〈第1話〉『新たな生活』

 王立クロフォード学園入寮前日・夜―――


 「お母さん、これもう出してもええの?」

 うちは出来上がった料理を見てテーブルに並べても大丈夫かの確認をハンナにする。

 

 「いいわよ~。もう少しでパンも焼けるからね」

 うちはハンナの返答を受け、出来上がった料理をテーブルに並べていく。

 

 ガチャッ


 『ただいま~』


 夕食が食卓が並び始めたタイミングで父のブルーノ・アッシュフィールドが帰宅する。

 ブルーノは王都の衛兵を務めている。 


 「「おかえり~」」

 うちとハンナは帰って来たブルーノに言葉を返す。

 

 「ティファ、パン焼けたからテーブルにお願いね」

 ハンナが焼きあがったパンをオーブンから取り出し、皿に乗せたものをうちにテーブルに並べるよう指示してくる。


 「これで全部?」

 うちは焼き立てのパンをテーブルに運びながら、ハンナに聞いてみる。


 「あともう少しで1品出来るから先にお父さんに声かけてきて~」

 それを聞いてうちは別室で着替えているブルーノに声を掛けに行く。

 

 「お父さ~ん。ご飯できたよ~」

 うちの声かけにブルーノは『おう』と答えてくる。

 ブルーノに声を掛けたうちは食卓に戻り自分の定位置に腰を降ろす。

 最後にできた1品をハンナがテーブルに並べ、ハンナも自分の定位置に腰を降ろす。


 「おぉ~今日は豪勢だなぁ」

 部屋着に着替えて来たブルーノが、テーブルに並んだ夕食の品数の多さに驚く。


 「ふふふ。そうでしょう?明日からティファが学園に入学するから今日は……ね」

 それを聞いたブルーノは感慨深げな表情を浮かべ食卓の席に着く。


 「そうか……。ティファも学園に通う歳か……。それにしても、ティファは剣術科でよかったのか?」

 ブルーノがうちにそう聞いてくる。


 「ん~……、お母さんには申し訳ないんじゃが、うちは剣術の方が性に合っちょると思うんよね」

 ハンナから受け継いだ魔力があると思うが、うち自身魔術より剣術で生きていきたいという思いがありブルーノの問いにそう答える。


 「まぁ、この先自分の道は自分で決めていくものだから私は何も言わないし、ティファはティファにしかできないことを探していけばいいと思うわ」

 ハンナは私の答えを否定せず、自分の道を進めと応援してくれる。


 「そうだな。ティファ、この先は自分の正しいと思った道を進めばいいと思う」

 とブルーノもハンナの言葉の後押しをしてくれる。

 

 「正しい道……か。なんじゃろ、今は思いつかんけどうちはうちなりに学園生活をしていこうと思っちょるよ」

 うちは食卓に並んだ料理を頬張りながらハンナに答える。

 それを聞いたハンナは「今はそれでいいのよ」と返してくる。

 うちと両親は一時期の別れを惜しむかのように、これまでの昔話に花を咲かせる。


 「そういえば。お父さんとお母さんの馴れ初めって聞いたことないのぅ……」

 うちは両親の馴れ初めが気になり、テーブルの対面に座って居る両親に視線を向ける。

 うちが2人に話題を振ると、ブルーノとハンナが顔を見合わせ当時の馴れ初めを思い出いしたのかハンナがモジモジとし始める。

 

 「そうだなぁ……。あれは確か年1回ある国の剣術試合でハンナの通っていた私立聖フェアクロフ高等学院に行った時だったかな」

 ここラングリッサ王国では年に1回国を挙げての剣術試合が行われ、各領地にある高等学校の剣術科で腕に覚えのある生徒が選抜され、開催学校に集まり剣術試合を行うのだとブルーノが教えてくれる。


