第9話(解決とその後)
翌日の早朝、目覚ましで起きた私とルルカは早速正門へ向かった。正門へ向かうとルルカの予想通り、正門は開いていた。
「ルル、この門を超えればいいの?」
「あぁそうすれば、きっとこの世界線を脱出できる」
私とルルカは息をのんで顔を見合わせた。そして門の外へ「せーのっ」で飛び出た。
無意識につぶっていた目を開ける。
「どうなったの」
すると、後ろから
「あれー? お嬢ちゃんたちどこから出てきたの?」
と声がした。人だ。人がいる。
そこには門の番をしている警備員さんが立っていた。
「成功だ」
「やったー! やったよルル!」
後ろを振り返ると、アミリナスは人で溢れかえっていた。
「お嬢ちゃんたち、突然現れなかった?」
「あぁえっと、これには事情がありまして」
無論、神隠しにあったこと、いや時空を移動していたなんてことは信じてもらえるはずもなく、危うくアミリナスに入れなくなるところだったが、二人とも幸いにも学生証を持っていたのでなんとか再び門をくぐることができた。
「危なかったわね」
「そんなことより……お腹が空いたのだ」
「そうね、早速大学に戻ってなにか食べましょう!」
こうして私たちの神隠し事変は幕を閉じた。
※
放課後のカフェテラス。私とルルカはいつも通りの日常を取り戻していた。
「ルル! 見てこれ!」
「なになに、行方不明者増加傾向、何か理由が、か」
「どうしよう、助けに行かなくちゃ」
「どうやって助けるつもりかね……自分たちが戻って来られただけで運が良かったと思うしかあるまいよ」
「でも……」
「こんな話がある。昔、とある村で小さな女の子が行方不明になった。村は総力を挙げて女の子を探したが、女の子は見つからなかった。しかし、三日後、村から数百メートルちょっとしか離れていない場所で女の子は発見された。――きっと知らず知らずのうちに女の子は村の『境界』をまたいだのだろう。だから同じように今行方不明になっている人間も獣人も、ひょんなことからこちらに帰って来られるさ。それに……」
「それに?」
「こちらの世界こそ神隠しにあった世界で、あちらの世界が本来私たちがいるべき世界なのかもしれないぞ」
そんな分かるような分からないようなことを言いながら、ルルカはキャスケットをかぶった。
「あれ? もう行っちゃうの?」
「課題があるのだよ。君だって課題があるんじゃないかね」
「あー! そうだった! あの課題まだ提出してなかったんだ!」
私も中折れハットをかぶり、急いで一ツ橋教授の所へ向かう。
一ツ橋教授が神隠しにあってなければいいけれど。
この世界の箱庭で 伊吹 藍(いぶき あおい) @Aoi_ibuki
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