4話 暗殺
「お久しぶりですね。元気でしたか?」
「よく、私のことが分かったわね。事故で死んだと思っていたはずなのに。」
「いや、超能力を使ってくれたとは思っていたんですよ。そこで、超能力者どうしで存在が分かることを使って、あなたを探していました。でも、思いの外、早く見つけたんです。TVに出てましたからね。それで、スキャンダルを煽り、このクラブ「フルムーン」に誘わせたんです。」
「そうなんですか。でも、今回はなんで連絡がきたんですか?」
「お願いがありまして。公安の上司になる警視庁長官を暗殺してもらいたい。」
「え! どういうことですか?」
「政府が超能力者の一掃を目的に、我々を暗殺しようとしているからです。政府が、公安を使って、実力行使をしている。ひどいじゃないですか。だから、警視庁長官を暗殺して、我々を暗殺しようとすれば、それなりの代償があると示したい。そうしないと、あなたも政府に殺されますよ。」
「やるしかないんですね。」
「そうです。」
「で、どうするんですか?」
「あなたは元女子アナ。政治関係は疎いとは思いますが、素人よりは知っている。我々で、入館証は手配するので、警視庁長官がめずらしく参加する総理の会見に記者として参加してください。そして、どこでもいいので、長官にマイクを向けて質問を投げる。その時に、マイクに入れた爆弾の起爆装置を押していただくということです。爆破と同時に、あなたは別の人に乗り移ればいい。現場では、テレビ局を追い出され、キャバクラ嬢に落ちぶれたあなたが、テロ組織にそそのかされて自爆テロをしたと見えるはずです。」
「なるほど。でも、総理も巻き添えにしちゃうということですか。」
「総理は、我々の敵ですので一石二鳥です。で、今度はだれに移り変わりますか? 探すのも大変なので。」
「これまで女性で苦労してきたから、男性に変わりたいと思っていたの。そうね。このマンションで向かいに住んでいる大学生の男性に変わろうかしら。裕福みたいだし。」
「わかりました。では、入館証、マイクなど、一式を用意して、後日、お渡しにあがります。くれぐれも感づかれることがないよう、よろしくお願いいたします。」
「わかったわ。」
暗殺当日がきた。私は死ぬことがないので冷静に警視庁に向ったの。
入館証のおかげか、私のアナウンサー時代の洋服のせいか、すんなりと入れたわ。
記者に囲まれる中、警視庁長官は今進めている組織改革について話し始めた。
「警視庁長官、組織改革に向けて民共党が反対していますが、どう乗り切るんですか?」
私は長官にマイクを向けた。
「それは・・・。」
その時だった。マイクはまばゆい光を放ち、大爆音が響き渡った。
私は、熱いと思った時点で超能力を発動した。
そして気づくと、大学内のカフェにいてカレーを前にTVをながめていたの。
TVでは緊急速報として、総理官邸が爆破されたとテロップが流れた。
アナウンサーが慌てた様子で、総理と警視庁長官の安否は未確認と話している。
そう、私がさっきまでそこにいたの。もう総理も長官も死んでるわ。
その夜、総理、長官、そして周りにいた記者たちはすべて死亡と報道されていた。
犯人は不明。爆弾を持っていた記者がいたのか、現場に爆弾が設置されたいたのか。
記者の中に犯人がいたというのが濃厚と解説員は言っていた。
そして、1週間が経ったころ、私が犯人だろうと報道されていたの。
そもそも記者リストに私が載っていないことから怪しまれた。
テレビ局を追い出され、キャバクラ嬢に落ちぶれたことを悩んでいたって。
その結果、テロ組織にそそのかされて自爆テロをしたと。
組織の思惑どおりだったわね。
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