 「ん?お母さんってクロフォード学園じゃなかったん?」

 てっきりハンナもブルーノと同じクロフォード学園だと思っていたうちはハンナの方を見て首を傾げる。


 「そうよ。大会でケガをしたお父さんに癒しの光ヒールを掛けて傷の治療したことがきっかけだったわよね」

 そう言ってハンナが隣に座っているブルーノの方を見る。

 私立聖フェアクロフ学院は、首都ランノックの2つ隣にあるフェアクロフ伯爵領にある学院であり、主に癒しを得意とする賢者や聖職者を多く輩出している学院だとハンナが説明してくれる。

 ハンナから視線を向けられたブルーノは「そうだったなぁ」と腕組みをして当時のことを思い出す。

 その後もうちが生まれたときの話しなど昔の思い出話を就寝する時間になるまで話した。


 王立クロフォード学園入寮当日・朝―――


 学園入学の当日、竜車を所有している近隣の知り合いに頼み、学園まで送ってくれる幌付きの荷台を引いた竜車が家の前に停めてくれている。


 「忘れ物はない?」

 ハンナがうちの身だしなみを一通り見て、心配している様で忘れ物がないか確認してくる。

 ハンナの隣に居るブルーノも、うちとのしばしの別れを惜しみ寂しそうな表情を浮かべている。


 「大丈夫。ちゃんと準備できちょるよ。お母さんは心配性じゃねぇ……」

 ハンナの心配の仕方に若干引きながら、うちはハンナの問いに答える。

 

 「ティファ~、おはよ~」

 手を振りながらトランクケースを重そうに持ったミリィが手を振りながら私に近寄ってくる。

 ミリィはハンナとブルーノに挨拶をして、竜車の荷台に荷物を入れる。


 「おはよ。待たせ過ぎじゃ」

 うちは腰に手を付き、遅れてきたミリィに苦言を呈する。

 それを聞いたミリィは笑いなが謝りながら申し訳なさそうにする。


 「それじゃミリィも来たし、そろそろ行くね」

 うちはそう言ってハンナとブルーノにハグをしてしばしの別れを告げる。

 うちとミリィは学園まで送ってくれる竜車の荷台に乗る。


 「お母さ~ん!お父さ~ん!いってきま~す!」

 うちとミリィを乗せた竜車が走り出したところで、うちは家の前で手を振って見送ってくれている両親に手を大きく振り返す。



 うちとミリィは王立クロフォード学園まで送ってくれた竜車の馭者に、送ってもらったお礼を伝え、トランクケースを荷台から降ろし、うちとミリィは王立クロフォード学園の門の前に立つ。

 

 「ほぇ~、ここがクロフォード学園か……」

 うちは学園の大きさに感嘆の声を漏らし、改めて自分の入学する学園の規模を思い知る。

 

 「ティファ!こっちこっち、クラスの張り出しがしてあるよ!」

 人だかりの出来ているクラス割りの掲示板前で、ミリィが手を振りうちを呼ぶ。

 今年度は魔術科の人数が多いらしく。A~Dクラスが魔術科、Eクラスが剣術科、Fクラスが弓術科、Gクラスが商・技術科の振り分けになっていた。

 うちは剣術科志望であるため、必然的にクラスはEクラスになる。

 

 「それにしても、魔術科は多いのぅ。4クラスもあるんか……」

 うちが思っていた以上に魔術科に入学する生徒の多さに驚嘆する。


 「うん。魔術科は毎年入学者が多いからA~Dクラスまであるみたい。今年は特に魔術科が多いらしいよ~。あ、あと学園長の孫娘も今年入学するみたい」

 ミリィが自分の名前をリストから探しながら驚嘆しているうちに説明してくる。


 「ティファ!ミリィ!」

 うちとミリィがクラス分けの掲示板に目を向けていると、背後からうち達の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

