3.
「どうしたの?!奏ちゃん?!」
奏が急に大きな声を出したので、紅蓮が驚いて声を出す。
「この人、昨日の居酒屋にいた人です!!」
「「「え?!!!」」」
奏の言葉にみんなが声を上げる。
「あの、歓迎パーティーをした居酒屋にってこと?」
冴子がそう疑問を問う。
「はい!昨日、その男の人が気になる会話をしていたので覚えていたんです」
「気になる会話?」
奏での言葉に透が聞き返す。
奏はそう言って、昨日の会話のことを冴子たちに話した。
「……その例の子って、やりたくないのにやらされている可能性があるわね……」
奏の話を聞いて冴子が神妙な顔つきでそう答える。
「あぁ。何か弱みを握られているのか、もしくは脅されているのか……その可能性がありますね」
槙も冴子と同様にそう言葉を綴る。
「冴子さん、居酒屋に行ってみませんか?もし、常連客なら難波さんが何かを知っているかもしれませんよ?」
透がそう提案する。
「そうね……。行ってみましょう」
こうして奏たちは居酒屋に足を運ぶことにした。
「……まだ、やらなきゃいけないの?」
男が悲痛な表情でそう言葉を綴る。
「あぁ。過去をばらされたくなかったらな……」
黒ずくめの男が不気味な笑みを浮かべながら言う。
「で……でも、親に聞いたけど……僕は何も悪いことしていないって……」
男がそう言葉を綴る。
「そら親はそう言うだろ。過去に悪いことをしていましたなんて言えるわけないよなぁ……」
黒ずくめの男が不気味に笑いながらそう言葉を吐く。
「そ……そんな……」
男が信じられないとでもいう感じで少し震え気味に言う。
「次は上手くやれよ……。
黒ずくめの男が翼と呼ばれた男にそう囁く。
「……分かったよ。
拓海と呼ばれた男が翼のその言葉にほくそ笑む。
「……じゃあ、次のターゲットはこれだ……」
拓海がそう言って番号と名前の書いてある紙を渡す。
「よろしく頼むぜ……」
拓海はそう言うと、その場を去っていった。
その場に残された翼が紙を見つめながらため息を吐く。
「いつになったらこんなことから解放されるんだろう……」
そう小さく呟くと、その紙に書かれてある番号に電話を掛けた。
「……じゃあ、その客は初めて来たってこと?」
冴子が難波の言葉にそう答える。
奏たちは昨日の居酒屋に行き、難波からその客のことを聞いたが返ってきた言葉は期待外れの言葉だった。
「あぁ。その客は今まで見たことが無いからな。その客がなんかあったのかい?」
難波が不思議そうに尋ねる。
「ちょっとね……」
捜査内容を話すわけにもいかなくて、冴子が言葉を濁す。
「あっ!難波さん、もし良かったらこの男がまた来たら私に連絡くれないかしら?」
「あぁ、分かった」
冴子のお願いを難波は快く引き受けてくれる。
「ありがとう♪営業時間前にごめんなさいね。また、近いうちに飲みに来るわ♪」
「おう!待ってるぜ!」
冴子の言葉に難波が笑顔で返事をする。
奏たちは居酒屋を出ると、今度はその男の捜索に向かった。
闇雲に探しても見つからないという事で、受け取りの現場があった場所に赴く。そこは一つの公園だった。公園と言っても遊具があるわけではなく。どちらかと言うと、花壇が所々に円のように備え付けられており、花が植えられている。その一角が今回の受け取りの場所だった。
「……ここが現場ね」
冴子が現場に立ち、言葉を発する。
「ここからサングラスの男と合流した場所に行くにはここから南の方向になるわね」
冴子が映像を思い出しながらそう言葉を綴る。
「とりあえず、合流された現場まで歩いてみましょう。ただ、地図で確認してみたのですが、その合流場所となると、ルートが二つあるみたいです」
透がスマートフォンで地図を出し、確認をしたところ、合流場所には同じぐらいの時間で着くルートが二つ表示されている。
