あるホラー屋の日記

船越麻央

狂気に進む我が心

〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 あるフリマで幽霊画の掛軸を手に入れました。立派な木箱に収められていて髪の長い和服の女性の亡霊が描かれています。

 わたしの家には掛軸を飾るような床の間はありませんので壁に掛けました。夜になりましたが、特に怪異は起きていません。


 わたしの目の前に髪の長い和服の女性が座っているだけです。



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 時計を見ました。午前三時です。深夜の廊下からコツ、コツ、コツと足音が聞こえてきました。

 わたしが会いたかった人。今夜も来てくれました。


 インターホンが鳴りました。


 わたしはドアを開けてその人を迎え入れました。そしてわたしはパソコンの前にすわりました。パソコンのモニター画面には会いたかった人。


 ゆっくりと画面から出てきました……。



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 あるフリマで幽霊ラジオを手に入れました。一見なんの変哲もない古いラジオですが、夜中にある周波数に合わせると幽霊の声が聴こえるそうです。さっそく今夜試してみました。

 色々な周波数に合わせてみました。でも幽霊の声……聴こえてきません。特に怪異も起きていません。


 わたしの目の前に、知らない男の人が座っているだけです。



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 恐。 恐! 

 恐怖。 恐怖! 

 暗闇。 暗闇! 


 恐ろしい。

 恐ろしい!

  

 おぞましい。

 おぞましい!

 

 名状しがたい。

 名状しがたい!


 ぴちゃぴちゃと水の音……。


 あいつがまたやって来ました。


 ああああああああああ!


 窓に……手が……手が……。

 

 誰か……助け……て……。



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 あるマンションに引っ越しました。事故物件ということで格安家賃です。不動産屋さんから告知事項の説明を受けました。前の住人はこの部屋で自殺したそうです。

 怖かったけれど、我慢して契約しました。夜になりましたが、特に怪異は起きていません。


 部屋の中を歩き廻る足音がするだけです。



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 ある古本屋でボロボロの洋書を手に入れてました。禁断の魔道書だそうです。見たこともない文字と奇妙な図形が描かれています。

 良くわかりませんが、とても大事なことが書かれているようです。夜になりましたが、特に怪異は起きていません。


 ドアをドンドンと叩く音と、外で雷鳴が轟いているだけです。

 


〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 狂! 狂!! 


 狂っている!

 狂っている!!


 完全に狂っている!!!!


 天地は逆になり、光は闇になりました。


 時間がどんどん逆行しています。


 死者が墓場からよみがえって来ます。


 狂人の歌声が聞こえてきました。


 どんどん近づいてきます。


 助けてください。


 ここから出してください。


 発狂します!


 わたしは正気です!



〇月〇日 〇曜日 天候 雨


 ここは……どこ……。



 



 


 

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