2ー6

『杏side』


幾年の時が、過ぎただろうか。

俺は、今、新たな人生を歩んでいる。


「アズ、あちらのお嬢さんの事を聞いていますか?」


「大丈夫ですよ、母さん…」


そう、一つ言えば、俺の母親は、曾ての許婚だった冥界王族の皇子様“靉流”の父親であった冥界政府副官吏長『アズイ卿』だ。

何を、間違えて、彼は女に、生まれたのかを問いたい。しかも、必然的過ぎるんだ。


俺の母親として、生まれてきたのが。


曾ては、義理の息子だぞ。


やりづらいとか、気まずいとか感じるだろう。


だけど、この、母、美しく、スタイリッシュッで、ベビーフェイスな上に、気品がある。


-…故に、ご自慢な母親。


身長だって、モデル並みだし、ピンが十センチあるミュールも履きこなせる四十代後半はいない。


化粧も…。


ケイ●使っているし、肌を大事にしているのか、化粧水も、アクアレー●●を使っている。肌を、引き締める為に、炭酸系の物とかを愛用していたり。


まぁ、凝っている…。


『あら、女に、生まれ変わったの?じゃあ…私は、男として、変身しようかしら…?』


恐ろしい。


大叔母様の、一言。


「闇亜さんって、此方側でも有名なのよね。紅月家って、第一楽団という、音楽に、携わる者が多く…。皆、将来有望な人材揃い。その、楽団を動かす役目を担っているのが…彼女なの」


「そうなんだ。是非、逢ってみたいよ。未来の楽団を担う…お嬢様に…」


「そういや」


「母さん、大叔母様は、居ないよ…」


あれ以来…。


母は、大叔母様を警戒する様になった。

記憶が、曖昧な部分があるらしいが、夢の中に出てくる女性は、にこやかに笑ったらしい。

あの頃の自分が、男だった自覚はあるみたいで『襲われて、たまるかぁぁぁ』と、叫んでいた。


「“彼奴”…殺す気か」


「…母さん」


「あら、いけないわ。私ったら」


てへっと、舌を出しながら、可愛さを出す。

侮れない母親だ。


夢を見るせいかは、解らないが、時折、前世と、同調するらしい。


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