夢で見た話
天宮龍虎
夢物語
日が落ち暑さが和らいできた頃、僕は地域の祭りへと友人に連れられやってきていた。
急な連絡であった為髪を一つに纏め、普段着に羽織りを纏っただけだったが暑さが残る今の頃には丁度良いだろう。
そして友人に連れられるまま参道を進むと、道沿いの屋台は心地よい騒がしさでこの祭りを盛り上げているようだった。
屋台飯を頬張り、久方ぶりの祭りに胸を躍らせながら辺りを見回しているとふと視界の端に明かりが見えた。
(確か彼処には古い祠が有るだけではなかったか?)そう思いつつ僕は好奇心と一抹の不安を抱えて道を進んで行った。
少し進んだ先で何か行列のようなものと声が聞こえた為、咄嗟に茂みへと身を隠す。
その姿が此方へ近付くにつれ、正体がはっきりと目に映る。
顔は隠され見えないが服装や身体付きを見る限り全員男性のようだ。
(こんな所で何故?)と思いそのまま身を潜めつつ着いていくことにした。
着いて行った先には日本家屋が建っており、僕は男達を見失わぬ内に中へと入り込む。
そして中を見て回っているとふと声をかけられた。
叱られるかと思い身構えたが杞憂だったようだ。
何か話をされた後、部屋へと通された。
その先に居た人物の顔を見て僕は息を呑んだ、僕が推し続けている彼だったのだ。
物語で見るような花街の服を男性向けにアレンジしたような格好であった
(何故こんな所に?何故そんな格好を?そもそもなんで推しが目の前に…?)
と思考も散乱してしまった僕はその場へと立ち尽くす
先に言葉を発したのは彼の方だった
そうして彼の話を聞く内に散らばっていた思考が落ち着き、少し冷静になる事が出来た。
簡単に話を纏めるとこうだ
・ここは現世の狭間に在る屋敷で「隔離夜」と呼ばれている
・迷い込んだ人と入れ替わる事で現世へと戻れる事
・彼は少し前に迷い込み、入れ替わられた事
・入れ替わりが可能なのは夜が明けるまで
僕はその話を聞き、すぐに入れ替わりを申し出たが、彼は”入れ替わる事は出来ない”と告げ首を振った、ならばと入れ替わりの方法について聞くも案の定答えてくれない。
僕と彼は話し合うがソレは平行線を辿るだけであった。
元々あまり語彙力が多くはない僕は結局彼に説得されてしまい、悔しさともう会えないのでは無いかという思考が湧いてしまい泣く僕を彼が宥めている内に無情にも空は白み始めてしまった
彼は帰れなくなる前にここから出るようにと僕を連れ出そうとするが、その場へ留まろうと必死に抗う、そこそこ力はあると自信があったからだ
だが、それはあくまでも”女性としては”の話であった。
男性である彼には勝てず、少しずつ出入口へと押されて行く。
(入れ替わりの方法は分からない、それならばせめて魔や厄を祓い、また逢えるように、)と思いを込め、咄嗟に羽織りを脱ぐ、僕の羽織には麻の葉模様が描かれていた。
「コレを受け取るのなら大人しく現世へ戻る」と告げ、彼へと差し出す。
彼は驚いた様だったが羽織りを受け取ると僕を引き寄せ髪に何かを差した
驚く間にすぐに離され、確認するとそこには簪が差されていた。
そして約束の通り僕は扉の方へと彼に手を引かれ向かう。
そして扉をくぐり抜けるよう彼に背を押された時、どうしても未練を感じた僕は彼の方へと振り返る。
それ以上は此方に来れないのか佇む彼は安堵と悲嘆の入り交じった表情を浮かべていた。
それが目に映ると同時に僕の身体は外へと出てしまう、同時に扉が目の前で閉まると僕の視界も暗転してしまった。
目が覚めると見慣れた家の天井が目に入った。
気持ちの悪い汗と視界の滲みに不安を抱えながら起き上がり、その思考を振り切るように顔を洗って、日常生活を送る。
不意にスマホの画面が点いた、そちらへ目をやると推しの配信通知であった。
それに安堵感を覚え、今日も彼の配信を開くのであった。
(○・ω・)ノ----end-----
夢で見た話 天宮龍虎 @Amamiya_Ryuto
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