 声のした方を振り向くと、そこにはミリィと同じく幼馴染のファーガス・ベルナップが手を振りながらうち等に近寄ってくる。


 「おぉ~、ファーガスじゃないか。おはよう」

 「ファーガスおはよ~」

 声をかけてきたファーガスにうちとミリィは挨拶を返す。


 「おはよ。クラス分けどうだった……って聞いてもティファは確定だしクラスが変わるのはミリィだけか」

 ファーガスはそう言ってミリィの方に視線を向ける。


 「ファーガスはどのクラスに入るん?やっぱりGクラスなん?」

 ファーガスは先祖代々からの鍛冶屋の家系だと聞いている。

 そのため商・技術科と勝手に思い込み、進学するクラスがGクラスなのかとファーガスに聞いてみる。


 「まぁね。親父の後を継いで俺も鍛冶屋かなぁって思ってるよ」

 うちの問いにファーガスがそう答えてくる。


 「あった!あったよ!」

 うちとファーガスの会話をそっちのけで自分の名前を探していたミリィが自分の名前見つけ、指を差し声を上げてうち等に駆け寄ってくる。

 ミリィが指差す掲示板を見ると、Bクラスに名前が記載されていた。

 

 「お、ホントじゃ。うちとファーガスのクラス分けは理解できるが、魔術科のクラスってどういう基準で分けられちょるん?」

 「ん~よくはわからないけど、一説には保有してる魔力量だとか魔法の才能とかだって聞いたことあるけど実際の所はよくわかんない」

 「まぁ、Aクラスに優秀な人材が特に集まってるからそういう噂があるってだけだからな」

 うちの疑問に、ミリィとファーガスが答える。

 2人の答えを聞く限り、魔術科はクラス=個人のランクという印象を受けた。


 「クラスも確認したし、荷物を寮に置きに行きますか」

 ファーガスのその言葉にうちとミリィも同意して学生寮へ向かうことにした。


⚔⚔


 王立クロフォード学園女子寮前―――


 「おぉ~。学生寮も大きいのぅ……。お、あれ寮の振り分けか?」

 ここでも振り分けの掲示板があり、うち等はどの棟で部屋がどこかの確認をする。

 棟の割り当てはクラスと同じで、A~D棟が魔術科、E棟が剣術科、F棟が弓術科、G棟が商・技術科になっている様だ。


 「あぁ~、こっちには女子寮の振り分けしか掲示してないのか。俺はあっちの方みたいだからそっちに行ってくるよ」

 そう言ってファーガスが男子寮があると思われる方へと向かって行く。

 うちとミリィは離れていくファーガスを見送り、寮の部屋割りの掲示板に目を向ける。


 「こりゃまた、魔術科は多いのぅ……。お、あった。3人部屋か」

 うちはE棟一覧の中から自分の入寮する部屋を見つける。

 

 「ミリィ、そっちは見つかった?」

 剣術科の何倍もの名前が記載されている部屋割りの中からミリィが自分の名前を探す。


 「あ、あった。B棟の326だって。今日は入寮だけだから荷物置いたら学園内でも見て回る?」

 「えぇよ。それじゃ荷物置いたらここに集合で。昼も近いし、ファーガスも誘って昼ごはんにでも行こう」

 うちとミリィはその後の予定を立て、トランクケースを持ってそれぞれの部屋に向かう。

 


 王立クロフォード学園E棟―――


 「えっと……、218、218……」

 うちは部屋の扉にある番号の表札を一つ一つ確認して自分の部屋を探す。


 「ん、ここか?」

 記憶した部屋番号と目の前にある扉に掲げてある部屋番号を確認する。

 

 「……。隣接しちょる部屋とあんまり間隔空いてなくないか……?」

 部屋を探している時にも思っていたが、部屋という部屋の間隔が狭い印象を受けうちは部屋の広さが心配になった。

 うちは扉の前で2回ノックして中からの反応を窺う。


 『は~い、どうぞ~』

 という返事を聞き、うちはこれから寝起きする部屋の扉を開く。

 うちが部屋に入ると、思っていた以上の空間が目の前に広がる。


 「ん?は?あれ?部屋の中がなんでこんなに広……い?」

 うちはそう言いながら外の景観と部屋の中の広さの差を何度も見比べる。

部屋の広さは見た目以上になっていて、3人シェアの部屋でも各々に個別の部屋と共同スペースが用意されている。

 うちが思っていた以上の広い部屋に驚いていると、1人のルームメイトが近寄ってくる。


 「初めまして、こんにちは。えっと、わ、私エリノア・バーネット。よろしくね」

 「ティファニア・アッシュフィールドじゃ!呼び方はティファでえぇよ。よろしくな!それにしても、この部屋なんでこんなに広いん?入る前は部屋と部屋の感覚は狭かった気がするけど……」

