失恋した俺はイケメン女子に口説かれてメロメロです。
モンブラン博士
第1話
「キミ、ボクに惚れちゃった?」
目の前にボクっ娘がいる。
黒髪のショートヘア。
すけるように白い肌。
長い手足。胸が豊かなのはアレだが、容貌は正直すごくタイプだ。
俺は今、そんな美少女に言い寄られている。
学校帰りなのか白のブラウスに赤のリボンタイ、黒のミニスカートという制服姿だ。
そんな恰好が不釣り合いと思えるほどに相手の女子は眩しかった。
長くしなやかな指は壁に添えられている。
いわゆる壁ドンというやつだ。
俺は女子に壁ドンをされている!
大きな瞳に長いまつ毛が迫る。
薄く笑った桜色の唇からは白い歯がのぞいている。
イケメンだ。イケメン女子だ。
ヤバイ。ヤバすぎる。
少女の返事に喉を鳴らすことしかできない。
彼女は俺より低いため目線はどうしても下を向いてしまうのが残念だが。
できれば高身長で見上げたいが、それは妥協しよう。
とりあえず口を開く。
「すごく……タイプです」
「ふふっ。キミが落ち込んでいるように見えたから心配だったんだ。でも、少し元気になったみたいだね」
「あなたを見て失恋の痛みが消えました!」
「それはよかった。じゃあ、もう少しだけ傷の手当をしてあげようか。目を閉じて」
言われるがままに目を閉じる。
不意に訪れる軽いリップ音。
頬に柔らかい感触がした。
まさか、コレって――
目を開けるとイケメンの女の子はウィンクをして口に人差し指を当てている。
秘密のサインということか。
「ん? どうしたのかな。顔が真っ赤だよ」
そんなことされたら、顔中に血液が集まるのも当然だ。
「あ、アンタのせいで……」
抗議が口をついて出ると相手は眉を八の字にして。
「ごめんね。じゃあお詫びをしないといけないね」
少女は少しだけ背伸びをして俺の首の後ろに手を回すと、抱き寄せてきた。
華奢な腕からは想像できないほどすごい力だ。
必然的に俺たちの唇は重なる。
柔らかい。柔らかすぎる!
夢のような数秒がすぎ、口から酸素を吸い込む。
「これで許してくれるかな」
「は、はい。もちろん」
「よかった。じゃあね」
爽やかに手を振って笑うと、少女は軽やかな足取りで去っていく。
ひとり残された俺は呆然とすることしかできない。
今のは夢だったのだろうか。いや、現実だ。
ひとつだけ確かなことは生きていればいいことがあるということだ。
おしまい。
失恋した俺はイケメン女子に口説かれてメロメロです。 モンブラン博士 @maronn777
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