真・怒りの終焉
クライングフリーマン
怒りは、どこかで止めないといけない。
あの病院にはもう行かない。それが最後の決断。
2010年。
病院には「自動精算機」なるものが登場していた。
不愉快な日々が始まった。不愉快な原因は明らかだった。
一つは、私の診察が2ヶ月スパンだったこと。
もう一つは、なまじ私がコンピュータに詳しい人間だったこと。
「精算機システム」」は、約1ヶ月のテスト期間を経てスタートした。
そして、スタートした限り「滅多な修正」はしないというスタンスだったこと。」
私は、「置いてけぼり」を喰ったのだ。」
どうも違和感が収まらない。それは、やたら煩いアナウンスだった。
「バーコードを読ませてください。」誰も機会の前にいないのに、延々と大きな音声で案内している。私は、悔しさを堪え、まずはマシンの音量を下げてくれないか、と「患者様相談室」の相談員に話をした。
この時点でもう失敗だった。
以前、提案したことが貼り紙されていなかったことで苦情を言ったところ、「1ヶ月交替で掲示している。ちゃんとファイリングしている」と言って誤魔化されたことがあったのだ。相談員に親しくなることで要望が通る、それは勘違いだった。
2011年
システムの更新時に「不具合」を直して欲しいという要望は見事に裏切られた。
「バーコードを読ませてください。」では、何のバーコードなのか分からないから、「精算用の緑の紙をかざしてください」と修正して欲しい、と願い出ていたのだ。
その病院の『自動精算機』では、。従来の診察券カードでも、計算結果が出た紙(請求書)の紙)でも患者データを読み込み、精算出来た。
だから、バーコードに慣れていない高齢者の為に「両方使える」ことをアピールすべきだと主張していたのだ。」
2012年
また、見事に裏切られた。要望は「システム部」は知らなかった。
「忘れた」では済まされない。
今度は、システム部に約束させた。
2013年
約束は、反故にされた。「予算がない」の一点張りだった。音声データの一部を変えるだけのことなのに。
2014年
今度は、「では、精算票を渡す事務員に『両方』使えると伝えて欲しい」、と願い出た。
事務員は「ピンポイントは止めて」という要望を無視して、私にだけ言うようになった。
やっと分かった。システムは最初外注して終了。後から不具合を院内のシステム部が対応するようになった。システム部や事務員の造り上げたシステムを「たまに来る患者」の為に捻じ曲げたくなかったのだ。
私は、「ちょっと風邪引いたから」と「たまに来る患者」では無かった。
医師が処方した薬を「1年中」服用または外用している「お得意様」なのに、それを知っている相談員は、伝えなかった。「臭い物に蓋をする」スタンスは崩さなかったのだ。
最初、糖尿病の患者を診る医師が「他の病院の応援だから」と2ヶ月スパンだったのだが、心筋梗塞の手術をしたB病院含め方々で通院するのが嫌で、その病院で『両方の診療科目』で診て貰うことになり、スパンは3ヶ月になっていた。
2015年
B病院を尋ね、手術した医師に相談したら、強引に通院を止め、B病院からその病院に引き継ぎさせたことを、手術担当医師は責めた。
当然と言えば、当然だ。
私は通院している外科・内科の診療所に申し出、全ての『体のメンテナンス』を任せることになった。幸い、その診療所はB病院と提携していて、『大きな検査』は、依頼する体勢だった。
2022年。
救急で母が運ばれた病院は、件の病院だった。
1ヶ月の入院後、母は転院した。
『自動精算機』は、クレジットカード対応になっていたものの、相変わらず誰もいない空間に向けて音声メッセージを流していた。「バーコードを読ませて下さい。」
母の退院後の手続きで、その自動精算機を使わなくて済んだのは、幸いだった。
時は流れ、高齢者と言えどもバーコードに戸惑う人は少なくなった。
決まった時間帯だけ、援助する人材は「無用の長物」になった。
「無用の長物」と言えば、あの『紙渡し係』もアナログの象徴、不要なポストなのだが、まだ存在していた。『お局さま』が健在だったからだ。
私は『徒労』をした。
だが、後悔はもうしていない。時代は追いついたのだ。
怒りは、どこかで止めないといけない。あの病院にはもう行かないのだから。
救急車で運ばれても、『自動精算機』は『外来専用』なのだから。
因みに、その病院の医師も看護師も優秀だ。私に同情してくれた看護もいた。
『事務方』がアホなだけ。私は、こだわり過ぎた。
やっと、肩の荷は下りた。
黒歴史は、『昇華』すべきなのだ。
ー完ー
真・怒りの終焉 クライングフリーマン @dansan01
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