 うちとエリノアはお互いに軽い自己紹介をして握手をして、うちは見た目以上に広い部屋の理由をエリノアに質問する。


 「あぁ、学園寮の部屋には魔法陣があって、空間拡張魔法が掛けられているの」

 そう言ってエリノアが共同スペースの真ん中の床を指差す。

 その指差す床には確かに魔法陣が描かれていた。


 「掲示板の部屋割りじゃったらもう1人居るようじゃけど……、今は出ちょるんかの?」

 掲示板の振り分けで3人でシェアする振り分けだったことを思い出して、うちはもう1人の同居者の姿を探す。

 

 「あぁ~、ヴィオラは今寝てる……かも?」

 ヴィオラと呼ばれる子の部屋に視線を送り、エリノアが私の問いに答える。


 「ふ~ん、そっか。それで空いちょる部屋ってどこかの?」

 うちは先に部屋に来ていたエリノアに空いている部屋を訪ねる。

 エリノアは空いている部屋の前まで案内し、私はこれから生活する部屋にトランクケースを置く。

 トランク内の整理は夜にしようと荷物を置いてすぐに部屋を出る。


 「さて、うちはちょっと友達と学園内を見て回るんじゃが、エリノアも行くか?」

 共同スペースで寛いでいるエリノアに声を掛ける。


 「う~ん。誘ってくれてありがたいんだけど、荷物の整理とかもあるから……」

 と、うちの誘いをエリノアが申し訳なさそうに断る。

 

 「そっか、わかった、うちはちょっと学園内見て回ってくるわ」

 入寮してから次の日の入学式までは、個人の自由行動になるため、うちはエリノアにそう伝え部屋を出る。



 うちはミリィと待ち合わせた部屋割りの掲示板の前に戻ってくる。

 どうやらうちの方が早く戻ってきてしまったみたいでミリィの到着を待つ。


 「お待たせ~!」

 手を振ってミリィが待ち合わせの掲示板に駆け寄ってくる。


 「ミリィ~。部屋どうじゃった?」

 うちは駆け寄ってくるミリィに部屋の様子を聞いてみる。


 「最初6人部屋かぁってちょっと期待してなかったんだけど、空間拡張魔法が思いの他すごくてこれだったら快適に過ごせるかなぁって思ったよ!」

 ミリィが振り分けられた自室の感想を答える。

 それを聞いたうちは「そうか、良かったのぅ」と答える。


 「さて、それじゃあ先にファーガスのとこに行ってみるか?」

 部屋の感想もそこそこに、うちとミリィはファーガスを食事に誘うため男子寮へ向かう。


⚔⚔⚔


 王立クロフォード学園学生食堂―――


 昼時と言う事と学園の規模もあって、食堂は混雑していると思ったが思いのほか食堂は空いていた。


 「思っちょったよりわりと空いちょる……のか?」

 辺りを見回すと、今まで見てきた学園の規模と食堂の広さに比べ以外にも空いていることにうちは疑問を覚える。


 「そうだね……。あ、もしかしたら今在学生が帰省してるから人が少ないのかも……?」

 うちの疑問にミリィがちょっと自信がなさそうな答えを返してくる。

 

 「だろうね。在学生は明日とかに戻ってくるんじゃないかな」

 ミリィの自信のなさ気な答えにフォローを入れる。

 うちは2人の答えに「なるほど」と納得をする。

 学園食堂はどうやらビュッフェの様で、入り口でトレーを取りあとは個人の好みで料理を取っていく形式だ。

 うち達は自分達の順番まで待っていると、後から来た女性集団がうち達の並んでいる前に割り込んでくる。


 「ちょっ!お前等……!」

 割り込んできた集団に苦言を呈しようとしたうちをミリィとファーガスが制する。

 