「じゃあ、二手に分かれてその現場まで歩いてみましょう」
槙がそう提案する。
「はいはーい♪じゃあ俺は奏ちゃんと組む~♪」
紅蓮が意気揚々と言葉を発する。
「何言っているのよ!あんたは槙の相棒でもあるんだから槙と組むに決まっているでしょ!」
「えぇぇぇ……。なんで槙なんだよぉ~……」
紅蓮が不満の声を上げるが、冴子に叱咤されて、紅蓮と槙、奏と透と冴子の二つに分かれてそれぞれその合流地点に向かうことになった。
「……大丈夫ですか?あの二人」
奏が別のルートを歩いている紅蓮と槙が気になっているのか、冴子にそう問う。
「大丈夫でしょ♪一応二人はあれでコンビなんだし、あの二人はあれでなかなかいいコンビなのよ♪」
冴子がどこか楽しそうに言葉を綴る。
「そうなんですね。なんだか意外です。何だか言い合いばかりしていて合わなさそうな気もするのですが……」
奏が不思議そうに言葉を綴る。
「まぁ、喧嘩するほど仲がいいって言う言葉もあるしね♪」
冴子が愉快そうに言う。
「あっ、次の道を右ですよ」
透がナビを確認しながら曲がる道を奏と冴子に伝えた。
「……はぁ~。どうせなら奏ちゃんとペアの方が良かったなぁ~」
紅蓮がため息を吐きながら槙ともう一つのルートを歩く。
「ごちゃごちゃとさっきからうるさいぞ、女好き」
槙が淡々と毒を吐く。
「誰が女好きだよ?!俺は断固として女好きなわけじゃない!女性に対して紳士なだけだ!」
槙の言葉に紅蓮が力説しながら言う。
「ほざいてろ」
熱く語る紅蓮に対して槙は興味なさげに言う。
「はっ!女を一度も作ったことないくせに気取ってんじゃねーよ!……て、さっきから何きょろきょろしてるんだ?」
槙が淡々と言葉を吐きながら辺りを何か探しているような素振りをしているので紅蓮が不思議に思って尋ねる。
「……あぁ、実は映像を見て気になったことがあるんだ」
槙はそう言うとスマートフォンを取り出し、パソコンにアクセスをするとその映像を紅蓮に見せた。
「この場面、受け子の男の動きで何か気付かないか?」
槙に言われて紅蓮が映像を確認する。
「……何かを落とした?」
紅蓮が映像を見てそう言葉を漏らす。その映像にはサングラスの男と別れた後、何かを落としたことに気付いたのか、ポケットや鞄の中を確認するような仕草が映っている。
「あぁ、何かは分からないが何かを落とした可能性がある。もしかしたら、その落としたものがまだ落ちている可能性があるんじゃないかと思ってな……」
「もしかしたら、詐欺事件に繋がっている何かかもしれないってことか……」
「あぁ………」
「よし、何かは分からないが探してみよう」
槙の言葉に紅蓮がそう提案する。そして、自分たちが歩いているルートに何か怪しいものが落ちていないか捜索しながら歩いて行く。道端にも目を向けたり、時には道の備え付けてある自販機の下を覗き込んだりして怪しいものがないかを探っていく。
その時だった。
「おい、紅蓮」
自販機の裏を覗いていた槙が声を上げる。
「あれ……、もしかして……」
紅蓮が自販機の裏に落ちているあるものを指さす。
「……あり得るかもな」
紅蓮がそれを見て声を上げる。そして、腕の長い紅蓮がそのものに手を伸ばす。
「取れるか?」
「もうちょっとで……」
紅蓮がそう言って腕を震わせながらそのものに手を伸ばす。
「取れたぞ!!」
そのものを掴み、紅蓮が声を上げる。
「よし、冴子さんたちと合流したら捜査室に戻ってそれを開けてみよう」
槙がそう言い、合流場所に急いだ。
「……何しやがってるんだよ!!」
一人の男がそう言いながら叫んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます