の前を通って居て、既に分かって居た事が在る。

 (ゴウタ君は死んどる..)

 僅かな死臭が玄関のドア越しから漂って来るのだ。だがタカハシは例の如く、死体を寝かせる。其れから何度かアツコの部屋の前も通ってみたが全くの無臭だ。スグル君みたく失踪してしまったか?暫くして彼女の部屋を開けてみたが、彼女の姿は勿論無く、そして部屋もモヌケの殻。だが綺麗に掃除がされて居て、即新規で入居可能な状態。飛ぶ鳥跡を濁さず。この諺を呟いたタカハシは直感で気が付いた。匂いが臭いに変わり、臭いが激臭に変わり、激臭が死臭に変わった頃、漸くタカハシはゴウタの二〇一号室の玄関を開けた。

 玄関口に佇むタカハシに背を向けて、ゴウタとアツコが、天井の梁に紐を括ってブラリンコ浮いて居た。そして二人は全くの全裸、イヤ、股間部には老人用オムツを穿いて居た。飛ぶ鳥跡を濁さす。ゴウタの室内もモヌケの殻。私物などは何処にも残されていない状態。

 (このワシの後始末の労力を気遣って、二人とも粋な事をしおってからに..)

 二人の両手首には、オモチャと思われる手錠が巻かれて居た。

 (あの世に行っても俺達は一緒だぜ?)

 何はともあれ、タカハシは空気の入れ替えの為に部屋の窓を全開、二人の腐乱を進行させる為に、警察への通報はココから二ヶ月後となる。

 

 ゴウタ達の死体を部屋で発見した今夜、タカハシは二人の夢を見る事になる。そしてタカハシが“イタコ”の存在となり、読者の皆さんと会話をする。

「あの、皆さん?俺、俺ですゴウタです!」「其の隣には私、キャハッ、アツコです!」

「すんません!勝手に前触れも無い展開で自殺なんかしちゃって!一つだけ伝えたい事が在って自殺しちゃったんデスけど、皆さん?俺とアツコは只一緒に首を吊って、自己満足的自殺を決行したと思ってるでしょ?チッチッチ、ふざけんな。」

「アンタ達、私のゴウタを舐めないで。」

「俺等がそんな無駄で無意味な自殺なんかする訳ナイっしょ?ミチオ君が死んでから、自殺方法を二人でジックリ話し合って決めた後、俺は透かさず減量を開始。アツコの体重に成る可く近付ける為です。サトウさんは“無理心中”を酷く小馬鹿にしてたけど、今回の俺達が一番重視した点は『寸分の狂い無く二人同時に息絶える事』。」

「無理心中ってさ、見た目、一緒に死ぬかも知んないけど、一緒に逝く訳じゃ無いジャン?この矛盾点をゴウタとひたすらに考えた訳。ネッ!?ゴウタ!」

「ヘヘっ!お陰様でナントカその目標は達成出来ました。俺達一緒に逝けましたよ!ナっ?アツコ!」

「ウンッ!ゴウタ。ワタシ今とっても幸せ!ゴウタぁ、私もだけど貴方、減量でチトお腹が減ってるんじゃナイ?もうソロソロ行こうよォ..あの世に行ってイッパイ美味しい物食べよ!」

「じゃあ最後に、俺達の死因を皆さんにお伝えしてから地獄に行きますね!俺等の死因には二種類在って..一つ目が、“体重の誤差が〇キログラムの同時首吊り自殺。そして二つ目が同時に餓死。この二点共に、俺達揃ってビンコぉでした!もぅミチオ君の切腹には負けらんない!って云う想いが俺達を強くさせてくれました!」

「キャハッ、皆んなサヨウナラ!」

「バイバイ皆んな!自殺、超サイッコぉ!」

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