第17話 幕間 世界史の授業風景2
「新年度の風物詩、ですねぇ」
教室にやってくるなり、教科担任はそう口にした。
「今日は授業にならないので」
黒板の前に立ち、教室を見回す。
出席しているのは、生徒数は三分の一である。
「雑学の続き、聞きたい人ー」
教科担任はそういって、やはり教室をみまわした。
全員が手を上げる。
「それでは、今日は何を話そうか。
渡航者のことは話したし……」
俺はふと、今朝のオーレリアとのやりとりを思い出した。
気づいたら手を挙げていた。
「先生、別のクラスの子からきいたんですけど」
教科担任がこちらを見る。
「【永遠の旅路を歩む者】ってひとの話が知りたいです」
教科担任が思案する。
話すべきかどうか迷っているようにも見えた。
「……まぁ、いいでしょう」
教科担任は語り出した。
「【永遠の旅路を歩む者】の話をするには、もう一人、重要な存在について話さなければなりません」
存在?
人ではなくて??
「いえ、まずは彼らを取り巻いていた環境からでしょうか」
さて、どこから話したものか、と教科担任はまた思案顔になる。
思案顔はそのままで、教室を見渡す。
釣られるように、俺もほかの生徒を見た。
うつらうつらと船を漕ぎ出す者が何人もいた。
起きているのは、俺を含めて五人ほど。
「世界がこうも多くなった原因。
それは【永遠の旅路を歩む者】が何度も世界をやり直したことに始まりました」
そこで、三人ほどコクンコクンと船を漕ぎだす。
あるいは欠伸をし始める。
教科担任の顔が、何処か楽しそうに嬉しそうに満足そうに、そして祝うかのように、破顔する。
「そして、彼が何故そんなことをするに至ったのか。
ひとえにそれは、
取り戻す?
オーレリアから聞いた話とは違う。
「誰でもあるでしょう?
過去をかえたい。
あの時ああしていれば、こうしていれば。
そんな後悔から全ては始まりました。
全ては、喪った家族を取り戻して、その家族が幸せにニンゲンとして人生を終える、そんな世界を探し始めたこと、手に入れようとしたこと、そして作ろうとしたこと。
その後悔と挑戦と創世の数だけ世界が生まれ、広がりました」
ここで起きているのは、俺だけとなった。
みんな寝てるし、質問してもいいかな。
「あの、先生」
教科担任が、待ってましたとばかりに俺へ笑顔を向けてくる。
まるで、おとぎ話に出てくるような女神のような美貌。
そして、この国では珍しい
「はい、何でしょう?」
「質問、いいですか??」
「どうぞ」
「その、家族の名前はわかってないんですか??
【永遠の旅路を歩む者】みたいな総称でもいいんですけど、気になって」
「わかってますよ」
わかってるんだ。
教科担任のステラ・ルークス先生は俺の質問に答えてくれた。
「【愛を求め叫び続ける者】」
これが、現代に伝わる、世界を広げた原因である存在、その総称らしい。
手違い受験から始まる英雄学園生活 ぺぱーみんと/アッサムてー @dydlove
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。手違い受験から始まる英雄学園生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。