第2話:君が、世で、愛ある嵐です。

-紅月家·リビング


此処は、とある場所にある一軒家で、旧家の一つである『紅月家』。

そんな、昼下がり、綺麗な銀色の髪をした女性が、正座させられていた。


「お嬢様!紅月家が、何たるモノかを、丁度良い機会なので、叩き込みます…」


腕を組みながら彼女を『お嬢様』と、呼ぶ侍女が、睨みを利かせている。


「それは、反則ですわ。少し、お出掛けを」


「紅月家の教訓を言えたら、出掛けて良いと、夐莵(はると)は、申しています…」


「ひ、酷いですわ。大体、貴女は、母様に仕える者ではありませんか…。しかも、女性の姿に、化けるとは」


「何かと、この格好が、好都合なのです。本来の姿だと、私の美しさが、引き立つではありませんか…」


ほんの一時間前、女性は、外へ、出掛けようとしていた。

其処までなら、目の前の彼女も許していただろう。但し、屋敷内での話だが。

出掛けようとしていた場所に、問題があった。


「自分で言っていて恥ずかしくありませんか」


「全然。事実を、述べたまでです…」


証拠もなく、発言しますわ。


何故、外に出ては行けないのか。


紅月家に、由来している教訓が存在する。


「…うわっ、コイツ、冗談は、顔だけにしとけですわ」


少し、冷めた瞳をする女性は思った。


「お嬢様には、解りませんね。女の身体が…どれだけ楽かを。この、肉体美を使えば、世の男は、大抵、落ちます…」


「貴女の頭の中は、てっきり数式だらけかと思っていましたわ…。第五楽団長という立場ながら、母様専属の侍女。故に、紅月家の事なら、詳しいでしょう」


「えぇ…」


「しかし、時と場合により、一つ忘れている事がありますわ。私は、冥界語が話せるのですよ!」


これは、紛れもない真実。

曾て、冥界王族だった前世が使っていた言葉が、今の現代で、使えるのは彼女だけだ。



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