自分の中の悪魔

『悪魔…』


思わず口に出して言ってしまった。

急いで悪魔の方を見る。………よかった、バレてはいないらしい。悪魔は2匹いてなにやら話している。


〈よぉし潜入成功だネェ。〉

〈あぁ、神殿と言っても魔神様の力に掛かれば余裕だナァ〉


悪魔たちはそういい

ヒィヒヒヒと笑う。

コウモリとオオカミが混ざった黒色の姿でこんな笑い方してほしくないな。


今の僕では悪魔たちに勝つことはできないから逃げよう。うんそうしよう。


こういう時は僕よりも強い神様に任せるのが一番だ。


そろりそろり足音と気配を完全に消す。この調子なら逃げられそうだな。


そう僕が油断した途端足元にあった小枝を踏んでしまった。


バキッ!


おい!何やってんだよ!僕!

これ絶対バレたって!案の定悪魔たちが猛スピードでこっちに来てるしさ!


〈おい!何か物音がしたナァ!誰かいるのかナァ!〉

〈絶対なにかいるよネェ!〉


クソ!悪魔達が走ってくる。どこか隠れる場所はないか!!


幸いなことに隠れる場所はすぐに見つかった。急いで僕は隠れる。


でも、このまま隠れていてもどうせ見つかってころそれてしまう。嫌だ僕はまだ死にたくない!


こうなりゃ先手必勝!悪魔達に見つからないうちに2匹のうち一匹は殺していってやる。


〈ここから音がしたよナァ。どこかナァ?〉

〈ここはワシが探してくるからネェ。アンタはあっち探してきてネェ。〉


そう言い悪魔は二手に別れたが僕にとっては好都合の。悪魔が一匹のうちに片方を殺しすぐにもう片方も殺す!


そうだ…これしかない!




今の僕には使える魔法なんてない…けど!だけど!これでも僕は神だ!魔法以外でも戦える!絶対に2匹を殺し、この先の糧にする!



〈どこにいるのかネェ。隠れていても無駄なんだよネェ。〉


悪魔がきたが、僕がどこにいるのかはわかっていないようだ。それならば悪魔が僕に背を向けている間に奇襲する。だからその時が来るまで耐えるんだ!


〈どこかネェ?どこかネェ?誰がいるのかネェ?ヒヒッヒィヒヒヒヒ〉


悪魔は不気味な笑い声を上げ僕に背を向ける。


…………………………今だ!僕は瞬時に神力を体の中で循環させ体の強度を上げる。そして目にも留まらぬ速さで相手目掛けて突進する。


狙うのは頭、確実に殺すため


「当たれーーー!!!」


〈なニィ!そんなとこにいたとはネェ!〉


そう言い悪魔は後ろを振り返り防御姿勢を取ろうとする。


でも…遅い!!悪魔の防御姿勢が整うより僕の攻撃の方が速く届く!



グシャゴキゴ、グッシャァ


青紫色の血が青薔薇の花弁のように飛び散る。 

今の攻撃で悪魔は死んだ…間違いなく。


証拠として僕の手と耳には骨と血肉を貫いた時の音、感触が残っている。そして目の前には頭部が巡り撮られていて血管が剥き出しの悪魔の死骸。さらには返り血で染まった僕のこの身体。初めての感触と光景に僕は思わず吐きそうになる。


しかしそれよりも悪魔を殺したという事実が、僕の気持ちを高ぶらせ吐き気を抑えてくれる。そしてダンダンと吐き気は亡くなり悪魔を殺したという優越感に変わっていく。



それよりもあと一匹の悪魔について…だ。

このまま逃げてもいいがあの悪魔を放置しているとなかまの死骸を見つけると大勢の増援を呼ぶ可能性がある。


そうなったら面倒だな。やはり殺すしかない。

問題は残りの悪魔がどこに行ったのか…だか。


どうやら心配御無用だったらしい。


なんたって、僕の目の前には怒りと悲しみの感情でグチャグチャになっている悪魔がいた。


〈アニ…アニキ……アニキィィィ!オマエ絶対に……絶対に許さないからナァ!殺してやるからナァ〉


悪魔は絶叫にも近い声でそう言った。 

その時あまりに必死なその悪魔を見て僕の中の自制心が壊れた音がした。


「やぁ、悪魔くん。どうしたのかな?もしかして?僕に会いに来てくれたの?嬉しいなぁ〜ははっわざわざ探す手間が省けて助かるよ。」


〈オマエ…オマエェェエ!コロスゥ゙コロスコロスコロスゥ゙絶対にコロスゥ゙コロスカラナァ!〉


そう言って悪魔は僕目掛けて突進してくる。

しかし激高しているからなのだろうか、その動きは単調でとても読みやすい。

なので僕はワザとギリギリに避ける。

だってその方が闘牛を相手にしているようで面白いから。


〈シネェシネシネシネシネシネシネ、シネェ!〉


「言葉を吐いているだけじゃあ僕は死なないよ?ほら攻撃を当てないと」


ハハハハハハ楽しい!殺し合いが…


ずっと続けていたい。もっともっとおちょくっていたぶって、遊ぶ。


悪魔は単調な攻撃しか繰り返さない。憐れだ実に憐れだ。でもそれを観ているのが心地良い。


はぁああ、最高の気分だ。今なら何でもできそうな気までしてくる。


それこそ無属性では使えないような他属性の魔法まで……

そうだ!試しに唱えてみよう。これで悪魔がどんな反応をするのか…楽しみだ!


そうして僕は詠唱を唱える


「彼の者に課せられし10の禁忌が一つ、我が呼びかけに呼応し力を解放せよ。暗黒死の泡沫」


これは僕には使えないはずの闇の高位魔法。本来であれば神力は飛散しなにも起きない物。


しかし僕の神力は飛散せずその場に留まり形を成形しだす。

そこに現れたのは漆黒の棺だった。


するといきなり棺が開き、中が丸見えになる。

棺の中は光を一切通さない黒に入ったものを必ず仕留める何億もの長い針


うわぁなんだこれ………

最高じゃあないか、もう悪魔で遊ぶのは飽きてきた頃なんだ。


僕がそう思っていると棺から子守歌が聞こえてくる。すると、いきなり悪魔が宙に浮いた。


〈ハァ??オイ!ナンナンダァコレハァ?〉


「残念だったね。どうやら君は僕を殺せず死ぬみたいだ。」


僕がそういった途端。宙に浮いていた悪魔が棺の方へ吸い込まれる。


〈オイ!マテヨナァ!オレハナァマダシネネェンダヨナ。オイ!オ…イ…〉


「だからさぁ?さっきから言ってるよね。喚いているだけじゃ誰も殺せないよ?君は何もできずに死んでいくんだよ??」


〈イヤダ!!イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤ…ダ…〉


悪魔は狂ったようにイヤダという言葉を繰り返す。そして悪魔は棺の中に移動させられ、棺が閉まる。


中からは悪魔の最後の喚き声と鳴き声が聞こえた。

最終的にそれらが聞こえなくなると棺は空気中に溶けるように無くなった。


棺があった場所からは悪魔の内臓や血肉が血雨となって降ってきた。


僕は棺の真下にいたから血雨が僕の体に降り注ぐ、普通なら気持ち悪がってその場から動くだろうが、僕はそうできなかった…いやしなかった。


だって…あの悪魔の死に様を見て腹を抱えて動けないほど笑っていたから。


そして僕はその日から僕の中にいた本当の自分を知ることになったのだった………

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転生したら神だったので、神名を貰うために最強になってきます 怠惰 @taida2434

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