15.


 突然聞こえた女性の声に拓海が振り返る。


「なっ……?!」


 そこには奏と冴子、そして透がいた。


 なぜ、ここに奏たちがいるのか?それは、冴子のスマートフォンに掛かってきた電話がきっかけだった。電話の相手は翼を発見した男からだった。冴子たちと別れた後、一人の男が声を掛けてきて、あの女性たちが何者かを聞いてきたらしい。そして、男は念のため冴子に連絡をくれたのだ。その電話の内容を聞いて、場合によっては翼の命が危ないのではないかと推測し、翼の自宅近くで待機していた。そしたら、そこに拓海が現れたという事だった。


「警察よ!堺拓海!詐欺容疑と放火の疑いで逮捕するわ!!」


 冴子が声を張り上げて言う。


「くそっ!!」


 拓海がその場から逃げようと、奏たちがいる方向とは反対の方向に駆け出す。


「おっと♪逃がさないぜ♪」


 拓海が逃げた方向から今度は紅蓮と槙が顔を出す。


「ちっ!!」


 拓海が舌打ちする。


「大人しく捕まってもらおうか?」


 紅蓮が不気味な笑顔を浮かべながらそう言葉を綴る。


 拓海は踵を返すと、奏たちに向かって突進してくる。そして、ポケットに忍ばせてあった折り畳みのナイフを手に奏たちに凄い形相で襲い掛かってきた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


 叫び声をあげながら拓海がナイフを持って奏たちに向って走ってくる。そして、奏たちの近くまで来るとナイフを大きく振り上げた。


「ァァァアアアアっっ!!!!」


 冴子が声を上げながら足に力を入れる。そしてナイフを持っている手を掴み自分の背中に廻す。



 ――――バターンっっ!!!



 拓海の身体が空中で円を描くように浮くと、次の瞬間、地面に思い切り叩きつけられた。


「お見事♪冴子さん♪」


 駆け寄ってきた紅蓮が拍手をしながら言う。


「久々に見ましたね。冴子さんの背負い投げ」


 紅蓮の隣にいる槙が淡々と言う。


「奏……、大丈夫か?」


 奏の様子を見て透が声を掛ける。


 奏は冴子の技に驚いたのか、一部始終を見て驚きのあまり開いた口が塞がらなくなっていた。


「冴子さん、とりあえず気絶しているので署の方に連れて行きますか?」


 槙がそう言い、紅蓮と透で拓海を担ぎ車に乗せてその場を離れていった。




「……さて、じゃあ行きましょうか……」


 次の日の朝、目を覚ました拓海に手錠をかけた状態で車に乗せる。両隣に透と紅蓮が座り、その後ろの席には奏と冴子が乗っている。運転は槙が行い、例の詐欺グループが根城にしている場所に向かった。



 車の中で拓海は一切喋らなかった。根城の場所に関しては聞き出さなくても前の時に奏たちが発見している。そして、赤嶺ビルの前に着き、全員で車を降りる。拓海の両脇を透と紅蓮が捕まえた状態でビルの一室に向かった。その一室の前まで来ると、玄が率いる警察官たちが待機している。そして、そこには突入隊も待機していた。


「じゃあ、いっちょやりますか……」


 玄がそう言って背広を正す。


 そして……、



 ――――バターン!!!



 詐欺グループが根城にしているドアを強い力で思い切り開け、玄が叫んだ。


「警察だ!!貴様らを詐欺の容疑で逮捕する!!」


「なんだ?!」

「うわっ!!」

「警察が何でここに?!」


 その場にいる男たちが驚きの声を上げる。


「突入!!」


 玄がそう叫び、突入隊が一斉に駆け込む。そして、しばらく乱闘が続き、一人残らずお縄になっていく。


 しばらくして乱闘が終わり、男たちが警察官によって拓海たちの横を通り、連行されていった。



「さて、この金庫を開けてもらうわよ?」


 冴子の言葉に拓海が鍵の場所とダイヤルキーの番号を伝える。



 ――――ガチャン!



 ロックが解除された音が鳴り、冴子が金庫の扉を開ける。



「……え?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る