5話 男性としての暮らし
私は、男性としての暮らしを始めた。
男性になって、生理がないことは本当に楽だということに気付いた。
生理って、あまりに日常で疑問に思っていなくて、ないという発想がなかったの。
そして、男性の人間関係は楽なことにも気付いたわ。
お互いに足の引っ張り合いとか、蔑むなんてことはなかった。
まっすぐ、目標に向って進むだけ。そして、ちょっとしたことも笑って忘れ合える。
本当に女性って、影で悪口を言って、足を引っ張ったり、汚い生き物。
それに対して、男性としての生活って素晴らしいじゃないの。
でも、凛はどうしているのかしら。
いまでも、凛ほど素敵な女性はいないと思う。
女性からみても、理想とする女性だった。
もう、あのクラブには行けないし、凛とも会えない。
会っても、陽菜と気づいてもらえないと思う。
他の人に乗り移る能力があるなんて信じてもらえないと思うし。
凛、もう会えないと思うけど、幸せに生きていってね。
ところで、乗り移った彼には彼女がいた。
彼女がキスを求めたり、ホテルに連れて行かれたりしたときは少し戸惑ったけど。
でも、男性ホルモンが出ているせいか、それほど嫌ではなかった。
というより、初めてエッチしたときの衝撃には驚いた。
下から何かが飛び出して、体に衝撃が走ったんだから。
私は、女性だったから女性の気持ちよさを知っている。
だから、彼女は上手くなったねと喜んでいた。
最近は、別な意味で驚いている。
女性のときは性欲とか意識したことはなかったけど、今は性欲を抑えられない。
こんなに違うんだと驚きの毎日だった。
もう一つ、気づいたのは、体を交換すると脳や血液等が変わるから性格も変わる。
また、体の組織が変わるから、若者になり変われば年齢も若くなる。
これを繰り返せば、永遠に生きていけるじゃないか。
ところで、大学を卒業し、IT会社に就職することにしたんだ。
本来なら一流のIT会社に入りたかったけど、今の大学では厳しかった。
どうして、実力ではなく、貼られたラベルだけで人は判断するのだろうか。
ただ、プログラマーとしての仕事は楽しく、5年が経過した。
一方で、IT業界は3Kで、本当に毎日、残業続きで、月給は安くて辛いことも知った。
別に偉くなりたいわけじゃないけど、同じ年代の若者はどんどん出世している。
僕だって、ぶちゃ子のときは慶明大学で理工学部を首席で卒業したんだ。
どうして実力があるのに、3流大学出身というだけで認められないのだろうか。
自分の処遇に対する不満は日に日に高まっていったんだ。
このままでは、実家は裕福だけど、僕の稼ぎは少なく、奥さんからも見下されるかも。
ましてや、最近は、こんな会社員だからか、女性が近寄ってこない。
学生の頃の彼女も離れていってしまった。
まあ、ネールが綺麗でしょとかしか言わないくだらない女性だったからいいが。
そんな生活でも性欲はおさえられず、お金をつかって女性を買っていた。
時には暴力を抑えられず、買った女性を縛ったりもした。
そんな時は、変態と言われ、早々と逃げられてしまうことが多いが。
僕はどうしてしまったんだろうか。
男性に抱かれ幸せに包まれていた、昔の自分はどこにもいない。
いつも攻撃的で、心のなかに湧いた不満を抑えられない。
ボクシングジムでサンドバックに打ち込んでみたが、攻撃性は抑えるのに効果はなかった。
この前は、夜道でぶつかってきた女性に、怒鳴って、殴ろうとしてしまった。
怯え逃げ去る女性をみて、ニヤけている自分に気付いた。
こんな卑怯な男性になりたかったわけじゃないのに。
唯一の楽しみといえば、時々、男性どうしで安い居酒屋に行って騒ぐことぐらいだ。
いつの間にか、愚痴しか言えない男性になりさがっていたことにも愕然とした。
どうして僕の人生はこんなに惨めなんだろう。将来に夢が持てないと。
僕は、もう今の会社で働く希望はなくなった。
そもそも、超能力者の組織で働くというのはどうだろうか。同じ人種で助け合える。
僕は、組織にコンタクトしたところ、是非という回答だった。
組織で働く中で、国家の活動について初めて知ったが、ひどいものだった。
どうして、超能力者をなんのためらいもなく暗殺しているんだろうか。
また、そのために、超能力者でない普通の人も大勢殺している。
本当に、憎むべきは日本政府だと思った。
僕は、正当防衛のために、日本政府と戦うことを誓った。
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