5.人倫
5.人倫
バルカ!また先に言ったわね!
マスカットォ…?そ、そうかぁ。ルンビニとニューヨーク、アントワープとプサン、マスカットと東京、アンカッシュとユールマラがそれぞれリンクしているのなら、マスカットの事件に東京の事件を解き明かすヒントがあるかも知れないってことだなぁ!
ええ。紙幣やボードゲーム以外にも共通点があった。
勿体ぶらずに話してもらおうかしら?マスカットの事件について。
うん、もちろん♫
オマーンに住むある絵描きは幼少期とても貧しかった。真面に教育を受けられなかった彼は暇さえあれば、至る所に絵を描いていた。時には木の棒、時には石ころ、時にはその指で…絵を描かない日はなかった。いや、寝てる時以外は絵を描いていた。
彼はやがて絵を売ることを覚えた。最初はヨレヨレの紙にボサボサの筆で描いたいくつかの作品とカンカンを道端に並べて販売活動をしていた。それでも値が付いた。稼いだお金のほとんどを画材に費やし、それを繰り返すうちに、個展を出し画廊を建てられるほど巨万の富を得た。世界でも有数の絵描きになったときには、貧乏時代から彼を支えた妻と子供たちに囲まれ、幸せな毎日を送っていた。
しかし、それはある日突然終わりを迎えたのだ。最愛の妻と一番弟子が駆け落ちをして自分も子供たちの前から姿を消してしまった。絵描きはその財力と知名度を惜しみなく駆使してありとあらゆる手段を使い、2人を探し出し、法的に2人を分断した。その後、妻は家に戻ったが、あの時の幸福は戻らなかった。
元弟子はこの騒動で愛する人も仕事も社会的地位も全てを失い、次第に絵描きを恨むようになった。法的に接触を禁止されていた2人だが、お互いの新しい連絡先を交換することに成功して、再び連絡を取り合っていた。その矢先、弟子の元に"プラン"が書かれた紙が届いた。読み終える頃にはそれは自然と燃え尽きたが、弟子にとっては十分であった。"プラン"では最愛の人がマリオネット(実行犯)
となる筋書きだが、弟子にとってもはやそれはどうでいいことで、絵描きへの復讐だけが全てであり、それを実行することに迷いはなかった。こうして、クライアント(真犯人)である弟子が、ターゲット(被害者)である絵描きを殺すよう、マリオネット(実行犯)である妻を嗾けマスカットの事件が起きたのだ。
ロンドの旅 Part3ロンドとソナタの旅 金賀こう @k-o-h
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