第4話 守るべき人との再会
二十八歳になった僕は自動車部品メーカーの特例子会社に障害者雇用で就職していた。
新人担当になった僕は、今年度に入社した新人をもてなす歓迎会を開くために、駅前の居酒屋に早めに到着していた。駅前は十年前に比べると再開発が進められており、あちらこちらに商業施設が乱立するようになっていた。今回、歓迎会をひらく居酒屋もその商業施設の一部に組み込まれていた。今回の歓迎会は部署別で執り行われており、僕の部署の新人は四人いる。上司と僕を含めた十名で歓迎会をする。
店の暖簾をくぐり、中に入ると、少し照明が暗い、落ち着いた雰囲気の和風なテイストの店内だった。
「いい雰囲気ですね」
僕は女性の店員にそう言うと、店員は微笑みながら「ありがとうございます」と言った。笑顔のかわいい感じの店員だった。
「こちらに案内しますね」
ちょうど、十人座れる、掘りごたつの個室に案内された。
僕が座ろうとすると、店員さんが「あの~」と僕に話しかけてきた。
「間違っていたらごめんなさい、もしかして出雲勇気君ですか」
店員さんは恐る恐ると言った。
「はい。そうです」
僕はその店員を見ると、はっとした。
心臓が急速に暴れだすのを感じた。
過去の眠っていた記憶が思い起こされ、僕は発狂しそうになった。
そして僕は、自分がこうして生きていいのか、のうのうと社会人を満喫しながら生きていていいのかといった気分になった。心臓の裏側に鳥肌がたった。
そして店員はこう言った。
「私は藤堂です。お元気でしたか」
抱擁を遠ざけるとき 久石あまね @amane11
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