 「バカ!あれが学園長の孫娘だよ……」

 集団の中心に居る人物が学園長の孫だと、ミリィがうちに耳打ちで教えてくる。

 「じゃからって関係ないじゃろ!」と順番を守らない集団に憤り、言い返そうとしたうちを見てファーガスも関わり合うなと言いたげに首を横に振りうちを制止する。

 うちは2人に制止され割り込まれたことを不本意ながら我慢する。

 割り込んできた集団にイライラしたまま食事を掻き込むうちと一緒に食事をするミリィとファーガスは気まずそうにしていた。


 怒りを収めつつ食事を終えたうち達は、うちの希望で訓練場を見に行くことにした。


 「なんか訓練所は思ったより普通なんじゃな」

 今まで見てきた学園の規模を考えると訓練場も広いのかと思ったが、訓練場は意外にもうちが転生前に通っていた一般高校のグラウンドくらいの広さしかなかった。


 「まぁ今まで見てきた施設の中じゃ普通くらいなのかな」

 とミリィがうちの言葉に共感してくる。


 「ん?あっちの建物ってなんじゃ?」

 訓練場に隣接して巨大な施設が視界に入る。


 「あれは闘技場かな」

 「闘技場?」

 学園にある施設にしては似つかわしくないミリィの答えにうちは首を傾げ聞き返す。

 

 「他校の生徒とかが集まって魔術、剣術の試合とか、生徒間で何かしらのトラブルが起きたときに決闘デュエル申請をして生徒同士で決闘をする施設だよ」

 首を傾げているうちにファーガスが闘技場の用途を教えてくれる。

 ファーガスの説明だと、お互いの主張等に納得がいかず、喧嘩に発展しそうになるようなら決闘の勝者になり己の主張を通せ、と言う事だそうだ。

 決闘の申請には何もトラブルが起きた場合の申請だけでなく、お互いの力比べをする際にも決闘申請ができるらしい。

 闘技場には入れるようで、うち達は闘技場内へ入ってみる。

 

 「おぉ~……。ここも広いのぅ」

 外観からも広いだろうと思っていたが、闘技場内に入ると中に入ると外観通りの施設の広さが目の前に広がる。

 闘技場の広さはうちが前に居た世界の一般的な球場の様な広さがあり、施設の中央に武舞台が見える。

 この時のうちはここで数々の決闘をすることになるとは思っていなかった。

 その後も、うち達は主要施設を見て回り、見終わった後はそれぞれの寮に戻っていった。


⚔⚔⚔⚔


 王立クロフォード学園入学当日―――早朝

 

 「ハッ……、ハッ……」

 うちはルームメイトの2人を起こさない様に部屋を抜け出し、入寮前から行っていた日課の走り込みを前日に下見をした訓練場で行っていた。


 (もっと……。もっと速く……)

 うちはこの世界に転生してからもあの時の事故を忘れず、もっと速く駆け抜けれていたらと思いながら自身の走力を上げるべく日々走り込みを続けている。


 (まだ……、もっと速く!)

 そう思いながら、うちは自身の魔力を脚力に集中するイメージを浮かべる。

 すると、全身にバチバチッ!と電撃が走る感覚を感じ、瞬間的に走行距離が飛躍的に伸びる。

 その走り去った後には、地面に一筋の軌跡と走り去った際に残された電撃がその場に残る。


 (ハァ……、ハァッ……。まだ!まだこんなもんじゃダメじゃ……!)

 手を膝に着き息を整えながら、魔力を使用した時点から急加速し駆け抜けた距離を見返し、まだこれではだめだと自身を心の中で叱咤する。

 

 (そういえば……。うちってあの後どうなったんじゃろ……。お母さん達はどうしちょるんじゃろ……)

 事故後、泣き崩れる両親を思い出し、前の世界の事が気になりうちは白け始めた空を見上げる。

 何はともあれ、うちの『新たな生活』がここから始まっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る