冬のご両人

2022年11月中旬、バイト終わりで帰宅した夕方


アパートの一室の、実に四分の一を占める


実家から持ってきた大きめのコタツの中に入り、仰向きになってふと考える


なぜ『金属バット』は準決勝に進出できなかったのだろうか



一昨年の2020年敗者復活戦では、まさかのトップバッターという悲劇に遭い


昨年の2021年敗者復活戦では、ラストイヤー補正のかかった知名度十分の『ハライチ』に敗れ


なんと今年はラストイヤーにもかかわらず準々決勝でその姿を消した


さらに驚くべきは前年度ファイナリストの『見取り図』『ランジャタイ』『モグライダ


ー』『インディアンス』さえ準決勝に残れなかった、中でも『見取り図』と『ランジ


ャタイ』はラストイヤーである


そうそうたるラストイヤー組の中から勝ち上がったのはのはなんと『かもめんたる』のみ


誰がこんな結果を予想し、望んだのだろう(『かもめんたる』ファンには申し訳ないが)


なぜ『かもめんたる」なのか


彼らはもうキングオブコントで優勝してるじゃないか


肩書はもう十分手にしているのだ


『かもめんたる』を妬む道理も必要もないのだが


ただこっちのめんたるがどうにかしそうである


準々決勝の結果発表後


『金属バット』友保はお滑り大魔神2022を繰り出し


小林は昔書いたという小説をねじ込んだ


動画内の友保の目は多少腫れているように感じ


小林の小説は彼ら地下芸人が地上へと駆け上る、そんな勢いのある作品だった


15年という長い年月を全てその目標のために捧げてきた、その道が途絶えたのだ


彼らはどんな気持ちだったのだろう


彼らだけではない


今まで多くの芸人がその目標を追いかけ、最後までたどり着けず涙した


ただ一つ異なるのは、『金属バット』にはその目標を達成するだけの実力が十分あったということだ


今年こそはと何度言われてきただろう


多くの人が彼らの実力を認めている


『金属バット』が決勝に行けずにラストイヤーを終える


そんな世界線があっていいのか?そんなわけがない


わたしは初冬に負けじとコタツから手を出し


スマートフォンに手に取ると


ワイルドカードに賭けGYAOでご両人の漫才を流し続けた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 23:00 予定は変更される可能性があります

原稿用紙1枚分 @gorohati

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